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第97話 ヌルヌル属性を靴に使ってみる

 周回しまくって水属性素材をたくさん入手した、その次の日。


 俺はさっそくミルトのところへ向かった。


「水属性の素材をたくさん集めてきたぞ! 作ってくれ!」


 そう言って素材を見せると、ミルトは目を丸くした。


「ずいぶん集めましたね」


「周回したからな」


 丸太筏は面倒だったが、その甲斐はあった。


 必要数が足りなくてもう一回行く羽目になるより、まとめて集めておいた方がいい。


 ミルトは素材を一つひとつ見ながら、少し考えるような顔をしたあとで言った。


「これだけあるなら、少しもらってもいいですか?」


 まあ、たくさんあるし、駄賃としてはありだろう。


 作ってもらってるわけだしな。


「いいぞ」


 そうして、いくつか素材を分けてやる。


 その流れで、ふと一つ思い出した。


「そういえば」


 俺は、例の気持ち悪い素材を取り出した。


「ヌルヌル属性の素材を使って何か作れるか?」


 ミルトは一瞬、何を言われたのかわからないという顔をした。


「何を言っているんですか? 属性素材って火とか水とか土とかですよ?」


「いや、ほら、これ見てみ?」


 俺がヌルヌル属性の素材を見せると、ミルトは絶句した。


「そんな……なんですこれ?」


「道を間違えて、正規ルートじゃないところにたどり着いたみたいでな」


 俺は簡単に説明する。


「そこに隠しボス的なのがいたんだ。それのドロップ素材」


 ミルトは素材をじっと見ていた。


 面白そうではある。


 だが、使い道がまるで想像できない。


 そんな顔だった。


「面白そうな素材ではありますけど……これ、何に使うんですか?」


「それを今考えてる」


 そう言って、俺も改めて素材を見る。


 そこで、脳裏に浮かんだのは、あのヌルヌルした床だった。


 今は称号のおかげで、デメリットだった止まれなくなる感じと、ヌルヌルの不快感は制御できる。


 ということは――あのヌルヌルは、俺にとってはもうデメリットじゃない。


 むしろメリットになり得る。


「……あ」


 思いついた。


 実際、スケートみたいに滑りながら移動できるなら、普通に走るより速いはずだ。


「ミルト」


 俺は素材を見せながら言った。


「プレイヤー用の靴に、このヌルヌル属性の素材ってつけれるか?」


「プレイヤー用に?」


 ミルトは少し怪訝そうな顔をした。


「……使うことはできますけど、聞いてる効果だったら止まれませんよ?」


「作ってくれ」


「即答ですね」


 ミルトは呆れたように息を吐いた。


「まあ、そこまで言うなら作りますけど、後で文句言わないでくださいね」


「言わん」


 たぶん。


 そうして完成したブーツを、俺はさっそく拠点の敷地で試してみた。


 少し滑ろうと意識してみる。


 すると、靴の下からヌルヌルが出続けて、あそこと同じように、そのまま滑り続けられた。


「おお!」


 しかも結構速い。


 普通に走るより速いんじゃないか、これ。


 壁にぶつかりそうになったところで、俺は称号の効果を使って、ヌルヌルの滑る効果をオフにした。


 すると、勢いの分だけ少し滑ったあと、ちゃんと止まれた。


「やっぱり制御ができる!」


 予想通りだ。


 この組み合わせ、かなり便利かもしれない。


 ミルトは横で本気で驚いていた。


「えっ、なんで止まれるんですか?」


 そして、すぐに目の色が変わる。


「僕も欲しい!」


 俺はその出来栄えにかなり満足していた。


 満足していたので、少しくらい情報を流してやるのも悪くないと思った。


「ミルトには世話になってるからな」


 俺は腕を組みながら言う。


「行くのが大変だから手伝いはしないが、隠しボスへの道を教えてやってもいいぞ」


 ミルトの顔が一気に明るくなる。


「ほんとですか? お願いします!」


「よし」


 そうして俺は、隠しボスへの道を教えた。


 滑る床のこと。

 落ちるルートのこと。

 ヌルヌルスライムのこと。


 正規ルートじゃない場所にいる、というところまで含めて伝える。


 ただ、さすがに全部を先回りして言ってしまうのも面白くない。


 なので、最後はこう締めた。


「もし、そのダンジョンに行ったなら教えてくれ」


「はい?」


「行ってみた感想を聞きたい。行き詰ったら、ある程度はアドバイスできると思うからな」


 これは建前だ。


 本音は別にある。


 俺はミルトに、あのダンジョンに行ってほしい。


 あのヌルヌルを、俺だけが味わうのは不公平じゃないか。


 そう思っていると、横にいたバルがちらりとこっちを見た。


 その視線に、俺は一瞬、そこを指摘されるのかと思った。


 だが、バルは何も言わない。


 すっと目をそらして、そのまま見て見ぬふりをした。


 ……まあ、バルもバルで、ミルトにあのヌルヌルを味わわせたいと思っているに違いない。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


100話まで続けてこられたのも、評価や応援をいただけているおかげです。

いつも励みになっています。


もしよろしければ、感想や評価をいただけると嬉しいです。


特に、この作品の何を楽しみに続きを読んでいるのか、

あるいは印象に残っている話や場面などがあれば、ぜひ教えてください。


今後の参考にもなりますし、とても励みになります。

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