第98話 そろそろ目的に立ち戻ろうか
昨日は、ヌルヌルブーツで遊んで終わった。
結論から言うと、普段使いは厳しい。
性能そのものに問題はない。
むしろかなりいい。
滑ることで生まれるヌルヌルを利用して、バルも滑って移動できるし、ヌルヌルの不快感も称号で無効化しているから、使っている本人は快適だ。
だが、問題はそこじゃない。
ヌルヌル自体は地面に残るし、バルにも付着する。
つまり、俺が便利に使った後、その場を通るやつにはまるで優しくないということだ。
実際、試したあとにミルトが俺の滑った後の地面を歩いて、普通に滑りそうになっていた。
「……だよな」
あれを街中でやったらどうなるか。
考えるまでもない。
半ばテロ行為だ。
しかも、こういうのはたぶん称号とかも余計なものがつく。
評判だって大いに下がるだろう。
ヌルヌルの支配者、くらいならまだしも、街中をヌルヌルにした迷惑野郎みたいな感じの称号が来てもおかしくない。
それは嫌だ。
「だから、使うとしても外だな……」
人に迷惑がかかりにくい場所。
あるいはイベント時みたいに、多少おかしなことをやっても流される場面。
そういう時じゃないと、別の意味で危険すぎる。
「俺は何度も同じ事を繰り返さない男だ」
たぶん。
少なくとも、街中をヌルヌルにして余計な面倒ごとを増やす趣味はない。
そして今日も、いつも通りログインした。
目の前には、巨大な球のバルがいる。
小さい球だった頃は、見た目として可愛げもあったような気がしなくもない。
だが、今は違う。
大きくなった今は、可愛げよりもふてぶてしさの方が強い。
「バル」
声をかける。
「ヴェイル対策もそろったことだし、そろそろ目的に立ち戻ろうか」
バルは、何のことだと言いたげにこちらを見た。
首なんてないが、なんとなく首をかしげているようには見える。
「お前の進化だよ」
そう言った瞬間、バルの雰囲気が変わった。
思い出したらしい。
途端にやる気に満ちた感じになる。
わかりやすいやつだ。
「とはいえ」
俺はそこで釘を刺す。
「既に一度進化はしてる。まだ進化できるのかとか、そもそもどういう条件なのかとか、わからないだろ?」
今のバルは、確かに一回進化した。
だが、それで終わりなのか、さらに先があるのかはわからない。
こっちも、ただ闇雲に戦わせればいい段階じゃない気がしている。
そして、そういう時に聞けそうな相手が一人いる。
「モンスターに詳しそうなやつがいる」
ガルディーノからも進化のことは聞いた。
だが、あいつは別に専門家という感じではなかった。
知っていることを話してくれただけで、細かいことまで掘れる相手ではない。
その点、レーニーなら違う。
鍛える側の長で、あれだけモンスターを見てきたと言うくらいだ。
進化のことも、何か知っていておかしくない。
「鍛えに行ったついでに、レーニーに進化のことを聞こうぜ、バル」
バルはその場で小さく跳ねた。
どうやら、今の一言で完全にやる気になったらしい。
だったら話は早い。
次の目的地は決まった。




