第95話 シークレットボス初討伐
昨日やられたボスの前の扉に立つ。
ここまで来るのが面倒だった。
丸太の筏に、ヌメヌメ。
正直、これで終わりにしたい。
そもそも、丸太の筏を作るのが面倒すぎる。
時間がかかるし、本来であれば単に3000モル払って船を借りてくるだけの場所のはずだ。
それが、バルの重量が重いから沈むってどうなんだよ。
だからこそ、これで今回で終わらせるぞ、バル。
威力は既に確認済みだ。
一点突破の威力が半端ない。
バルの巨大になった体積の強さと、変わらぬ速度。その威力が一点の角に集中するわけだからな。
大体一、二回使えば壊れる。
だが、それだけの威力があるということでもある。
問題は、この武器をバルが使いたがらないことだ。
「まあ、気持ちはわかるけどな……」
一応、頭に角としてつけることはできる。
だが、それだと威力が低い。
そうなると、使い捨てで使う武器としてはコスパが悪すぎる。
ここに来るまでに、実際、一個この角武器をダメにした。
あれだけ「かっこいい武器だ!」と言った後に、尻につけるってなったからな。バルの機嫌が急降下したので、慰めの意味と、前につけたらどこまで使えるかの試しで使ってみたのだ。
突進で使って、串刺しになった時は強い。
でも、一か所を狙う形になるから、当たり所が微妙だと倒せなかったりするんだよな。
通常のアンカーチャージだったら、面でのダメージもあるから威力が高いというのもあると思う。
それでいて、通常の突進でも五、六回使ったら壊れたし。
バルはどうにかうまく使おうと、突くではなく切るみたいなことも試していたようだが、全然だった。
「悪いが、それは尻に装着する刺突専用の使い捨て武器が一番いいんだ」
バルは不満そうだ。
まあ、そうだろうな。
せっかくの角武器なのに、見た目のよさを活かす使い方じゃない。
「今度、武器には使わないけど、見た目だけいい感じの武器でも考えてやろうかな?」
それなら機嫌は取れるとは思う。
だが、今は目の前のボスだ。
「中に入った後だと装備しにくいから、扉を開ける前に尻に装着するぞ、バル」
バルは露骨に嫌そうだった。
だが、ここで譲るわけにはいかない。
これはボスを一撃で仕留めるための切り札だ。
準備を終えて、俺は扉を開いた。
また、ぬるぬるがあふれてくる。
「さあ」
俺はバルを見た。
「お前の一撃をお見舞いしてやれ!」
渾身のバルのアンカーチャージ、一点集中バージョンが、スライムの赤い核のど真ん中にヒットした。
大きなヌルヌルしたスライムの核に角が突き刺さる。
そのまま、壊れた。
そして死んだ。
「よしっ!」
今度は余計な復活もない。
ちゃんと終わった。
同時に表示が出る。
シークレットボス、ヌルヌルスライムの初討伐により
称号『ヌルヌルの支配者』を獲得しました。
「やった!」
思わず声が出る。
「これでようやく、このヌルヌルのダンジョンともおさらばさ!」
もう二度と来たくない。
そんな気持ちすらこもるくらいには嬉しい。
そして、手に入った素材を確認する。
「……ヌルヌル?」
えっ。
ちょっと待て。
もしかして属性素材って、やっぱりレアドロじゃないと落ちないとか?
オワタ。
……いや、まだだ。
名称で落ち込むのは早い。
説明を見るまでは、まだわからない。
ヌルヌルという名前からして、水っぽい名前にも見える。
このヌルヌルが、水属性の素材かもしれない。
「頼むぞ……」
そう思いながら、意を決して説明を開いた。
ヌルヌルスライムのドロップ素材
ヌルヌル属性を持つ
「……?」
ヌルヌル属性ってなんだ?
いや、ヌルヌルしてるのはわかる。
見た目通りだ。
でも、属性として言われると意味がわからない。
「ここにあるヌルヌルしてる液体とは別なのか?」
俺は手に入れた素材と、部屋に満ちていた嫌な感じのぬめりを見比べた。
見れば見るほど、ろくでもない予感しかしなかった。




