第94話 貼り付け型の角武器ができた
ログインすると、ちょうどミルトがいた。
タイミングがいい。
昨日はログアウトしていて頼めなかった件を、今のうちに片付けておきたい。
「ミルト、属性なしでいいから角武器を作ってくれ!」
開口一番そう言うと、ミルトは少しだけ眉を上げた。
「ずいぶんざっくりしてますね」
「代金は払うし、素材で使えそうなのがあれば使ってくれ」
そう付け足すと、ミルトは肩をすくめた。
「まあ、払ってくれるなら作りますよ」
そこはありがたい。
だが、当然というべきか、すぐに次の確認が入る。
「では、武器を角にするのはいいですけど、具体的にどんな武器がいいですか?」
「具体的に?」
「ええ」
ミルトは慣れた調子で言った。
「短くて耐久値が高いのとか、長くて攻撃力が高いのとか、五本ぐらい角をつけるとか、色々考えられますけど」
「なるほどな」
そこまで言われると、流石に少し考える。
今回の用途ははっきりしている。
雑魚散らしじゃない。
長期戦用でもない。
狙うのは、あのボスの核だ。
「ちょっとリーチが必要なボスがいてな」
俺はそう前置きした。
「一本で、一回きりでいい。長くて攻撃力が高いやつだ」
「一回きり?」
「使い捨てでもいい」
そこは割り切る。
どうせ、ぬるぬるダンジョンで核に一撃入れるためのロマン武器だ。
耐久性より、まずは届いて刺さることを優先したい。
「その代わり、本数を何本か作ってくれ」
「なるほど」
ミルトはそこで、ようやくこちらの意図を掴んだらしい。
「わかりました。つけ方はどうするつもりですか?」
「つけ方?」
「バルは巨大な球体ですし」
そこでミルトは、手で輪を作るような動きをした。
「真ん中をベルトみたいな形でつけますか?」
「……いや」
俺は少し考えてから首を振る。
「使い捨てだし、角を張り付ける感じでできるか?」
「張り付ける……まあ、できるとは思いますけど」
「じゃあそれで頼む」
こうして、ミルトの作業が始まった。
その間、手持ち無沙汰ということもあって、自然と会話になる。
「この角、どうやって使うつもりなんです?」
「そりゃアンカーチャージで使うつもりだよ」
俺は即答した。
「一点集中のロマン武器だからな」
ミルトの手が、そこで少し止まる。
「アンカーチャージって、前に使ってた、伸びて戻るやつですよね?」
「そうだよ」
俺は頷いた。
「アンカーを設置して、敵と逆方向に突進するやつを、アンカーチャージって呼んでる」
すると、そこでミルトが吹き出した。
いきなり笑い出したので、流石に少しむっとする。
「なんだよ」
俺は眉をひそめた。
「わかりやすくていいネーミングだろ? 割と気に入ってるんだが」
だがミルトは、まだ肩を揺らしている。
「いえ、後でわかります」
「……?」
意味深な言い方だったが、その時の俺には何のことかわからなかった。
そして、しばらくして完成した。
「できましたよ」
ミルトが差し出したのは、貼り付け型の角武器だった。
細長くて、先端が鋭い。
見るからに刺突向きだ。
「おお」
これはいい。
「貼り付け型の角武器ができたぞ、バル!」
俺はちょっとテンションが上がった。
「ちゃんとした、お前の武器だ!」
そう言うと、バルが目を輝かせた。
わかる。
そりゃそうだ。
今までのバル付きチェーンフレイルは、強かったけど武器だったのかと言われると怪しい。というか、お前自身が武器側だった。
だが今回は違う。
長い角。
ちゃんと刺すための形。
どう見ても武器っぽい。
「そうだな」
俺も少し嬉しくなる。
「お前が武器になるようなやつじゃないし、長い角だし、かっこいい武器だ!」
バルも嬉しそうだった。
これで少しは機嫌も上向くだろう。
「じゃあ、早速試しに着けてみるか」
そう思って、バルを見ながら装着位置を考える。
頭か。
前面か。
どこに付けるのがいいか。
……そして。
「ん?」
俺はそこで、ようやく気づいた。
よく考えたら、アンカーチャージを使うんだよな。
ということは――
「この角をつけるのって、頭じゃなくて尻側?」
沈黙。
次の瞬間、ミルトがまた笑い出した。
「おい」
「だから後でわかるって言ったじゃないですか」
「いや、待て」
待て待て待て。
言われてみればそうだ。
アンカーチャージは、アンカーを設置して、逆方向に突進して、そこから引き戻しでぶつける技だ。
つまり、刺さる側は後ろだ。
前じゃない。
「……マジか」
せっかくの、ちゃんとした武器っぽい長い角。
その装着位置が、尻側。
どう言い繕っても、格好いいとは言いづらい。
俺は輝いているバルを見た。
さっきまで、すごく嬉しそうだったのに。
「バル……」
少し言いづらい。
「すまん」
バルがこちらを見る。
「今回も、かっこいい武器とは言えなさそうだ」




