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第84話 水属性素材を求めて釣具店へ

 ミルトは行っちまったし、属性素材がありそうなところのモンスターでも倒しに行くか――と、一瞬は思った。


 だが、すぐにその考えは止まる。


「いや、割といろんなモンスター倒しに行ったよな……?」


 ここまでだって、闇雲に戦ってきたわけじゃない。


 湖の近辺も行った。

 森も歩いた。

 山岳地帯にも行っている。


 それでも、属性素材なんて見た覚えがない。


「闇雲に戦ったって、手に入りそうにないんだよな」


 そもそも、レアドロップだったら俺の場合落ちない。


 いや、絶対とは言わないが、体感として期待するだけ無駄だ。


「……いや、こんだけ出てないってことはレアドロだろ。どう考えても」


 そうなると、普通に狩りに行くのは悪手だ。


 だったら、モルはあるんだから買うか?


 そこまで考えて、すぐに却下する。


「いや、そもそも取引できんし……」


 NPC相手の売買は駄目だ。


 じゃあ他プレイヤーとの取引か?


 そこまで思ってから、俺は少し考え直した。


「いや、そもそも俺が倒したい相手は誰だ?」


 そこをぼやかすと、また無駄に動くことになる。


 倒したいのはヴェイルの、あの火の精霊っぽいやつだ。


 だったら、まずはそこを基準に考えるべきだろう。


「ターゲットを絞った方がいいな」


 そして、よくあるゲームの属性相性で考えるなら――


「火に強いのは、水だろ」


 たぶん。


 少なくとも、ありがちな相性でいくならそうだ。


 となると、水属性素材が欲しい。


「水か……」


 そこで少し悩む。


 このゲームで、海はまだ見たことがない。


 見たことがあるのは湖くらいだ。


 だが、湖の周辺にいたモンスターは、THE水って感じではなかった。水辺っぽさはあっても、水属性素材を落としそうな感じではない。


「湖の中に入る……?」


 いや、違うな。


 そこで、ふと頭に浮かんだ。


「……釣りだ!」


 こういうゲームだったら、釣りってサブ要素でよくあるシステムじゃないか。


 水属性っぽいものを狙うなら、むしろそっちの方がそれっぽい。


 魚系素材とか、水棲モンスター系とか、そういうのが釣りで出てもおかしくはない。


「バル! 釣具店を探しに出かけるぞ!」


 そう言ってから、少しだけ気づく。


 こうやって特定の店を探そうとしてみると、本当に色んな店がある。


 今までは、てっきりフレーバーテキスト的なものだと思っていた。


 背景の一部というか、別に入れない飾りみたいなものだと。


 だが、ファミリアサロンみたいに、ちゃんと利用できる施設があるとわかった今となっては話が違う。


「この土産屋とか、花屋とか、靴屋とかも、実際に利用できるんだろうな……」


 普通にゲームを進めるだけなら使わないんだろう。


 だが、家とか拠点を手に入れたら、装飾用に使えそうだ。


 というか、服屋とか靴屋は普通に見た目を変える要素なんじゃないか?


 下手すると課金枠でもおかしくない。


「あ、宝くじ屋」


 初めて見た。


 だが、あれだけはやらない。


「絶対、俺の運だと当たらねぇし」


 そこだけは確信がある。


 そうやって寄り道しつつ探して、ようやく釣竿が置いてある店を見つけた。


 湖へ行く出口の近くにないかな、と思って探していたのだが、思ったより時間がかかった。


「……やっと見つけた」


 よし。


 ここまで来たら、あとは早い。


 釣り具を買って、湖へ行って、何かしら水属性っぽいものが手に入るか試す。


 そう思って、俺は店へ入った。


「んじゃ早速――」


 釣り具を購入。


 そう続くはずだった。


 だが、現実はそんなに甘くない。


「狂人様とは取引することはできません」


「くそがっ!」


 思わずその場で悪態が漏れた。


 いや、わかってたよ?


 そんなことになる気がしてたよ?


 してたけど、いざ本当に言われると腹が立つんだよ。


「やっぱり駄目かよ……!」


 店の前で少しだけ項垂れる。


 だが、ここで一つだけはっきりしたこともあった。


「ファミリアサロンは良くて、釣具店は駄目……」


 やっぱり、物の売買があると駄目なのか?


 少なくとも、ただ施設を使うだけの場所と、商品を売り買いする場所では判定が違うらしい。


 それは一つの収穫ではある。


 あるが――


「今欲しいのは釣竿なんだよな……」


 問題は何も解決していない。


 水属性素材を手に入れるために釣りを思いついたのに、その入り口で止められた。


「……どうすっかな」


 またしても、別の回り道を探すしかなさそうだった。


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