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第74話 レグルスの謝罪

 レグルスの謝罪の内容は、思っていたより真っ当だった。


 今まで八つ当たりに近い形で突っかかってしまってすまなかったこと。

 今後は勝負を挑まないし、変に突っかかったりもしないこと。


 要するに、今までのあれこれをここで終わりにしたい、という話らしい。


「……いや、急にまともになるなよ」


 思わずそんな感想が漏れる。


 今まであれだけ付きまとってきたのに、どういう風の吹き回しだ。


 やっぱり原因は、昨日の最後にヴェイルから何か言われたことなんじゃないか。


 そう思って聞いてみると、レグルスは少しだけ嫌そうな顔をしながらも、言われた言葉を教えてくれた。


「あなた、ノーフェイトが強いと言ったから戦いに来たけど、ずいぶん期待外れね……彼は私のモンスターを一体倒したし、それ以外でも他のプレイヤーと違って面白かったわ。でもあなたは名前を覚える価値もないぐらい弱いし、面白みの欠片もないわね。どうやら私の方が彼にしてやられた形みたい」


 一字一句間違えなく覚えてしまうくらい、冷めた声だったらしい。


「……うわ」


 それを聞いて、俺は素直にそう思った。


 いや、これはきつい。


 俺が言われたら、どうにかしてぶちのめしたいと思う類の言葉だ。


 強い弱いだけじゃない。


 覚える価値もない。

 面白くもない。

 その上、比較対象として俺を持ち上げられている。


 レグルスにしてみれば、そりゃ効くだろう。


「でも」


 俺はそこで首を傾げた。


「それを聞いて俺に謝るのは、おかしくないか?」


 普通なら逆だ。


 俺の名前を引き合いに出されて煽られたなら、むしろ俺に怒りをぶつけてきてもおかしくない。


 だが、レグルスは違ったらしい。


 こいつなりに、その言葉で認識が変わったようだった。


 俺の方が遥か上にいるんだ、と。


 そして、れいにゃにいいところを見せてお近づきに、みたいな考え自体ができないくらいに。


 そこで思い出したのが、前に俺が言った言葉らしい。


 本当にれいにゃはお前の思い人か、というあれだ。


「……ああ」


 そこまで聞いて、なんとなく繋がった。


 レグルスはレグルスで、昨日のイベントで完全に頭を冷やされたのだろう。


 そのうえで、今日、本人に確認したら違うという返事が来た。


 だから今こうなっているらしい。


 まったく関係のない相手を、好きな人だと勝手に勘違いして、その挙句俺に対して迷惑をかけていた、と。


「……違う、ねぇ」


 その言葉を聞いて、俺は少しだけ引っかかった。


 今日の昼に、聞いたことがあるような返事だったからだ。


 やっぱこいつ、俺と同じ学校のやつでは?


 そう思わなくもなかったが、わざわざ口には出さない。


 そもそも、当人が本当にそうだとしても隠すだろうしな。


「……まあ、いいか」


 その辺を今ここで掘る意味はない。


 大事なのは、こいつが本当にこれで終わらせるつもりかどうかだ。


 そして、レグルスは最後にもうひとつ言った。


 れいにゃにも謝罪がしたいので、会わせてほしい、と。


「なるほどな」


 聞いた感じ、これで終わりにするための最後のひと押しらしい。


 それなら、会わせてもいい気はした。


 れいにゃの方からしても、これで終わるなら、付きまといそうな相手が一人減ることになる。少なくともマイナスではないだろう。


「ちょうどここで待ち合わせしてる」


 俺はそう言って、レグルスに待つよう伝えた。


「来たらそのまま話せ」


 レグルスは、いつもの勢いのある返事ではなく、小さく頷くだけだった。


 それから少しして、待ち合わせ相手がようやくやってきた。


「あれぇ? もう来てたんだぁ」


 そこまで言いかけて、れいにゃは止まった。


 目の前にいるのが俺だけじゃなく、レグルスまでいると気づいたのだろう。


 そして次の瞬間、あからさまに顔が歪んだ。


 渋柿でも食べたみたいな顔だった。


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