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第73話 お前レグルスの偽物か?

 施設が利用できそうだとわかったので、少しは進展した。


 もしかしたら、今のバルを治す施設とかあるのかもしれない。


 モンスター用の精神病院、みたいなものはあまり想像できないが、アゲアゲになるような施設とか、そういう方向ならなくはなさそうだ。


「そういう施設を探す方がいいかもしれないな……」


 だが、仮にそういう施設を見つけたとしても、その施設にバルを持ってくるのが難しい。


 バルが横に出現する距離を測って、その施設でちょうどバルが出現する位置を計算しながら出す必要があるし、あいつ大きくなって質量も上がったせいか、俺の力で動かすこともできない。


 しかも、ようやく利用できたとして、その施設で直らなかったら完全に無駄足だ。


「……いや」


 そこで、俺は考え直した。


「よく考えたら、そもそもこういうことの専門家がいるじゃん」


 モンスターを愛する……かは知らないが、少なくとも詳しそうなやつ。


 れいにゃだ。


 可愛いモンスターだけだった気はするけど、あいつならこういった時に使える情報を持っているんじゃないか。


「れいにゃに連絡取るか」


 そう決めてフレンド一覧を開くと、都合よくれいにゃはゲームにインしていた。


 バルの様子を伝える。

 それっぽい施設はないかということ。

 餌もなくなったので、ついでに売買してくれということ。


 そこまでまとめて送ると、思っていたより早く返事がきた。


 ちょうど町中にいるらしい。


 なら合流した方が早い、ということで待ち合わせになった。


 俺は先に待ち合わせ場所へ着いたので、今はれいにゃ待ちだ。


 バルは残念ながら、この待ち合わせ場所だと距離がぴったりではなかったので、歩いてきた途中に出現して、そのまま放置している。


 正確には放置というか、連れてこようとしても連れてこられなかった。


 大玉化した今のバルは、でかいし重いし、やる気もない。三拍子揃っている。


「……我ながら、よくこの状況で待ち合わせしようと思ったな」


 まあ、思ったところで仕方ない。


 れいにゃが来れば、何かしら知恵くらいは出るかもしれない。


 そう思って、道の先をぼんやり見ていた、その時だった。


「……あ?」


 こっちへ現れたのは、れいにゃではなかった。


 誰かを探しているみたいに周囲を見回しているレグルスだ。


「またお前か……」


 思わずそう漏れる。


 探している相手を考えるなら、たぶん俺だろう。


 今はバルもいないし、バルがいたとしても、あの状態で戦うことすらできない。


 しかも、れいにゃとここで待ち合わせしている以上、いつものように撒くこともできない。


 正直、昨日のイベントで最後にヴェイルをレグルスにけしかけたので、それで怒っていてもしょうがない。


 むしろそれが自然だ。


 なんだったら、塔で約束したけど俺はもともと行く気なかったしな。


 だが、今回はレグルスの様子がおかしかった。


 俺にはめられた、みたいな憤ってる感じの顔じゃない。


 言うなら、バルみたいに意気消沈している感じだ。


「……なんだその顔」


 思わず心の中でそう呟く。


 勢いがない。

 覇気がない。

 昨日のイベントで全部削られて、そのまま今日まで引きずってるみたいな顔だった。


 もしかして、昨日のヴェイルとの戦いで最後に言われた何かか?


 あの時、何を言われたのかは気になっている。


 観戦ではそこまで聞こえなかったし、あの後こいつが膝をついたのだけは見えた。


 そのことでこんな顔になっているんだろうか?


 そんなことを考えているうちに、レグルスもこっちへ気づいた。


 目が合う。


 いつもの流れなら、ここで睨んでくる。

 もしくは、開口一番文句だ。


 だが、今回は違った。


 レグルスはそこで一度立ち止まり、深呼吸をした。


 そして、発した最初の言葉は――


「……悪かった」


 謝罪だった。


「…………は?」


 思わず間の抜けた声が出る。


 いや待て。


 誰だお前。


「お前レグルスの偽物か?」


 反射でそう聞いてしまったのも仕方ないと思う。


 だって仕方ないだろう。


 あのレグルスだぞ?


 俺を見るたびに喧嘩腰で、ことあるごとに突っかかってきて、イベントでも真っ先に潰すとか言ってたあいつが、いきなり謝ってきたのだ。


 怖いわ。


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