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第68話 まさかの大玉進化

 バルが光るという事態に、俺はどうすればいいかわからず戸惑ってしまった。


 対応が遅れたのは当然だ。


 そりゃそうだろう。こんなタイミングで進化するなんて想定していない。


 だが、こっちの都合なんて関係なく、バルの進化は始まってしまった。


 そのまま、バキッという大きな音が響く。


「うおっ!?」


 思わず声が漏れる。


 バルの体が、目に見えて大きくなっていくのだ。


 光の中で膨らむように、いや、殻でも割るみたいに、形そのものが変わっていく。


「これが進化ってやつか……!」


 もっとこう、滑らかに変わるものかと思っていた。


 だが実際は違う。


 音も派手だし、見た目の変化もかなり荒っぽい。


 ここからさらに、バルが望んでいたらしい姿に変わって落ち着くのかと思った。


 だが、そうはならなかった。


 そこで光が止まったのだ。


「……は?」


 現れたのは、俺の身長と同じくらいまで成長した、大玉だった。


 大きい。


 ただただ大きい。


 前よりずっと圧はある。存在感もある。だが、それだけだ。


「これが……バルの望んだ姿……か?」


 思わずそう呟いたが、すぐに首を傾げる。


「いや、どう考えても違うくね?」


 もっとこう、格好いい何かになるとか、鋭くなるとか、そういう方向じゃないのか。


 なんでただの巨大化なんだよ。


 ヴェイルもこの事態にどうすればいいかわからないらしく、少しだけ戸惑った顔をしていた。


 相手の炎の精霊っぽいやつも同じだ。


 まあ、一番戸惑っているのは俺なんだがな。


「……バル」


 俺は慎重に声をかけた。


「俺の声、聞こえるか?」


 しばらくして、進化したバルが目を開いた。


 そして、こっちを見た。


 どうやら聞こえてはいるらしい。


 しかも、自分が進化したということも認識しているようだった。


「よし、なら――」


 そこで俺は、ふと冷静になる。


 いや、待て。


 進化したなら、まず確認しないといけないことがあるだろう。


 こいつが今の自分の姿をどう思うか、だ。


 俺はヴェイルへ向かって手を上げた。


「悪い、ちょっと待ってもらっていいか?」


 戦闘中に何を言ってるんだという話だが、ヴェイルは少し呆れたような顔をしたあと、一応待ってくれることになった。


「……割と融通が利くやつで助かる」


 俺は小さくそう呟いてから、インベントリを開いた。


 実は、バルが進化した時のために、拠点にあった鏡を一枚拝借していたのだ。


 進化後の自分の姿を見せる必要があるかもしれないと思っていたからだが、まさかこんな形で必要になるとは思わなかった。


「ほら、見ろ」


 俺は鏡をバルへ向けた。


 バルは、そこに映った自分の姿を見た。


 そして――


「……うわ」


 すごく震え始めた。


 小刻みとかそういうレベルじゃない。


 見ていてわかるくらい、全身で震えている。


 俺はそこで、未来を予言した。


「おれはこれから起こることを予言するぜ」


 誰に言うでもなく、思わず口に出る。


「バルは俺に怒って突進してくる、とな!」


 理不尽では?


 そう思わなくもない。


 だが、原因に思い当たる節がないわけでもないので、そこはもう受け入れるしかなかった。


 そして次の瞬間、バルは我に返ったのか、あるいは怒りに身を任せたのか――あろうことか、俺たちの絆の技であるはずのアンカーチャージを放ってきやがった。


「おい待て!?」


 バルがアンカーを置く。

 逆方向へ走る。

 そして引き戻しの勢いで一直線。


 完璧なアンカーチャージだった。


 お前、そういうところだけ妙にキレがいいな!


 だが今は、プレイヤーへのダメージが無効化されるフィールドだ。


 だから俺自身にダメージはない。


 その代わり――


 鏡が、粉々に砕け散った。


「俺じゃなくてそっちかよ!」


 いや、俺に当たってはいるんだが、俺は無傷で、手に持っていた鏡だけが派手に砕けたのだ。


 なんというか、イベントフィールドでよかったな、本当に。


 そして、アンカーチャージの勢いをそのまま残したバルは、跳ね返るように逆方向へ飛んでいった。


 その先にいたのは、ヴェイルの炎の精霊だ。


「えっ」


 嫌な予感がした。


 ここで勝つの、待ってもらった手前ちょっと申し訳なさすぎるんだが。


 そんなことが頭をよぎったが――結果は違った。


 炎の精霊は、バルが飛んでいった直後、その場に再び現れたのだ。


「……あ?」


 消えていない。


 いや、当たってはいる。だが倒れていない。


 それどころか、まるで何事もなかったみたいに元の位置に戻っている。


「物理ダメージカットどころじゃないな……」


 俺は思わず呟いた。


「これ、物理ダメージ無効化だろ」


 そりゃ勝てんわ。


 ジェルベアみたいに物理に強い、じゃない。


 物理そのものが通っていない。


 今のバルのアンカーチャージを食らって無傷なら、少なくとも今の俺の手札で正面からどうこうできる相手じゃない。


 俺は小さく息を吐いた。


 そして、ヴェイルを見る。


「……降参で」


 そう言うしかなかった。


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