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第6話 秘密のダンジョンの先にいたのは

 うまくいきだしたと思ったが、どうやらまだバルとの絆は育めていないらしい。


 周囲への注意が疎かになると、普通にバルからの攻撃が飛んでくる。相棒だと言っているのに、こいつはそのへんをまったく理解していないのだろうか。


「……まあ、一朝一夕で信頼されるとは思ってないけどな」


 俺はため息をついた。


 卵の時に散々なことをした自覚はある。暖炉に入れたり、水に沈めたり、転がしたり、投げたり。今さら口で相棒だと言ったところで、はいそうですかと受け入れてくれるほど甘くないのだろう。


 きっと、長く一緒に過ごすことで少しずつ積み上げていくしかない。


 周辺での戦闘は、まあ上々と言っていいはずだ。死ぬ時は死ぬが、それでも敵は倒せるようになってきた。だったら次に進んでもいい頃合いだろう。


「よし、ダンジョン行くか」


 ずっと訓練ばかりでは飽きる。


 ダンジョンの話は、すでにトレーニング施設にいた人から聞いていた。NPCとはいえ、一人一人にちゃんとAIがあるのか、話しかければ割と色々教えてくれる。


 俺のやっていることが奇怪すぎるのか、露骨に嫌そうな顔をしてくるNPCが多い中で、唯一にこやかに接してくれたNPCが教えてくれた取っておきの情報だった。


 町の近くにある秘密のダンジョン。


 ただし、特定の条件を満たさないと見ることも入ることもできないらしい。


「一発目からそんな特別なダンジョンに行けるとか、幸先いいな」


 卵スタートというハンデのせいで、一週間以上ほかのプレイヤーに置いていかれていることについては考えないことにした。


 考えたところで現実は変わらない。


 俺はバルを連れて街を出た。


 教えられた通り、街道を少し外れた場所へ向かう。草をかき分け、目印らしい場所を探していくと、やがてそれはあっさり見つかった。


「……エレベーター?」


 思わず呟く。


 そこにあったのは、どう見てもエレベーターの入り口だった。


 もっとこう、洞窟とか、遺跡とか、怪しい地下通路とか、そういうものを想像していた。まさか草原の外れに、露骨に人工物ですという顔をした入り口があるとは思わない。


「いやまあ、特別なダンジョンって言ってたしな……」


 自分を納得させるようにそう言って、俺は中へ入った。


 すると自動で扉が閉まり、そのままゆっくりと下へ降りていく。


「おお……」


 思わず少しだけ感心する。


 ファンタジー寄りの世界観かと思っていたが、こういうのもあるのか。まあ、異邦人がどうとか言っていたし、完全に剣と魔法だけの世界でもないのだろう。


 そうしてしばらく下がった後、扉が開く。


 その先を見て、俺は少しだけ首を傾げた。


「……ベッドルーム?」


 そこにあったのは、宿屋と同じような部屋だった。


 見覚えのあるベッド。休めそうな空間。戦いの前の前室というより、誰かが生活している部屋みたいな雰囲気すらある。


「これがセーフルームってやつか?」


 NPCはそんなことを言っていた気がする。


 とりあえず街から近いとはいえ、ここまで来るのにそれなりに歩いた。もしこの先で死ぬなら、リスポーン地点は更新しておきたい。


「まあ、やっとくか」


 俺はベッドに腰を下ろし、そのまま軽く休む。


 これで更新できたはずだ。たぶん。


 バルはいつものように、少し離れた位置で丸く収まっていた。相変わらず見た目がよくわからないやつだが、今は妙に静かだ。


「秘密のダンジョン、ね」


 なんだかんだで、少し胸が高鳴る。


 こういうのだ。こういう冒険感が欲しかった。


 草原で延々と球体を敵にぶつけるだけの日々も嫌いではなかったが、せっかくVRMMORPGを始めたのだから、やっぱり未知の場所に行きたい。


 俺はワクワクした気持ちのまま、扉へ向かった。


「よし、行くぞバル」


 扉を開ける。


 そして、その瞬間。


「お悩み相談室」


 という看板が目に入った。


「……は?」


 さらに、その下。


 そこには、今にもはち切れそうな肉体をさらした漢女が立っていた。


「…………」


 俺は無言で扉を閉めた。


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