第59話 交渉成立だな
確かに、その情報は有用そうなのは見てわかる。
その情報を引き換えにするなら、手を貸してもいいと思えるほどには。
だが、れいにゃよ。
俺のモンスターはバル一匹だ。
「とてもその情報を活かせそうとは思わないが、そこのところはどうなんだ?」
俺がそう聞くと、れいにゃは少し目を丸くした。
そう返されるとは思っていなかったのだろう。
俺はそのまま続ける。
「ちなみに俺のモンスターの編成枠を増やすスキルの経験値は溜まってない。加えて、称号でモンスターが仲間になりにくいって効果も得ている。そこんところどうなんだ?」
れいにゃは、ぐぬぬ、という顔になった。
自分の優位性が少し薄まったのがわかったのだろう。次の言葉が出ないらしい。
だが、正直その情報自体は今後モンスターが手に入った時に有用なのは確かだ。できれば欲しい。
だから俺は、さらに条件を積むことにした。
「プラスして良さそうな情報はないか?」
れいにゃが、じっとこっちを見る。
「それが手に入るなら、バルでそのモンスターをぶっ飛ばして向こう岸に行くっていう不確かな方法じゃなくて、もっと確実に向こう岸まで渡す方法を開示して連れて行ってもいいぞ」
俺がそう言うと、れいにゃは考え込んだ。
少し長かった。
森の音だけが、妙に耳につく。
やがて、れいにゃが口を開く。
「……モンスターを高確率で仲間にする方法なら教えられる」
「高確率で?」
「うん。最低でも経験値は溜まるんじゃないかなぁ」
それは、正直かなり欲しい。
同時にモンスターを出す方法も気にはなるが、そもそも仲間を増やせていない現状を打開できるなら、そっちの方が優先度は高い。
だが、れいにゃはそこで釘を刺してきた。
「ただその情報はぁ、向こう岸にちゃんと渡してからじゃないと教えない」
「……まあ、そこはそうか」
ただで渡す気はないらしい。
当然と言えば当然だ。
そして、さらにれいにゃは続ける。
「それとぉ、複数のモンスターを同時に出してる理由の方は、花畑でモンスターを見て、かつ仲間にしたい見た目で、仲間にできるところまで手伝ったら教えてあげる」
そこで一度区切って、にやっと笑う。
「これ以上は譲歩しないよ?」
「……」
正直、同時に出す方法は欲しい。
かなり欲しい。
だが、今すぐ絶対必要かと言われればそうでもない。そもそも、今の俺には増やす仲間がいないのだ。今回ダメだったとしても、次回以降で出してくることもあるだろう。
その時にまた交渉すればいい。
それよりも、まずは仲間を増やせる可能性の方が大事だ。
「……ありだな」
俺は小さく呟いた。
向こう岸に渡したら、高確率で仲間にする方法を教える。
同時に出す方は、今回は保留。ただし次の交渉材料にはなる。
悪くない。
「交渉成立だな」
俺はれいにゃを見た。
「その条件でいこう」
れいにゃは少しだけほっとしたように息をついた。
「よかったぁ。話がわかる人でぇ」
「どの口が言ってるんだ」
まあいい。
条件はまとまった。
だったら、あとは向こう岸に渡すだけだ。
俺はさっそく、向こう岸に行く方法としてミルトに作ってもらったバル付きチェーンフレイルの武器を取り出した。
そして、バルに取り付ける。
れいにゃは、それを見た瞬間に引いた。
「……えぇ?」
素の声だった。
俺はその反応に少しだけ満足しながら、武器を軽く持ち上げてみせる。
「これが、確実に渡す方法だ」
れいにゃはバルとチェーンを見比べ、それから俺の顔を見た。
「君ってぇ……」
「何だよ」
「やっぱり狂人なんじゃないかなぁ……」
「失礼だな」
否定しきれないのが腹立たしかった。




