表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/73

第57話 約束は花畑を見つけるまでだ

 ミルトみたいに、使っている施設の代わりを探すような話にならなくてよかった。


 ……まあ、この花畑探しも似たようなものな気がしなくもないが、今回については場所を探すだけだ。少なくとも、鍛冶場みたいに今後ずっと付き合う話ではない。そう思えば、まだ気は楽だった。


 れいにゃが探したのは、この辺り一帯の森らしい。


 だったら、まだ探していないであろう奥の方へ進めばいい。


 俺はそう判断して、バルと一緒に森の奥へ足を向けた。


 木々は少しずつ濃くなっていき、出てくるモンスターも以前より明らかに強くなっている。だが、だからといって問題になるほどではなかった。


「まあ、このくらいならバルの敵じゃないな」


 軽くぶつかったモンスターを見送りながら、俺はそう呟く。


 バルも、今さらこの程度では気分も乗らないらしい。危なげなく片付けていく様子に、変な余裕すら感じる。


 そうして歩いているうちに、ふと別のことが頭に浮かんだ。


「……そういえば、れいにゃって戦えるのか?」


 可愛いモンスターが好きで続けてる、みたいなことを言っていた気がする。


 だが、実際に戦っているところを俺は見たことがない。


 見たのは、もふもふの大きいやつを枕にしていた姿とか、小さいやつを抱えていた姿とか、そっちばかりだ。


 仲間にする方法がどういうものなのか、俺は詳しく知らない。


 だが、見つけたあとに「仲間にするまで付き合ってぇ」とか言われたら普通に面倒だった。


「いや」


 そこで、俺は自分の考えを打ち切る。


「俺が約束したのは花畑を見つけるところまでだ」


 それ以上は却下だ。


 そこは最初から線を引いておかないと、ずるずる引っ張られる気がする。


 見つからなかった場合は……まあ、あまり今は考えたくない。


 餌の売買を手伝ってもらう都合上、れいにゃの機嫌を完全に損ねるのもよろしくない。だから多少は気を遣うつもりでいたのだが――


「……いや、待てよ?」


 歩きながら、俺は足を緩めた。


 よく考えたら、前と違って今はミルトとの仲もいい。


 それに、そもそもミルトから売買ができないとは聞いていない気がする。さっきの話でも問題になっていたのは鍛冶場だけだった。


 となると――


「れいにゃに、そこまで気を遣う必要なくないか?」


 むしろ、今までちょっと気を回しすぎていた可能性すらある。


 もちろん、喧嘩腰になる必要はない。


 だが、何かうだうだ言い出したら、そこはきっぱり却下でいいはずだ。


「……そうだな。よし」


 なんだか少しだけ、気持ちが楽になった。


 そうして森の奥へ進んでいくと、不意に視界が少し開けた。


「ん?」


 そこは高台に近い地形になっていて、向こう側へ渡るための橋がかかっていた。


 ただし、橋は途中で崩れている。


 真ん中あたりから先がごっそり抜け落ちていて、普通に歩いて渡るのは無理だ。ジャンプでも届かない。頑張れば行けそう、という距離ですらない。


「……あー」


 嫌な予感がした。


 こういう場所って、大体何かあるのだ。


 しかも、俺にはひとつだけ渡れそうな手段がある。


 バルを使った、あの移動法だ。


 アンカーを使って振り子みたいに飛ぶ、あれ。


「こういう場所って、やっぱ特別なモンスターとかいそうだよなぁ……」


 橋の向こうだけ空気が違う、みたいなやつだ。


 だが、だからといってすぐ渡る気にはならなかった。


 れいにゃの頼みは、花畑を見つけることだ。


 その先の探索までは含まれていない。


「……とりあえず、周りを回ってみるか」


 俺は橋の正面から離れて、横手へ回り込んだ。


 すると案の定、少し離れた場所から橋の向こう側が見えた。


「やっぱりか」


 そこには、遠目にもわかるくらい色の違う一角があった。


 花畑っぽい。


 森の中にぽっかりと開いたような、明るい色の場所だ。


「当たりっぽいな」


 これで花畑を見つけたことにはなる。


 なるが――


「でも、あの移動法は教えるつもりはないぞ」


 俺は小さく呟いた。


 今回の件で約束したのは、あくまで花畑を見つけるまでだ。


 そこまでで十分対価は払っている。


 橋を渡る方法まで提供してやる義理はない。ましてや、バルを使った移動法なんて俺の切り札に近い。明日のイベント前にわざわざ他人へ教えるようなものじゃない。


「場所を見つけた。そこまでだ」


 そう自分に確認してから、俺はれいにゃへフレンドメッセージを送った。


 花畑らしき場所を見つけたこと。

 その近くの座標。

 橋が崩れていること。


 余計なことは書かない。


 簡潔にそれだけ送る。


 少しして、すぐ返信が返ってきた。


 びっくりするくらいテンションの高い文面だった。


「……うわ、すげぇ喜んでるな」


 どうやら、かなり本気で探していたらしい。


 しかも、すぐこっちへ来るそうだ。


「いや、来るのはいいけど」


 俺は小さくため息をついた。


「この先も付き合うのは勘弁してほしいぞ……」


 そう呟きながら、俺は橋の向こうにある花畑をもう一度見た。


 見つけたのは確かだ。


 だが、あの先に何がいるのか。


 少しだけ気になってしまっている自分がいるのも、また事実だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ