第51話 お前が武器になるんだ
バル、よく聞いてくれ。
俺も、お前の装備を作ってもらおうと考えている。明後日のイベントに向けてだ。
そこで疑問なんだが――お前は、どんな武器だったら装備できるんだ?
そう。
考えても思いつかないので、装備するバル本人に聞いてみることにした。
バルは近くの水桶に映った自分の姿をじっと見返した。
そして十分ほどだろうか。かなり長い時間、真面目に考え込んでいた。
そのうち、ミルトはネブラとともに装備の出来を確かめに闇鍛冶場の外へ出ていった。きっと外で使い心地を試しているのだろう。
俺も、さすがに長いので再び声をかけようかと思ったが、答えが出ていないのに話しかけて邪魔しても変わらない。だから俺も、改めて考えることにした。
まず、バル自身に装備させて使えそうなもの。
さっきも考えたが、やはり思いつかない。
防具だとしても、バルの防御力は称号の影響か、トレーニングの影響か、はたまた両方かはわからないが、正直ネブラと見比べて天と地ほど差があると言わんばかりに突出して高い。今さら普通の防具を付けたところで、伸び幅があるとも思えなかった。
しかもアンカーの使い方を考えると、装備が妨げになる可能性が高い。動きを阻害するようでは意味がない。
却下だ。
となると、バルに装備させるという路線で考える限り、答えは出ないのかもしれない。
そこで、ふと思い出す。
この世界には、単なる剣や銃が存在しない。理由は単純で、モンスター同士でないとダメージが与えられないからだ。
そこには能力値の差だけじゃない、明確な設定がある。プレイヤーやこの世界の住人が直接モンスターへ攻撃しても、障壁か何かに阻まれてダメージにならない。
だが、モンスターに装備させた武器なら通る。
この違いは何だ。
考えるに、モンスターへ直接つながっているかどうかで判定しているのではないか。
そうなると、逆だ。
バルが武器を装備するんじゃない。
バルが、武器になる方向はどうだ?
俺はこれまでの経験をもとに、最高の形を考えた。
そして導き出した答えから、鍛冶場にあるもので一番イメージに近いものを探す。
見つかったのは、工事用なのか装飾なのかわからないが、一本のチェーンだった。
「……これだな」
俺の答えは見つかった。
だが見つかったからこそ、バルに再度聞いてみることにした。
この答え、絶対に怒るやつだ。
バルが自分でよさそうな武器を思いついているなら、それが一番いい。普通に考えて、俺が思いつかなかったからキワモノに寄っただけで、ちゃんとバルが装備できるならその方がよほど望ましい。
「バル?」
聞いてみる。
返答がない。
どういうことだと正面に回り込んでみると――
「こいつ、寝てやがる!」
思わず声が出た。
水桶の前であれだけ真面目そうにしていたくせに、考え疲れてそのまま寝落ちしていたらしい。
俺はバルの体を軽く叩いた。
「おい、起きろ」
しばらくして、もぞっと揺れる。どうやら起きたようだ。
「……で、武器は考えついたか?」
バルは自分の体にやるせなさを感じているのか、返答はすねたような気配だった。
見つからなかったらしい。
まあ、そうだよな。
球体だし。
「バル、俺は思いついたぞ」
それを聞いた瞬間、バルの気配が明るくなる。露骨に嬉しそうだった。
「いや、違うんだ」
俺は慌てて先に釘を刺した。
「これは、お前が嬉しくなるような武器じゃない」
多分、それを言わずに説明したら攻撃してくる。
わかる。俺だって逆の立場ならそうする。
「でも、明後日のルールでいくと、すごく都合がいい武器なんだ。それ以外にも使い道はある。ネタ武器ってわけでもない」
そこまで説明してから、念を押す。
「それでも聞くか? 聞くなら、俺に攻撃してくるなよ?」
バルは明らかに訝しんでいた。
だが自分では思いつかなかったからか、しぶしぶといった様子で了承してくれた。
「よし」
俺は一本のチェーンを持ってきて、バルの横に並べる。
「これが、俺の考えた武器だ」
だが、それだけでは当然伝わらない。
バル自身も、頭の上に疑問符を浮かべているような空気を出していた。
なので、俺は実演することにした。
チェーンを持つ。
ぐるん、と回す。
さらに回す。
ぐるんぐるんと勢いをつけて――手を放す。
投合。
近くの壁にぶつかり、少しだけ欠けた。
バルは、それを見てようやく何となくイメージしたらしい。
だが、まだ核心は言っていない。
俺はバルがこちらに攻撃を仕掛けてこないように持ち上げて、最後の一言を告げた。
「バル」
俺は、できるだけ真面目な顔で言った。
「お前が武器を装備するんじゃない」
バルがじっとこっちを見る。
「お前が武器になるんだ!」
間を置かず、畳みかける。
「俺が考えた武器は――バル付きチェーンフレイルだ!」




