第45話 当初の予定通り、ごり押しだ
敵が見える位置から少し下がって、改めて作戦会議だ。
「ミルト、少しは粘ってくれ」
一応そう声をかけておく。
俺だって、相手がいきなりプレイヤー自身を狙ってくるとは思っていなかった。正直かなりびっくりしたし、一対四なんて無理に決まっている。こっちが倒せたのは、相手のモンスター一体だけだ。
そう言うと、ミルトは軽く謝りながら、それでも一体倒せたんですか、と驚いたように言った。
うむ。
その驚きは少し心地いい。
勘弁してやろう。
「それにしても、いきなり十人に増えてるのは俺もびっくりしてる」
改めて拠点の方を見ながら、俺はため息をついた。
「あいつら、過剰戦力すぎでは?」
門の前にいるやつらだし、たぶん下っ端なんだとは思う。
だが、実際に戦った感想では、草原とかに出てくる敵とは比べ物にならないくらい耐久力が高い。一対一なら余裕だし、二体までならいけると思う。だが三体以上は厳しい。
しかも、相手は一体倒しても次の一体を出してくる。
それが十人だ。
「ミルト、何かいい方法はあるか? ダストミストで同士討ちとか」
ミルトは少し考えてから、首を振った。
「ダストミスト自体は効くと思いますけど、単体向けですし……モンスターに指示できるなら、あれだけ人数がいた場合、戦わせなければいいだけなので、ちょっと望み薄です」
「だよなぁ……」
せめて分散させないと、倒すに倒せない。
十人から一斉に攻撃されたら流石に無理だし、プレイヤー狙いまでしてくるならなおさらだ。
「いっそのこと、犯罪者だからってことで、俺らもプレイヤー狙うか? 相手も狙ってきてるわけだし」
そう言うと、ミルトは少し逡巡した。
「どうした?」
「……それ、NPC自体の命を奪うわけじゃないですか」
「あ」
「狂人の友達ってだけで割とデメリットありましたし、また変なデメリットのある称号つきそうじゃないですか?」
それを聞いて、なるほど確かに、と思った。
評判低下だけなら、まあ今さらだ。
でも、もし次は宿屋も使えなくなるとか、そういう方向に行かれたら流石に困る。
「NPCを直接狙うのは最終手段だな……」
俺は素直に頷いた。
となると、相手の人数が多いのが原因なんだから、こっちも人数を増やすか?
フレンドだと、れいにゃしかいないけど、あいつはこういうことを好む感じじゃない。レグルス……はないな。逆に敵になりそうだ。
「ミルトの方はいないのか?」
……返事はない。
まあ、そうだよな。
「よし、ミルト。当初の予定通りいこう。ごり押しだ!」
「ごり押しですか……」
「とりあえず何度も戦ってたら、うまく一体倒せたり、相手が疲れてきたら隙ができたりとかするかもしれないだろ」
俺は指を折って数えながら続ける。
「ダストミスト自体も、一体戦えなくなるなら全然ありだ。邪魔になるように、でっかいモンスターを狙ってくれ。それでとりあえず何回か続けるぞ。そのうち相手も回復アイテムとかなくなったりして、倒せることもあるだろ。もしかしたら戦闘中に新しい技を覚えるかもしれないしな」
そこまで言ってから、俺は少し笑った。
「そう考えたら、無限に戦闘できるいい相手かもしれん」
ミルトは不安そうな顔をしていたが、それでも頷いた。
他に手がないのも事実だ。
そうして俺たちは、再び敵へ向かってゾンビアタックを繰り返すことにした。
もちろん、十人相手なんて無理ゲーなので、すぐに倒された。
だが、それでも構わない。
突破口が見つかるまで、続けてやる。




