表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/73

第44話 初回のゾンビアタックは普通に失敗した

 昨日は、割と勢いで話を進めてしまった気がしていた。


 ゲームを終えたあとになって、少しだけ思ったのだ。


 ラザロの拠点を潰す。

 闇鍛冶場を押さえる。

 そのために突っ込む。


 言葉にすると筋は通っている。通っているが、実際にやるとなると話は別だ。ガルディーノも頭を抱えていたし、ミルトまで巻き込んで大丈夫だったのか、少しだけ考えはした。


 ……だが。


 今日、いつものようにゲームへログインして、俺はその考えをあっさり忘れることになった。


 宿の前には、やる気満々なミルトがいたからだ。


「なんでそんなにやる気満々なんだ?」


 思わずそのまま聞くと、ミルトは待ってましたと言わんばかりに説明を始めた。


「実は、鍛冶場と闇鍛冶場って違いがあるみたいなんです」


「違い?」


「はい。普通の鍛冶場だと、その工房の基準を満たさないものは、作っても失敗扱いで破棄されることがあるそうです」


「へえ」


 初耳だった。


 鍛冶場なんて、作ろうとしたものをそのまま作れる場所だと思っていた。そうじゃないらしい。


「でも、闇鍛冶場だとそういうのがないみたいで……規格外のものでも、気にせず作れるそうなんです」


「……なるほどな」


 それはでかい。


 確かに、そういう自由度が欲しいなら、わざわざ裏の鍛冶場なんてものが存在する意味もわかる。


 ミルトはさらに続けた。


「そういうことをしたければ、本来は設備自体を大金を出して買うしかないらしいんです。でも闇鍛冶場なら、その条件を満たせるかもしれなくて」


「ダンジョンの鍛冶場じゃ駄目なのか?」


「近いことはできるみたいですけど……アイテムのロストもありますし、鍛冶中にモンスターが乱入してくる可能性もあるらしくて、かなり面倒みたいです」


「……ああ」


 それは確かに嫌だ。


 せっかく何か作っている最中に邪魔が入るとか、面倒どころの話じゃない。しかもロストの可能性まであるなら、なおさらだ。


「なるほど。それで乗り気なのか」


「はい」


 ミルトは素直に頷いた。


「それに、僕のアイテムをあなたに預ければ消えませんし」


「まあ、そうなるな」


「今までのこの世界の人たちとのやり取りより、イベントっぽくて面白そうでもあります」


「……お前、思ったよりノリいいな」


 俺がそう言うと、ミルトは少しだけ照れくさそうに目を逸らした。


 だが、意気は十分だった。


 ならもう、昨日の少しばかりの後悔を引きずる必要もない。


「よし」


 俺は頷いた。


「行くか」


 そうして俺たちは、そのままラザロの拠点へ向かった。


 ガルディーノから聞いていた場所へ着いてみると、敷地は思っていたより広かった。


「……でかいな」


 建物も一つじゃない。正面から見えるだけでも、それなりに組織立って動いているのが伝わってくる。少なくとも、そこらのチンピラのたまり場、で済ませていい規模ではなかった。


「ちゃんと拠点って感じですね……」


 ミルトも少し緊張した声でそう言った。


 そして、こっちが観察している間に、向こうもこちらへ気づいたらしい。


 拠点前で番をしていた連中が、露骨にこちらへ意識を向けてくる。


「こちらラザロの拠点であってるか、とか聞こうと思ったんだけど」


「言ってる場合じゃなさそうですね」


 その通りだった。


 向こうは確認も何もなかった。


 俺たちが何者か問いただすより早く、手慣れた様子でモンスターをけしかけてきたのだ。


「いきなりかよ!」


 しかも動きに迷いがない。普段からこういう対応に慣れているのが丸わかりだった。


「手慣れてやがる!!」


 叫びながら、俺は飛んできた一撃を横にずれてかわす。


 速い。だが、俺だってこれまでどれだけバルの攻撃を避けてきたと思っている。バルに比べれば、直線気味の攻撃なんてまだ軽い方だ。


「これなら――」


 そこまで思って、すぐに横を見た。


 ミルトは、普通に食らって霞になっていた。


「はやいだろ!?」


 一瞬で消えた。


 いや、そうか。こっちが避け慣れすぎているだけで、普通はこんなもんなのかもしれない。


 だが問題はない。


 そこは事前に打ち合わせ済みだ。


 今回の作戦はゾンビアタック。やられても、リスポーン地点からここへ戻ってくる。ミルトにも、俺が戦っていたら加勢すること、もし俺がいなければ待ち合わせ場所で合流することを伝えてある。


「よし、こっちはこっちでやるぞ!」


 俺はバルへ指示を飛ばした。


「硬質化して突進!」


 バルがぐっと硬くなる。そのまま一直線に飛び出し、相手のモンスターへ突っ込んだ。


 鈍い衝撃音。


 たしかにダメージは入った。


 だが、草原や森の連中とは感触がまるで違う。倒れない。耐久がある。普通に硬い。


「まあ、そうでもないと弱い組織ってことで、すぐ捕まるよな!!」


 自分に言い聞かせるように叫ぶ。


 拠点を構えてる犯罪者集団が、その辺のモンスター並みに脆かったら逆に困る。そういう意味では納得の強さだった。


 とはいえ、納得できても楽になるわけじゃない。


 こっちはバル一体。

 向こうは複数。


 多勢に無勢だ。


「まずは一体!」


 俺はバルを動かして、とにかく一匹に集中させた。


 相手の連携を崩すには、数を減らすのが先だ。


 何度かの攻防のあと、ようやく一体を倒す。


「よしっ!」


 だが、その瞬間にはもう遅かった。


 他のモンスターがこっちへ殺到する。


「流石に一対四は無理!」


 避け切れない。


 連続で視界が揺れたところで、俺の体もあっさり霞になった。


 次に目を開けたのは、リスポーン地点だった。


「……まあ、そうなるよな」


 初回で押し切れるとは思っていなかった。


 問題はここからだ。


 俺はすぐに周囲を確認する。ミルトの姿はない。


「ってことは、作戦通りあっちに向かったな」


 打ち合わせでは、俺が戦っていたら加勢。いなければ待っていろ、と伝えてある。今ここにいないなら、もう待ち合わせ場所へ向かっているはずだった。


 俺も急いで歩き出す。


 そして待ち合わせ場所でミルトと合流し、そのままラザロの拠点の方へ目を向けた。


「……は?」


 人数が増えていた。


 さっきまで四人だったはずの番が、今は十人近くに膨れ上がっている。


「いや、いくらゾンビ戦法で行くとはいえ、多すぎでは?」


 思わずそのまま口に出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ