表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/73

第43話 クラリスのお墨付きをもらった

 久しぶりに、あのこの世界に不釣り合いなエレベーターのあるダンジョンへ向かった。


 最初に来た時のことを思い出して、少しだけ身構える。


 秘密のダンジョンかと思ったら、お悩み相談室だった場所だ。インパクトが強すぎて、今でも妙に記憶に残っている。


「そういえば、ここって特定のやつしか入れないんじゃなかったか?」


 エレベーターの前で、ふとそんなことを思った。


 俺は一度来たことがある。だからいいとして、ミルトは違う。もし入れないなら、ここまで来た意味がなくなる。


 だが、実際に入ってみると、ミルトも普通に中へ入れた。


「……入れたな」


「入れましたね」


 少し拍子抜けする。


 たぶん、狂人の友達だか何だかの称号が悪さ――いや、この場合は良い方向に働いているのかもしれない。


 何にせよ、入れたなら問題ない。


 エレベーターが下りていく間に、俺は改めてミルトの方を見た。


 ここへ来る前に、クラリスのことはちゃんと説明してある。


 今度はガルディーノの時みたいに、建前でごまかしたり、途中を端折ったりはしなかった。秘密のダンジョンだと思って来たら相談室だったことも、最初に会った時に俺が先手必勝でやらかしたことも、そのあと説教されたことも、一通り話してある。


 これなら、俺みたいにいきなりクラリスへ攻撃を仕掛けるようなことはしないだろう。


 ……いや、そもそもミルトは説明しなくてもそんなことはしなかった気がするが。


 エレベーターが止まり、扉が開く。


 その先にいたのは、前と変わらない筋肉隆々のクラリスだった。


「何か相談事でもできたのかしら?」


 こっちを見て、クラリスが言う。


 察しがいい。


 いや、まあ、そうじゃないと一度ここに来たやつなんて、わざわざ戻って来ないだろうけどな。


「まあ、そんなところだ」


 俺は小さく肩をすくめて、それからミルトを軽く紹介した。


 必要最低限だけだ。


 そのあと、ラザロのことを話した。


 抗争が起こりそうなこと。

 ラザロが犯罪者集団だということ。

 闇鍛冶場が必要なこと。

 どうして俺たちがラザロの拠点を狙う発想に至ったのか。


 途中でミルトが少しだけ気まずそうな顔をしていたが、今さら引っ込める話でもない。どうせ確認するなら、全部まとめてした方が早い。


 クラリスは頭を押さえながら、しばらく長く考え込んでいた。


「……なるほどね」


 やがて、ようやくそう呟く。


 全部飲み込んだらしい。


 そして出た結論は、思っていたよりずっとあっさりしていた。


「ぶっ潰してもいいわよ」


「お、いいのか」


 俺が聞き返すと、クラリスは腕を組んだ。


「私たちみたいな加護持ちなら、犯罪者集団へ向かうこと自体は別に問題ないわ」


 そのまま、淡々と続ける。


「ただ、それでも捕らえられたり、自由を奪われたりしないとは限らないから、表立っては手を出していないだけ」


「なるほどな」


 つまり、やってはいけないわけではない。


 ただ、面倒だから積極的にはやらないということらしい。


「あなたたちが勝手に向かって、勝手に死ぬのも自由」


 言い方が雑だなと思ったが、まあ間違ってはいない。


「それで、もし犯罪者の持っているモンスターを全部倒したら、加護を持たない人間なら気絶するわ。そのまま確保してここまで連れてきてくれたら、報酬も出す」


「……へえ」


 聞きながら、俺はちょっと思った。


 割と殺伐としてんな、この世界。


 いや、犯罪者相手なんだから別に変ではないのかもしれないが、こうして改めて明言されると、想像以上に世知辛い。


 だが、これで十分だった。


 クラリスのお墨付きが取れた。


 だったら、もう安心してラザロの拠点へ向かえる。


「助かった」


 俺がそう言うと、クラリスは頭痛でもするみたいにこめかみを押さえた。


「助かったのはこっちよ。勝手に動く前に確認しに来ただけ、前よりマシだわ」


「前より、ってなんだよ」


「心当たりがあるでしょう」


 それには返せなかった。


 たしかに、以前の俺なら確認より先に突っ込んでいたかもしれない。


 ……少しは成長したということにしておく。


 話が一段落したところで、俺はミルトの方を見た。


 実は、こいつにはもうゾンビアタックのことも話してある。俺が死に戻り前提で動くこと、何度死んでも押し切る戦い方をすること、そのあたりは隠しても仕方ないから最初に説明した。


 俺としては、ミルトはどこか安全なところで待っていて、終わったら呼びに行くものだと思っていた。ラザロの拠点に突っ込むのは俺で、片がついたあとに鍛冶場を使えばいい。そういう流れを考えていたのだ。


 その時に、ミルトは俺の持ち物のロストについて心配していた。

 持ち物をロストする可能性があるなら、その間はミルトが持っておく。そういうことだと思った。


 だから俺がデスペナ無効だと説明した。


「それだったら、僕のアイテムも全部預かってもらえますか?」


 俺がデスペナ無効だと説明したことで、だったら自分の持ち物も俺に預けて、一緒に動けると考えたらしい。


「自分も参加したいです」


 少し意外だった。


 てっきり終わるまで待っているつもりだと思っていたからだ。


 バルとの関係が改善していくのを見たこと。

 俺がここまで自分のためにあちこち動いてくれていること。

 だから、自分も関わりたいと思ったこと。


 そういうことらしかった。


 何というか、悪くなかった。


 信頼ゲージなんて見えない。けど、ミルトとの間にも確かに何か積み上がってきているのは感じる。


 初めて会った時は、俺がバルに轢かれているのを見て不安そうにしていたやつが、今では自分のアイテムまで預けて一緒に来ると言っているのだ。


「もちろんいい」


 俺はそう返した。


 断る理由なんてなかった。


 それから、最後に明日の打ち合わせだけ軽く済ませた。


 ラザロの拠点にどう近づくか。

 何を持っていくか。

 どこまでを目標にするか。


 細かいところまで詰めたわけじゃない。だが、方針だけは共有できた。


 ここまで、なんだかんだでかなり時間が経っている。


「今日はこのへんでいいか」


「そうですね」


 ミルトも頷く。


 そのまま俺たちは、ラザロの拠点に近い宿へ移動した。


 どうせ明日はそこから動くことになる。だったら、最初から近い場所で落ちた方が楽だ。


 宿を取って、リスポーン地点を変えて、準備は完了。


 俺は部屋に入る前に、隣にいるミルトへ軽く手を振った。


「じゃあ、明日な」


「はい。明日、よろしくお願いします」


 そうして俺たちは、それぞれの部屋でログアウトした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ