第42話 犯罪者集団を潰せば解決では?
ミルトは今回の話には無関係だ。
だから、今ここで闇鍛冶場の話を差し込んだのは、わりと強引だったと思う。
思うのだが、ガルディーノたちは案外あっさり答えてくれた。
「闇鍛冶場自体はある」
ガルディーノは腕を組んだまま、低い声で言った。
「犯罪者や、それに近しい連中は表の鍛冶場を使えねぇ。だから、そういう連中向けの施設はある」
「なるほどな」
俺は素直に頷いた。
理屈としてはわかる。
表で使えないなら、裏で使うしかない。そういうことか。
「基本的には、持ってる組織に所属することで使わせてもらう形だな」
「じゃあ、ガルディーノのところは?」
俺が聞くと、ガルディーノは少し呆れたような顔をした。
「俺たちは真っ当に商売してるから必要ねぇ」
「なるほど……」
それもそうか。
表でやれるなら、わざわざ裏の鍛冶場なんて持つ意味はない。
そこで俺は、ひとつの答えにたどり着いた。
「ってことは、犯罪者集団であるラザロのところにはあるのか?」
「もちろんある」
ガルディーノは即答した。
その瞬間、俺の中に天啓が走った。
「……そうか」
俺はぽつりと呟く。
「ラザロの組織をぶっ潰して、闇鍛冶場をもらえばいいのか」
部屋の空気が止まった。
ガルディーノだけじゃない。周りの連中も、一斉にこっちを見る。
だが俺は真面目だった。
ラザロは犯罪者集団。
その連中を潰す。
そして、そこで使っていた闇鍛冶場を接収する。
何もおかしくない。
「犯罪者集団だったら、もらってもいいよな?」
俺は自分の考えを確認するように言った。
「むしろ犯罪者を撲滅するんだから、これ正義ルートでは?」
「頭逝ってんのか?」
ガルディーノのツッコミは、驚くほど早かった。
周りの連中も、明らかに一歩引いている。
なんでだ。
割と筋は通っていると思うんだが。
だが、その中で一人だけ違った。
「……いいかもしれませんね」
「お?」
ミルトだった。
思ったよりずっと乗り気な声だった。
「表の鍛冶場が使えない以上、現実的にはそれしかないかもしれません」
「そうだよな!」
俺は思わず身を乗り出した。
「ミルト!」
やはりわかるやつはわかる。
「俺たちプレイヤーにとっちゃ、こっちが正規ルートかもしれねぇよな!」
ミルトも小さく頷いた。
ガルディーノたちは、そんな俺たちを見てますます微妙な顔をしていた。
だが、そこで即決するほど俺も馬鹿じゃない。
「……いや、一応確認はいるな」
俺は少し考えてから言った。
「あとで相談室にいるやつに聞きに行こう」
「相談室?」
ミルトが首を傾げる。
「ああ。犯罪者だからやっちゃっても問題ないかどうか、先に聞く」
そこは大事だ。
自分で勝手に判断して、また後でデメリットを背負うのは嫌だった。今でさえ評判が終わって、店も使えないんだ。これ以上ろくでもない称号が増えたら笑えない。
「そこだけはちゃんと確認したい」
「……それは、そうですね」
ミルトはそこには素直に同意した。
ガルディーノは腕を組んだまま、何とも言えない顔をしている。
気がつけば、さっきよりも物理的にも精神的にも距離が空いていた。
露骨だった。
俺が話した内容で、こいつとは距離を取った方がいいと判断したのだろう。
ちょっとひどくないか。
だが、今はそれどころじゃない。
「一応、この先どうするかは確認してから決める」
俺はそう前置きした上で、ガルディーノを見る。
「でも、ラザロの拠点の場所だけは聞いておきたい」
ガルディーノの眉が動く。
「何でだ」
「次に来た時、お前のこの建物自体が抗争でなくなってる可能性もあるだろ」
実際、そういう話だった。
もうすぐ戦端が開かれそうだと言うなら、のんびり確認してからまた来よう、では遅いかもしれない。
「先に場所だけ押さえておいた方が動きやすい」
ガルディーノはしばらく黙っていた。
だが、やがて小さく息を吐くと、ラザロの拠点の場所を教えてくれた。
「助かる」
俺は素直に礼を言った。
これで、ひとまず得るものは得た。
闇鍛冶場の情報。
そしてラザロの拠点の場所。
「よし」
俺は満足して頷いた。
「じゃあ、今日はこれで帰るか」
ミルトも頷く。
ガルディーノたちは、なんとも言えない顔のままだった。
俺はそんな連中を置いて、建物の出口へ向かう。
去り際、ふと思い出したように振り返った。
「ガルディーノ」
「……何だ」
「責任取って、ラザロのところをぶっ潰すか、乗っ取ってくるわ!」
そう言って手を上げると、ガルディーノは深く頭を抱えた。




