第39話 責任を取ってくださいの意味
メッセージを閉じてから数十秒、俺はその場で空を見上げていた。
「責任取ってください、か……」
どういう意味だ。
厄介事の匂いしかしない。
正直、避けたい。ものすごく避けたい。だが、だからといって放置もできなかった。せっかくできた生産職との縁だし、ミルトのことをここで切るのは違う気がする。
俺は小さく息を吐いて、合流の返事を送った。
指定された場所は、街の中ではなく外だった。
「……あー」
その時点で、少しだけ事情を察してしまった。
勘違いじゃなければ、たぶん俺のせいだ。
指定された場所へ行くと、ミルトはすでに待っていた。
モンスターは前と同じらしい。レグルスみたいにモンスターは変わっていなかった、その点は少し安心する。
ミルト自身の表情も、怒っているという感じではなかった。強い言葉で呼び出されたから身構えていたが、もしかしたらそこまで深刻ではないのかもしれない。
そう思ったのは、会って最初の一言を聞くまでだった。
「鍛冶場を使わせてもらえませんでした」
「おっふ……」
思わず変な声が漏れた。
多分、じゃない。
普通に俺のせいだ。
ミルトが前に言っていた。「狂人の友達」みたいな称号を得た、と。あの時はそんなに影響が出るとは考えていなかったが、今ならわかる。店ですら取引拒否されるのだ。鍛冶場くらい普通に弾かれるだろう。
となると、これはあれか。
フレンド解除の了解を取りに来たのか?
そういう事情なら仕方ない。むしろ当然だ。俺が原因なんだから、そこは文句を言う筋合いがない。
「わかった」
俺は素直に頷いた。
「フレンドを解除してくれていい」
ミルトはそこで眉を動かした。
そして下を向きながら、少し気まずそうに言った。
「すみません……フレンド解除自体は考えましたが、聞いてみたら、すでに交流を持っているのは変わらないだろうって言われまして」
「……なるほど」
既に試そうとしたのか。
そんなことを真っ先に考える人物を俺は助ける必要があるのだろうか、という黒い考えが一瞬だけ脳裏を横切った。
だが、すぐに打ち消す。
いやいや、そもそも俺が原因じゃん。
しかも、これで駄目なら他の生産職を探しても同じパターンになる可能性が高い。だったらここで見捨てるのは、俺にとっても損だ。
俺はできるだけ聖人っぽい顔を作った。
「気にするな」
実際はめちゃくちゃ俺のせいだが。
「じゃあ、別の方法は何かあるのか? 俺が原因みたいなものだし、力は貸すぞ」
ミルトは、それを聞いて少しだけほっとしたようだった。
「一つ目は、鍛冶ができる設備自体を購入する方法です」
「設備そのものを?」
「はい。ただ、金額が高くて……序盤から手に入るようなものではないです」
俺は心の中で謝った。
すまん。
俺の金はすでに大半がバルの餌に変わってる。
表情には出さない。出さないが、内心ではだいぶきつかった。
「二つ目は、ダンジョンにある鍛冶場です」
ミルトは続ける。
「そこなら誰でも勝手に使っていいみたいなので、現地にさえ行けば大丈夫そうです」
「なるほど」
「ただ、敵がそこそこ強いらしくて……鍛冶場に行く時は、毎回あなたにも足を運んでもらう必要があります。あと、作ったアイテムがロストすると困るので、帰り道もです」
護衛、というわけか。
時間は取られる。そこは少し面倒ではある。だが、そこまでやればバルの装備も頼めそうではあるし、現実的なのはこっちだろう。
「そして最後の三つ目なんですが……」
ミルトはそこで、少しだけ言いにくそうにした。
「闇鍛冶場というものがあるそうなんですけど、実態はよくわかりませんでした」
「闇鍛冶場?」
「はい。こちらは知ってますか?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
だがミルトは真面目な顔で続ける。
「狂人という称号を得るほどのことをやっているのであれば、あなたのホームグラウンドかなと思ったんですが……」
俺は、その言葉を頭の中で反芻した。
あなたのホームグラウンド。
闇鍛冶場。
狂人。
「……いや」
思わず口に出る。
「俺、犯罪を犯したとかアウトローとか、そういうんじゃねぇよ?」
ミルトは少しだけ気まずそうに目を逸らした。
いや、わかる。
わかるけども。
今の流れでその発想に行くの、だいぶひどくないか。




