表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/73

第38話 第一回ポイント争奪戦が始まるらしい

 いつものようにゲームへログインすると、視界の端に見慣れない告知が表示された。


「……イベント?」


 反射的に開く。


 そこに書かれていたのは、今週の日曜日の十三時から開催される全体イベント――第一回ポイント争奪戦のお知らせだった。


 ランキングに応じてアイテム獲得。

 参加報酬あり。

 お気軽にご参加ください。


「お気軽に、ねぇ……」


 俺はそのまま下まで読み進める。


 ポイント争奪戦の会場では、プレイヤーへのダメージが無効化される特殊フィールドとなること。

 プレイヤー名の横に、召喚、契約、育成のマークと、残モンスター数、現在の獲得ポイントが表示されること。

 倒した相手によって得られるポイントが変わること。

 召喚相手なら三ポイント。

 契約相手なら二ポイント。

 育成相手なら一ポイント。

 加護持ちのこの世界の住人を倒した場合は百ポイント。

 さらに、倒した相手の持っているポイントの十分の一も加算されること。

 倒されてもデスペナルティもポイント消失もないが、一度倒されるとそのイベント中では復活できず、観戦モードへ移行すること。


 読み終えたところで、俺は腕を組んだ。


「……これ、育成って最弱扱いなのか?」


 思わず口に出る。


 召喚が三ポイント。

 契約が二ポイント。

 育成が一ポイント。


 どう見ても、倒しやすさや危険度を踏まえた価値づけだろう。つまり運営――いや、このゲームはほとんど全部AIで回っているんだったか。とにかく、システム側の認識としても、育成はその二つより下と見られているわけだ。


「まあ、そりゃ序盤はきついって言われてたしな」


 召喚は最初から高レベル。

 契約は土地にいる間は最強。

 育成は、時間をかければ最終的には強い。


 最初に聞いた説明とも一応は噛み合っている。


 だが、気分はちょっと複雑だった。


「……いや、でも参加するだろ、普通に」


 せっかくの全体イベントだ。


 参加報酬もある。

 それに、今の自分がどこまで通用するのか、こういう場で測れるのはかなり大きい。


 勝てるとは思っていない。


 でも、自分の立ち位置がわかるだけでも十分価値はある。


「楽しみだな、これ」


 小さくそう呟いて、俺は横のバルを見る。


 バルは、俺が告知を読んでいる間ずっと邪魔だったので、昨日買ってもらった餌を食わせておいた。今は機嫌よくそれを食べ終えたところだ。


「万能だな、この餌」


 良質な餌とやらの効果が、単に能力補正なのか、気分の問題なのかはわからない。


 だが、少なくともバルの機嫌が目に見えてよくなるのは確かだった。


「レグルス関係は面倒だけど、そこだけはれいにゃに感謝しとくか」


 そう言うと、バルが小さく揺れた。


 否定なのか、どうでもいいのか、そこまではわからない。


 俺は立ち上がって宿の外へ出る。


 今日は快適だった。


 何しろ、昨日のうちにちゃんと宿を変えてある。だから、ログインした瞬間にレグルスが目の前にいる、なんてこともない。


「平和っていいな……」


 しみじみそう思う。


 どうやら売買はできないが、リスポーン地点である宿の変更自体は問題なくできた。となると、やはり取引関係だけが駄目なのだろう。


 そこまで考えて、俺は改めてイベント告知のことを思い出した。


 今週の日曜日。


 つまり、まだ少し時間がある。


「少しでも強くなっときたいよな、バル」


 バルはつかず離れずの位置で転がっている。


「一位は無理でも、せめて上位は目指したい」


 せっかく出るなら、ただの参加賞だけで終わるのも悔しい。


 となると、やっぱり強くなる方法を考えないといけない。


「……装備か」


 そこで、ふとミルトのことを思い出した。


 あれから特に用もなかったので、こちらから連絡は取っていない。だが、生産職として進めているなら、もしかしたらもう何かしら作れるようになっているかもしれない。


 装備があれば、今より楽になる可能性は高い。


「聞いてみるか……?」


 ただ、切り出し方が少し難しい。


 久しぶりに連絡して、いきなり装備作れる? はさすがにどうなんだ。いや、フレンドなんだからそのくらい普通か? でも、あまり図々しいのもよくない気がする。


 どう言うべきか考えているうちに、ちょうどフレンド一覧の表示が変わった。


「あ」


 ミルトがログインしたらしい。


 名前のところが、ログイン中の状態になっている。


「ちょうどいいな……」


 今なら自然だ。


 だが、どう送る?


 久しぶり。

 装備って作れるようになった?

 それとも、まず近況から入るべきか?


 そんなことを考えながらメッセージを打とうとしていた、その時だった。


 通知が来た。


「ん?」


 フレンドになっているのは、れいにゃとミルトの二人だけだ。


 だから一瞬、れいにゃかと思った。だが、表示されている名前は違う。


「ミルト?」


 ちょうど今、こっちから送ろうとしていた相手だった。


「タイミングいいな」


 俺はそのままメッセージを開いた。


 短い一文だけだった。


「責任取ってください!」


「……は?」


 意味がわからなかった。


 俺は一度、メッセージを閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ