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第30話 れいにゃに取引を持ちかけた

 じゃあ、あとは頑張れ。


 そう言って足早に立ち去ろうとしたところで、れいにゃに呼び止められた。


「ねぇ君は今から暇かにゃぁ?」


 俺は足を止めて、振り返る。


 どこをどう見たらそう見えるのだろうか。


 そもそも暇だったとしても、れいにゃと一緒にいるところをレグルスに見られたら、それだけでも面倒なことになるのが目に見えているというのに。


「そう見えるなら目が腐っているな」


 言ってから気づいた。


 いかん。オブラートに包むこともなく、そのまま吐き出してしまった。


 案の定、れいにゃの表情が崩れる。


「君、失礼すぎない?」


 そのあと、れいにゃは小さく咳払いをした。


「ちょっと、この子たちのご飯が切れたからぁ、買いに行きたいんだよねぇ?」


「普通に一人で行ってくればいいじゃないか」


 即答だった。


 すると、れいにゃの顔に怒りの印が浮かんだ気がした。


「わっかんないかなぁー? 一緒についてきてほしいなぁって言ってるんだよぉ」


 俺はため息をついて、吐き捨てるように返した。


「わっかんないかなー? わかっててこっちも言っているんだよー?」


 俺には俺の予定がある。


 素材集めをして、それを売ってもらう当てを作らなきゃいけない。なんで好き好んで、お前みたいなやつの面倒ごとに巻き込まれないといけないんだ。


 れいにゃの表情に、怒りの印がさらに二つ三つ増えた気がした。


 だが、そこで一度深呼吸すると、別方向から切り込んできた。


「ついてきてくれたら、お礼に高いご飯を一つ買ってあげる。どう?」


「……」


 一つぐらいで何を、と一瞬思った。


 だが、そこで考え直す。


 よく考えたら、代わりに売買してもらうのはミルトじゃないといけないというわけでもない。


 俺は改めて、れいにゃを見た。


 別段、こいつ自体は持ち逃げするような悪いやつにはあまり見えない。なんというか、妙に嘘っぽいところはあるが、それはたぶんロールプレイだろう。


 取引としては、ありかもしれない。


「そのお礼について、内容を変えてもらっていいか?」


 れいにゃが、露骨に警戒した顔になる。


「……何?」


 そこで俺は、自分が売買を求めていることと、その理由を説明した。


 店では狂人様扱いで取引拒否されること。

 だから素材を売ることも、餌を買うこともできないこと。

 代わりに売ってもらって、その金でバルの餌を買いたいこと。


 説明が進むにつれて、れいにゃの顔はだんだん変わっていった。


 最終的には、関わってはいけない人に関わってしまったのでは、という顔になっていた。


 いや、わかる。わかるけど、その顔はちょっとひどくないか。


 だが、ここまで説明したんだから、もうわかっているよな?


 逃げるならレグルスを探して連れてくるぞ。


 そんなことを思いながら、俺はれいにゃの返事を待った。


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