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第142話 勝者からの命令

 勢力戦が終わり、元の場所に戻る。


 そこには、落ち込んでいるグレイヴと、その横で慰めているのか謝っているのかわからないミルトがいた。


 軽く話を聞くと、どうやらミルトが残したヌルヌルでグレイヴが滑り、自滅したらしい。


「あれ? ミルトが言ったんじゃなかったっけ? ヌルヌルを使って足を引っ張るなって」


「違いますよ! ヌルヌルブーツは禁止って言っただけで、僕が使ったのは既に地面にあったヌルヌルです!」


 あまり変わらないような気もする。


 だが、詳しい話は後で聞けばいいか。


 今は目の前にいる、頭を下げているこいつらを先に片付けよう。


「さてと。結果は俺たちの勝ちで終わったということだから、名前はアルバトロスに変更でいいな?」


「わかっています。命を賭けて挑んだ戦いでも負けたんですから、ボスに従います。お前らもわかったな?」


 ラザロが手下たちに向かって、改めて確認を取る。


 配下たちは不服そうではあったが、力でねじ伏せられた以上、反論はできない。


 納得した。


 いや、納得させたという方が正しいか。


「そして今後のお前らの活動方針だが、商人を付け回して無理やり護衛するのはやめろ。これからはモンスターを倒して、素材を倉庫に納めること。わかったな?」


 返事がない。


 俺が言ってもまだ素直には返しにくいらしい。


 すると、ラザロが配下たちへ向き直った。


「お前ら! ボスに返事をしろ!」


 その声に応えるように、配下たちから大きく了承の声が返ってきた。


「まあ、本当は全部納めてもらうつもりだったけど、さっきの戦いで覚悟とやらは見せてもらったしな。ある程度ノルマは課すけど、それを超えた分は自分たちの懐に入れていいよ」


「ありがとうございやす!!」


 配下たちが一斉に頭を下げる。


 全部を取り上げるより、取り分があった方が安定的に素材を集めてきてくれるはずだ。


 働いた分だけ自分たちにも返ってくるなら、少なくともただ命令されるよりはやる気も出るだろう。


 それ以上集まっている必要もないので、ラザロたちには解散を命じた。


 そして、俺たちは自分たちの戦いの結果共有に移る。


 グレイヴが自滅してからの話だが、その後、ミルトとレグルスだけで五人を相手にするのは難しかったらしい。


 何とかあと二人まで減らしたものの、ミルトが落ちた。


 レグルスも最後の一人までは倒せず、そのまま落とされたそうだ。


 一方、れいにゃはウインドウでプレイヤーが一人落ちていることに気づいた。


 一人やられたならグレイヴが死んだのかと思い、南西へ向かったが、そこには誰もいなかった。


 やられたのなら正門側へ行ったのかもしれない。


 そう考えて北西へ向かうと、ちょうどレグルスが最後のNPCに追い詰められているところだったらしい。


 助けようとした時には間に合わず、レグルスは落とされた。


 ただ、そのNPCはれいにゃに気づいていなかったようで、その隙に攻撃を指示して倒した。


 そこで戦いが終わった、ということらしい。


 話を聞くに、れいにゃが一番敵を倒しているな。


 流石、ランキングで上の方に残っただけはある。


 となると、結果はこうか。


 れいにゃは四人と、最後の一人で五人。


 グレイヴは南西の三人と、北西で一人倒して四人。


 ミルトとレグルスは二人で四人。


 俺はラザロとヴィンセントの二人。


「こう見ると、ミルトとレグルスが一番倒している数が少なそうだな。まあ、数が一気に来てたらわからなくはないけど」


「何を言っているのかなぁ?」


 れいにゃが勝ち誇った顔で近づいてきた。


「何をって、結果をまとめただけだけど」


「勝負は、誰が一番多く倒せるか、だよねぇ? それだったらぁ」


 れいにゃは、にやにやしながらこちらを見る。


「ノーフェイトは、ラザロとヴィンセントで二人。こうじゃないかなぁ? 強くても、人数で言えば一人は一人だよねぇ?」


 れいにゃのにやけ顔がむかつく。


「……まあ、そう言えなくもないかもな」


「そして、ミルトとレグルスがチームなら、最下位は君じゃないかなぁ?」


「……そういう見方もあるかもしれないな」


 れいにゃは何が言いたいんだ。


 勝ち誇るだけなら、別に好きにすればいい。


 だが、この顔はそれだけでは終わらない顔だ。


「私が優勝なんだから、賞品はぁ?」


「いや、特に考えてないけど」


「だっよねぇ? なので、優勝者の私から最下位の君に命令です」


 なんだ。


 何を言うつもりだ。


 調理場を早く作れとでも言うのか。


 まあ、優先順位を上げるくらいなら構わないが。


「ヌルヌル禁止」


 ヌルヌル禁止?


 ……なんでだ!?


「なんでヌルヌルを禁止するんだ!? あれは最強の武器だぞ?」


「一つ目に、グレイヴがやられた理由」


「……わかった。お前らにもヌルヌルを無効化する称号を得ることができるボスの場所を教えてやる。それでどうだ?」


 れいにゃは首を振った。


 即座に拒否された。


「二つ目に、そんなキワモノを使うクランで有名になって欲しくないからよ! ヌルヌルクランとか呼ばれだしたら、私抜けるよ!?」


 それは困る。


 だが、ヌルヌルは強い。


 かなり強い。


 敵を転ばせ、移動を妨害し、場合によっては精神にもダメージを与えられる。俺としては、かなり頼れる武器のつもりだった。


 しかし、自滅したグレイヴもれいにゃに同意している。


 ミルトとレグルスも、俺の意見には賛同してくれない。


 そして、なぜかバルまで反対派だった。


 いや、お前も反対なのかよ。


 泣く泣く、ヌルヌルは普段封印することになってしまった。


 一応、誰もいなくて、他に方法がなければ、最悪使ってもいいという例外だけは作ってもらった。


 だが、これまでのように気軽には使えない。


 マジかよ。


 最強の武器なのに。


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