表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
143/146

第140話 ミルトとレグルスの北西戦

 北西では、ミルトとレグルスが二人で敵がやってくるのを待っていた。


「ネブラ、砂塵蜃気楼を定期的にお願い」


 ミルトが指示を出すと、ネブラは空中へ砂を撒き散らした。


 舞い上がった砂が周囲に広がると、その中にミルトとレグルスを模した偽像が生み出される。砂塵蜃気楼によって作られたその姿は、暗さも相まって、遠目には本物と見間違えてもおかしくない精度だった。


「自分ではヌルヌルブーツはなしですよって言っておきながら、場所はここを選ぶんだな」


 レグルスが足元を見る。


 ミルトとレグルスがいる場所は、今日作ったヌルヌルブーツでミルトが試走した場所だった。地面にはまだヌルヌルが残っており、暗さもあって、どこが滑るのか一目ではわかりにくい。


「僕もヌルヌルブーツは使ってないじゃないですか。ただ、ヌルヌルが元々あったってだけですよ」


「まあ、俺も称号はあるから有利な場所ではあるけど」


「相手が多かったら、人数差で押しきられちゃいますからね。ちょっと気持ち悪いのは難点ですけど、使えるものは使わないと」


「……そうだな。一斉に襲い掛かられたら、流石にどうしようもないしな」


 レグルスは納得したように頷いた。


 数では不利だ。なら、地形でも何でも使えるものは使うべきだろう。たとえそれがヌルヌルでも。


「攻撃は頼りにしてますよ。結局、ネブラはまともに使える攻撃技をまだ覚えてませんし」


「ああ、わかってるよ。ミルトもアシストをよろしく」


「ええ」


 二人がそう話していると、突然、遠距離から放たれた攻撃がミルトを貫いた。


「やりー! 俺が一人目を倒したぞ!」


「ばかっ! 声を出すんじゃねぇよ! まだもう一人残ってるんだぞ!」


 どこかから、ラザロの配下たちの声が聞こえる。


 叱責は飛んだが、最初の攻撃で一人倒せたという事実が、彼らに勢いを与えた。


 続けて、別方向から遠距離攻撃が放たれる。


 レグルスは避けることもなく、その攻撃を受けた。


 そして、ミルトに続くように消滅する。


「なんだなんだ? やっぱり加護持ちとはいえ、狙われたら弱いな」


「油断してただけだろ。まだ残り三人残っているんだから、気を抜くな」


「そうは言っても、こんなに簡単に倒せるなら残りも何とかなるだろ?」


「まあな……いや、おかしくないか? やっつけたはずなのに、モンスターの方は消えてねぇぞ?」


 ミルトとレグルスを倒せたと思い、配下たちが油断しかけた瞬間だった。


 意識の外から、レグルスのモンスターである三つ尾のチーター、トライが猛スピードで駆け込んだ。


 遠距離攻撃を放っていたモンスターの首元に噛みつく。


 急所を狙われたのか、そのモンスターは一撃で倒れた。


「くそっ! やられた! さっきのは偽物だ!」


 気づいたときには、周囲にネブラも、ミルトも、トライも、レグルスも複数存在していた。


 砂塵蜃気楼による分身。


 暗さもあって、本物と偽物の見分けはつきにくい。


 さらに、相手はまだ気づいていないが、足元にはミルトが残したヌルヌルが広がっている。迂闊に踏み込めば、そこで態勢を崩すことになる。


「おいおい、めんどくせえな。本物を見つけろってか?」


「こっちは人数がいるんだ。当たるまで攻撃すればいいだろ?」


 配下たちは、数に任せて偽物ごと攻撃するつもりらしい。


 だが、人数で上回っているからといって、すぐに押し切れるわけではなかった。


「流石に数が多すぎません?」


「多いな。流石に攻撃役が俺一人だときつい」


 ミルトとレグルスは身を隠しながら、相手の動きを見ていた。


 近づいてくるモンスターは、足元のヌルヌルに足を取られて態勢を崩す。そこをトライが狙えば、なんとか倒せる。


 問題は、遠距離から蜃気楼の分身を壊しているモンスターだった。


 このままでは、先に分身がすべて壊される。


 そうなれば数で押しつぶされるだけだ。


 レグルスは隙を見て、遠距離攻撃をしているモンスターを優先して狙おうとした。だが、相手もこちらの狙いを理解している。護衛する形で守られ、徐々に分身の数だけが減らされていった。


「最初は驚いたが、タネがばれちまったらこの人数で押し切れるな」


「油断すんなよ? 俺のおかげでまだ生きてるんだからな」


 このままだと押し切られる。


 ミルトがそう焦りを覚えたとき、奥の方から走る音が聞こえた。


 ここにきて、さらに相手の援軍か。


 そう思い、諦めかけた瞬間、その鎧型のモンスターは遠距離攻撃役を守っていたモンスターへ斬りかかった。


 圧倒的な攻撃が、護衛ごと沈めていく。


「グレイヴさん……ですよね? 助かりました!」


 ミルトが声を上げる。


 現れたのは、鎧をまとったグレイヴだった。


 グレイヴが加わったことで、こちらのアタッカーが増えた。遠距離攻撃役を守っていたモンスターが崩れ、形勢は一気に変わる。


 ネブラは再び砂を撒き、分身の数を増やす。


 六人対三人という状況になったことで、ミルトとレグルスにも余裕が戻ってきた。


「このままなら何とかなりそうだな」


「レグルスさん、それフラグってやつですよ?」


 軽いやり取りができるくらいには、流れがこちらへ傾いていた。


 しかし、NPCを一人倒したあたりで、配下の一人が気づいた。


「あいつだけ分身がいねぇ! あいつを集中的に狙え!」


 グレイヴには、ミルトやレグルスのような分身が生み出されていない。


 そこから、攻撃の矛先はグレイヴへ集中した。


 グレイヴは攻撃を避けながら応戦する。


 だが、鎧の中に入っているせいで、足元の細かい状況までは見えていなかった。


 地面に撒かれていたヌルヌルに、足を取られる。


 次の瞬間、鎧の体が勢いよく頭からひっくり返った。


「あっ」


 ミルトの声が漏れた。


 喧騒の中だったはずなのに、その声はやけによく聞こえた。


 周囲で戦っていた者たちも、偶然その瞬間を目にしていたのか、ほんの少しの間だけ時が止まったようになる。


 モンスターであれば、ひっくり返ったところで問題はなかった。


 だが、この鎧の中にはグレイヴが入っている。


 頭を打ち付けたことで、プレイヤーが倒された判定になったのだろう。


 鎧ごと、グレイヴはその場から消えた。


 残りNPC七人。


 残りプレイヤー四人。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ