第134話 クラン勧誘を始めます
庭には、先ほどミルトがヌルヌルブーツで滑ったせいでできたヌルヌルが残っている。
だが、ヌルヌルダンジョンの件は、先ほどヌルヌルと一緒に水に流した。なので、今はラザロファミリーについての話に移ることにする。
「レグルスさんもフレンドなんですよね? このクランに誘うのはどうですか? プレイヤーの人数が増えれば一人当たりの負担も減りますし、クランなら人が増えた方が後々のイベントで有利になるんじゃないですか?」
ミルトの言葉を聞いて、確かにと思った。
プレイヤーが二人より三人、三人より四人と増えれば、それだけ一人当たりの負担は減る。今の俺のフレンドとしては、レグルス、れいにゃ、グレイヴがいる。駄目もとで声をかけてみるのはありかもしれない。
人が多い方が、いい考えも浮かぶかもしれない。
実際、レグルスはミルトと二人でシークレットボスのヌルヌルスライムを倒す実力がある。れいにゃもなんだかんだランキングに残るほどだったし、グレイヴも強い。
こうして考えると、俺のフレンドはなんだかんだ実力があるやつらばかりだ。
とりあえず、送るだけ送ってみるか。
俺は三人に、それぞれメッセージを送った。
ちょうど間がよかったのか、三人とも時間はあるようだった。ラザロファミリーのことでもあるし、ここで話をした方が早い。俺は拠点の場所を送り、呼ぶことにした。
ついでに、拠点の庭にあるヌルヌルには気をつけて中に入ってきてくれ、と追記しておく。
「ミルトはフレンドいないのか? 闇商人プレイをしてたし、レグルスとも知り合ってたんだから、フレンドはできたか?」
「あれは闇商人になりきってるんですよ? フレンド登録とかしてたら雰囲気がぶち壊しじゃないですか」
そういうものなのか。
単にフレンドになってくれと言えなかっただけではないのか。
そう追及しようかとも思ったが、やめた。
「じゃあ僕は鍛冶場で遊んでいるので、揃ったら呼んでください」
「わかったわかった。揃ったら呼ぶわ」
ミルトはそう言って鍛冶場へ向かった。
ラザロとの話し合いも、今すぐ進展しそうにはない。これから人が集まるまで待つ時間になるので、少しもったいない気がする。
とりあえず、バルにはこの時間で引き続き飛ぶ練習をするように指示した。本人もやる気があるようで、こちらが言う前から跳ねている。
最初に到着したのは、れいにゃだった。
「取引以外で呼ぶなんて珍しいねぇ」
どうやら、ファミリアサロンでモンスター用の高級ブラシを吟味していたらしい。
れいにゃは到着してすぐ、空中で浮遊の練習をしているバルを見た。黒いもやをまといながら、ぽよんと浮いているバルを見て、れいにゃが首を傾げる。
「またなんか変なことでもやったのぉ?」
「変なことじゃない。進化のために必要なことだ」
「この黒いのがぁ?」
「……それは違う」
れいにゃとは少しだけ会話して、残り二人が来るから待ってくれと伝えた。
すると、れいにゃはこのあいだ捕まえた草色の毛並みをした狐を出し、うきうきした様子でブラシをかけ始めた。
今のお気に入りは、この狐なのだろうか。
その次に来たのはグレイヴだった。
こちらは前と同じように墓地で戦っていたようで、メッセージを受けて来てくれたらしい。
グレイヴは来てすぐ、バルの黒いもやについて聞いてきた。ただ、俺も実際のところ、これがどういうものなのかはよくわかっていない。答えるにも困る。
レグルスがまだ来ていないので、試しに黒いもやに闇属性でもついていないか確認することにした。
物理無効のグレイヴミストに、バルが突進する。
だが、グレイヴミストはダメージを受けなかった。
属性はついていないのかもしれない。
そうこうしているうちに、最後のレグルスがやってきた。
どうやらまた釣りをしていたらしく、街の外にいたので一番時間がかかったようだ。
レグルスとれいにゃが再び会う形になったが、二人は普通に挨拶を交わしただけだった。特にわだかまりはもうなさそうだ。
全員が集まったので、俺は応接室へ案内した。
こちら側には、ミルト、俺、ラザロの順で座る。向かい側には、レグルス、グレイヴ、れいにゃに座ってもらった。
よし。
これで勧誘の準備は整った。
「では、これから勧誘を始めるので、疑問があればすぐに挙手の上お願いします」
俺がそう言った瞬間、向かい側の三人の手がすぐに上がった。
「その一番右にいるNPCはなに?」
レグルス、グレイヴ、れいにゃの声がきれいに重なった。
そうだった。
ラザロはプレイヤーではなくNPCだった。




