第133話 ヌルヌルと一緒に水に流そう
ミルトから詳しく話を聞くと、最初は一人でヌルヌルダンジョンに挑んだらしい。
道中、ボートを借りるところで、闇商人プレイのときに売買した客と一緒になったそうだ。ただ、島に行くまでの同行で、特に一緒に攻略するつもりだったわけではないらしい。その客は島で釣りがしたかったらしく、ボート代を折半する形で一緒のボートに乗ったとのことだった。
「島で釣りを?」
最近一緒に釣りをしたあいつが思い浮かぶ。
俺は続きを促した。
ミルトは島に着いたあと、一人でダンジョンに挑んだ。だが、敵もそうだし、ダンジョンの壁や床もそうだし、とにかくヌルヌルして滑るうえに不快感が凄かったらしい。
「もしかしてノーフェイトがこのダンジョンを教えたのは、自分だけがこれを味わうのが嫌で道連れにしたのでは? と思いましたよ」
ミルトは笑顔で話している。
だが、こいつは絶対にそうだと確信している。
その後、ミルトはヌルヌルするダンジョンを進み、シークレットボスに行くためのルートに落ちることができた。そして扉を開くと、その先にはヌルヌルまみれのフィールドが広がっていたらしい。
「最初は、何の嫌がらせですかと思いましたよ。ただでさえ不快なヌルヌルが、全身どころの話じゃなかったですからね」
ミルトのモンスターであるネブラの攻撃は、やはりヌルヌルスライムにダメージを与えるのが難しかったようだ。そのまま長時間戦っているうちにヌルヌルが上がってきて、俺のときと同じようにヌルヌルで窒息して死んだらしい。
そして、ヌルヌル大好きの称号を得たところまで一緒だった。
聞いている限りでは、目論見通りではある。
ただ、今のミルトの様子を見る限り、そこまで怒ってはいなさそうだ。別に俺も嘘は言っていなかったしな。
そう軽く考えていると、ミルトが少し低い声で言った。
「復活して思いましたよ。ノーフェイトに騙されたんだと」
うん。
怒っていないんじゃなくて、表面に出していないだけだな、これは。
「そして、ノーフェイトの名前を叫んでいたら、この島にボートで一緒になった人が声をかけてきまして。ノーフェイトのことを知っていたようだったので、色々事情を話すとフレンドだということを知りました」
釣り。
俺のフレンド。
その二つが揃うとなると、レグルスしかいない。
「そこで、ノーフェイトはどうせこれを味わわせたかったのだろうと解釈して、自分一人だと倒せないし、ノーフェイトはここに気軽に来れないと言っていたので、レグルスさんに事情を話して手伝ってもらうことにしました」
「えー……そこはまず俺に確認取るとかでは?」
「レグルスさんが、ノーフェイトに水を浴びせさせられた貸しもあるから、何か言われたらそれを伝えていいと言ってましたよ」
俺は黙り込んだ。
そういえば、レグルスにはすまんとだけメッセージを送って、そのままだったな。
「その後は、レグルスさんと一緒にボスを攻略して、ヌルヌル素材を入手できたという流れです」
「でもなぁ、ミルト。隠しボスだぞ? 秘密の情報を他人に教えるなんて、情報の大切さがわかっていないのか?」
俺がそう言うと、ミルトは目を細めた。
「じゃあ、新武器は作らなくていいんですね?」
まずい。
「私も、レグルスさんに話してしまったことは悪いことをしたかなと思ったので、ヌルヌルと一緒に水に流してもよかったんですが、そういうならわかってますよね」
そうだった。
ヌルヌルダンジョンは、悪意も込みで話したのだった。
そして、新武器を作ってもらえなくなるという危惧が現実になろうとしている。
「……まあ、相手はレグルスだったし、この件はヌルヌルと一緒に水に流そう」
俺の身から出た錆だったので、そういうことにした。
あの時は、俺だけがヌルヌルを味わうなんて嫌だと思って、出来心で話してしまった。だが、よく考えろよという話だ。
切り替えよう。
問題にはなったが、痛手は少しで済んだ。それで良しとしよう。




