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第131話 ラザロファミリーの営業努力

 通報して、これで解決だと思った。


 だが、その少し後。


 ミカゲが、いきなり俺の目の前に現れた。


 外から入ってきたわけではない。本当に、先ほど別れたばかりのミカゲが、何もないところから突然現れたのだ。


「えっ? どういうこと?」


 俺が驚いていると、ミカゲは何でもないことのように言った。


「直接話をした方がいいと思いまして、渡したそれを対象として転移してきました。これについては秘密でお願いしますね?」


 俺は手元の携帯のようなアイテムを見る。


 これ、そういう用途もあったのか。


 ……その移動手段、俺も使えないだろうか。


 そんなことを考えている俺に対し、ミカゲが直接来た理由はかなり面倒なものだった。


「潜入捜査に協力していただきたいのです」


「そんな面倒で危なそうなこと、拒否だ拒否!」


 即答した。


 ミカゲは困った顔をしたが、頼んでいる内容がおかしいだろう。


 働け、お前らが。


「既に封印が解ける状態だというのも教えたし、次の会合先とやらの情報も渡す。十分すぎるほど協力しているだろ?」


「それはそうなんですけど……割ける人員はこちらも多くはなく、ですが危険な解封教団の実態を知ることができるというのは、あまりにも惜しいんです」


「複数の加護持ちでも誘って、会合場所に行ってやっつければいいじゃん。俺がやるメリットないし」


 失敗したら、今度は俺がその訳のわからない教団に狙われる。


 マジでメリットがない。


 そう思ったところで、ふと先ほどの転移が頭に浮かんだ。


「……潜入捜査をやったら、お前が使った転移の方法を教えてくれるか?」


 思いついたことをそのまま口にしたが、案外悪くないのではないか。


 それなら、やらなくもない。


 移動が便利になるのであれば、危険に対しての見返りとしては十分だ。


 ミカゲは長い時間悩んだ。


 そして、深いため息をつくと、重い空気をまとってこちらを見た。


「……やりたくはなかったですが、あなたがそう言うならわかりました」


「マジで?」


 言ってみるものだな。


 それなら全然あり寄りだ。


 だが、ミカゲが続けて口にした言葉は、俺の想像していたものとは違った。


「話は少し変わりますが、あなたの組織であるラザロファミリーですが、一般人に迷惑をかけているようですね……」


 いきなり何の話だ。


 そう思ったが、理解するまでに少し時間がかかった。


 どうやらラザロファミリーが何かをやらかしているらしい。


「……あいつらが何をやったんでしょうか?」


「町の外でモンスターに襲われている商人たちを助けて、お金を要求しているようです。それ自体は問題があるというほどではないですが、都合よくモンスターに襲われているときに現れるので、モンスターをけしかけて金銭をせびっているのでは、と何人もの方から連絡を受けています」


 あいつら……!


 ラザロのやろう。


 お前に任せていたが、なんてことをしてやがる。


 評判改善どころか、評判が下がっているじゃないか。


「……わかりました。潜入捜査はやります。でも報酬は何かくださいよ? ただ働きは嫌です。そんなことになるなら、本当に解封教団に入ってしまった方がいいんじゃないかなと思ってしまいかねませんからね?」


「……報酬は期待してもらって大丈夫です。是非とも解封教団について、よろしくお願いします」


 ミカゲはひきつった表情のまま、転移して消えていった。


 俺はしばらく、ミカゲが消えた場所を見ていた。


 転移の方法を教えるとは言われなかった。


 いや、あれはどう考えても脅し返された流れだった。


 あとで絶対に確認しよう。


 ミカゲが帰った後、俺は拠点にいるラザロを捕まえた。


「どういうことだ?」


 逃げようとするラザロを問い詰めると、最初はごまかそうとしていたが、最終的には事情を吐いた。


 ラザロファミリーは今まで、汚いことをしてこの拠点を運営してきた。そのため、まともな仕事で維持しようとしても、なかなか難しいらしい。単純に護衛の仕事をしようにも信用がないので依頼は来ない。そこで、手を汚さない荒くれ者たちの稼ぎ方として思いついたのが、外でモンスターに襲われている商人を助けて謝礼をもらうという方法だったようだ。


 もちろん、商人にモンスターをけしかけたりはしていない。


 ただ、襲われているところに出くわさなければ謝礼をもらうこともできない。そのため、街の外の周辺で商人を探しつつ、モンスターに襲われるまで隠れて待っていたらしい。


 その結果、都合よく現れたと思われていたようだ。


 今まで拠点に他のメンバーがほとんどいなかったのも、外で襲われている人を探すために出かけていたかららしい。


 なんだろう。


 自分たちのできる範囲で、ちゃんと仕事をしようとはしていたようだ。


 やっていることはアレだ。


 アレなのだが、これだと怒るのはそれはそれで微妙な気持ちになる。


 俺がそんな何とも言えない気持ちになっていると、ミルトがログインして現れた。


 ちょうどいい。ミルトと会話して気分を入れ替えよう。


「ミルトに通報された後に、本当に連行されたよ」


 ミルトはログイン直後の姿勢のまま、首を傾げた。


「えっ? 本当に通報するわけないじゃないですか? 今度は何やったんですか?」


 ミルトは呆れた顔で、鼻で笑った。


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