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第12話 得難い出会いをありがとう

 次にゲームへログインした俺は、今日はちゃんと探検しようと気合を入れていた。


 昨日は散々だった。


 秘密のダンジョンだと思って入った先で待っていたのは、お悩み相談室と説教。さらに地上へ戻ってからは、売られた喧嘩を買って初めてのPVP。勝ったは勝ったが、そのあとバルに轢かれて終わった。


 情報量が多すぎたのだ。


 だから今日は、変な寄り道をせず普通に進める。


 そう決めて街を歩き出した時だった。


 聞き覚えのある声が耳に入る。


「……ん?」


 そちらを向く。


 すると、奇跡的な再会を果たしてしまった。


「お前か」


 昨日戦った男――レグルスが、少し離れたところに立っていた。


 向こうもこちらに気づいたらしい。露骨に顔をしかめながら、ずかずかと近づいてくる。


 ……これはもう運命と言っていいのではないだろうか。


 人が大勢遊んでいる中で、こんなところでまた会うなんて。嬉しくはないが、妙な縁を感じるのは事実だった。


「よう」


 軽く手を上げてやると、レグルスは嫌そうに眉をひそめた。


「昨日の件だよ」


 開口一番、それだった。


「俺がかませ犬みたいになったけど、そのおかげでお前はれいにゃとよろしくやったんだろ? 俺が口説いてたのに、それは卑怯じゃねえか」


「は?」


 意味がわからない。


 いや、言っていることはわかる。わかるが、事実がどこにもない。


「突っかかってきたのはお前だろ」


 俺は呆れて言い返した。


「侮辱も何もせず、そのまま放っておいてくれたら、こっちだってそのまま離れてたんだよ」


 そもそも最初、俺は関わる気すらなかった。立ち去ろうとしたのに、あっちが勝手に喧嘩を売ってきただけだ。


 レグルスは明らかに納得していない顔だった。


 だが、だからといって真面目に相手をしてやる義理もない。


 むしろ、ここでちょっとくらい言い返してもいいだろう。


 俺は口の端を吊り上げた。


「まぁ、お前のおかげでだいぶ仲良くなれたよ。得難い出会いをありがとうな!」


 そういった事実はありません。


 だが、言葉というのはこういう時のためにある。


 案の定、レグルスは悔しそうに顔を歪めた。


「っ……!」


 何か言い返そうとして、結局うまく言葉が出なかったらしい。そのまま舌打ちして、踵を返して去っていく。


「ふん、いい気味だ」


 俺は小さく鼻を鳴らした。


 たまにはこういう勝ち方も悪くない。


 とはいえ、ここでいつまでも気分よく浸っていても仕方ない。今日の目的はあくまで探索だ。


 俺はバルを連れて、最初のダンジョンとしておすすめだと言われている汎用ダンジョンへ向かうことにした。


 昨日みたいな特別なダンジョンではない。


 みんな共通で入ることができる、ごく普通のダンジョンだ。


「最初のダンジョンだからって特別なとこ行った結果がアレだったしな……」


 お悩み相談室を思い出して、少しだけ遠い目になる。


 もうああいう変化球はいらない。


 今度こそ、変なことがない普通のダンジョンに行く。


 道中の戦闘は順調だった。


 敵を倒して、敵を倒して、バルの攻撃を避けて、敵を倒して、バルの攻撃を避けて。


 相変わらず少しだけおかしい気もするが、これが今の俺たちの基本形だ。もはやそこに違和感を覚えなくなってきている自分が少し怖い。


 それでも確実に成長はしていた。


 草原の敵相手なら、危なげなく対処できる。


 バルの動きも以前よりよくなっているし、俺の方も避けるタイミングや間合いの取り方がだいぶ身についてきた。


「悪くないな」


 順調に敵を片づけながら進み、やがて目的のダンジョンが見えてくる。


 いかにもそれっぽい入り口だ。


 昨日のエレベーターとは違う。


 見た目からして、ちゃんと普通のダンジョンである。これだけでもだいぶ安心感が違った。


 そしてダンジョン前まで着くと、その横にはリスポーン地点が用意されていた。


「おお、今回は横か」


 昨日みたいにダンジョンの中ではない。


 横だ。


 素晴らしい。実に素晴らしい。


 これなら変なことにはならないだろう。


「よし、更新しておくか」


 俺はそこでリスポーン地点を更新した。


 これで、もし中で死んでもここに戻ってこられる。少なくとも、お悩み相談室の前に戻されるような理不尽はないはずだ。


 ……たぶん。


 そこで俺は、ようやく振り返った。


 ここに来るまで、後ろから気配がしていたのは気づいていた。


 つかず離れず、だがバルのそれとは違う気配だ。


 レグルスが悔し紛れに後をつけてきたのだろうと、なんとなく思っていた。


「そこにいるのはわかってるんだ、レグルス」


 俺は背後に向かって声をかけた。


「後をつけてきたんだろ!?」


 少し間があって、姿を現した相手を見て、俺は固まった。


「……誰?」


 そこにいたのは、全く知らない別のプレイヤーだった。


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