第113話 新武器は微妙だった
ログインすると、バルが露骨に待ち構えていた。
早く早くと言わんばかりに、こちらを見ている。どう見ても、さっさと研究所に行って進化への道を進めるんだ、と言っている顔だ。
「気持ちはわかるが、ちょっと待て」
ちょうどミルトも見かけたので、研究所は後回しにする。昨日の属性武器がうまくいかなかった件について伝えて、新しい武器を作ってもらわないといけない。
ミルトは拠点の倉庫で素材を整理していた。そこへ行き、昨日の結果を共有する。
「……という感じで、ダメージを与えられはしたものの、効果が薄かったというわけだ」
そう説明すると、ミルトは少し考えてから口を開いた。
「なるほど……もしかすると、実体がないから、一部のみへのダメージだとその部分だけダメージを受けて、他には影響を与えられない形なのかもしれませんね」
「……ああ」
なるほど。
俺はてっきり、物理ダメージが無効化されて、武器のダメージ分しか効かなかったからだと思っていた。だが、そういう考え方もあるのか。
確かに、武器ダメージだけだとしたら、通常の突進とアンカーチャージでダメージが変わるのは少しおかしい。
「となると」
俺は少し考える。
「一点集中の角型よりも、全体的に……なんなら盾みたいな感じで、表面積自体を大きくした方がいいのか?」
「その考え方で間違いではないと思います」
ミルトはわりとあっさり肯定した。
その横で、バルが俺の服を引っ張ってくる。早く行こう、と目で訴えていた。
「きっとミレイアもまだ準備できてないって」
そう言ってなだめる。
「研究所もまだ開いてないかもしれないだろ?」
適当なことを言って、その場に留めておく。そして、ミルトに早速試作品を作ってもらうことにした。
そうしてできた武器は、中央が少し出っ張った、バルに近い大きさの丸型の大盾だった。
「……でかいな」
バルはあまり気が進まないようだった。
そりゃそうだ。見た目の良さとはだいぶ離れている。
だが、説得もプレイヤーの腕の見せ所だ。
「バル、これを試し終わったら研究所に行くから」
そう伝えると、バルはおずおずと俺の右手にある餌を食べた。そして、新武器を試すために街の外へ向かってくれる。
「ふっ」
思わず小さく笑う。
「やはり餌。所詮はモンスターよ」
とりあえず、まずは動作確認だ。
敵を見つけて、尻に大盾を貼り付ける。そのうえで、アンカーチャージを指示した。
バルはいつものように突進で伸びて、戻った。一撃ではあった。
だが、この武器を装着したことで、決定的に違う部分が出た。
「……遅いな」
すごい速度でぶち抜く必殺技だったはずのアンカーチャージが、目に見えて遅くなったのだ。
遅くなったとはいえ、突進と同等程度の速さはある。だから当てること自体はできたし、一撃でもあった。だが、速い相手なら避けられそうな速度だ。
「大盾の重さか?」
割と重くはある。それは十分あり得る。
「それ以外だと、面積が大きいから空気抵抗とかか……?」
どちらにせよ、これはまずい。ちょっとこの新武器は微妙かもしれない。
一応、その後も何度か試行錯誤してみた。だが、やっぱりこれだと使い物にならない気がする。
「試作品でよかったな……」
最初から属性素材を使っていたら、完全に無駄になるところだった。
バルはもういいだろ、とでも言いたげにこっちを見ている。早く研究所に行こう、という顔だ。
「……そうだな」
俺も諦めた。
「約束だし、今から行こうか」
ただ、その前に一つだけやることがある。
「ちょっとミルトに結果だけメッセージを送るから待ってくれ」
そうして、ミルトへ新武器の結果を報告した。すると、すぐに返信が来た。
今はあまりいい武器を思いつかないので、思いついたらまたメッセージでも投げてください。
前のように面白い武器を期待しています。
「面白い武器を考えたんじゃなくて、これしかないと思った武器がそうなっただけなんだけどな……」
そう溜息をつく。だが、メッセージには続きがあった。
僕もヌルヌル素材が欲しくなったので、教えてもらったダンジョンに行ってきます。
byミルト
「……あ」
その文を読んで、俺はミルトに伝えたヌルヌルダンジョンのことを思い出した。
ダンジョンはヌルヌルで、雑魚もボスもヌルヌルな、不快感満載のダンジョンだ。あの時は色々溜まっていて、半ば誘導するように話した。
だが、新武器が微妙だったことを考えると、それは失敗だった気がする。
「……まずい」
もし、あのダンジョンに行ってしまったら。
新しく武器を思いついても、作ってくれなくなっているかもしれない。




