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第112話 俺起点で称号が量産される

 バルが、見るからにテンション高く喜んでいる。


 その横で、グレイヴは露骨に落ち込んでいた。


 まあ、無理もない。


 あれだけ自信満々に「全力で来てみてよ」と言った結果が、一撃だったのだから。


「……いや、でも」


 俺は少し考えてから口を開く。


「合体自体は、正直かなりロマン感じた」


 それは本音だ。


 鎧のモンスターに、亡霊っぽい気配が重なるあの感じ。見た瞬間に「強そう」と思わせるものがあった。


 ただ、今回の相手が悪かった。


 いや、良かったのか悪かったのかはともかく、俺のバルはもう普通じゃない。


「二体分だって言ってたけど、俺のバルは限界を超えた存在だからな」


 あの卵時代からの積み重ねがある。


 今さら二体分くらいなら、一撃で貫けてもおかしくはなかったんだろう。


 そう伝えると、グレイヴは少しだけ顔を上げた。


「いや、正確には三体分だよ」


「三体分?」


「スケルトンとかリビングアーマーとか死霊系は、日が出ている間は能力にデバフを食らうんだ」


 なるほど、そこは夜型のモンスターらしい。


「逆に、夜になるとバフが入る。だから、さっきの状態ならだいたい三体分の強さって考えていい」


「へえ……」


 そう聞いても、正直な感想としては、とはいえ元々が脆い相手だしな、ではある。


 だが、合体そのものに価値がないわけじゃない。


 むしろその逆だ。


「でも、合体自体はめちゃくちゃ高ぶったぞ」


 俺は素直にそう言った。


「今回はバルが物理特化で強かっただけで、三体分が一体にまとまるって、普通に考えたら強すぎるだろ」


 実際、物理が効くようになってしまったからバルには一撃だった。


 それだけの話だ。


 そう伝えると、グレイヴは少しずつ気を持ち直したようだった。


「……まあ、そうだよね」


 ぽつりと呟く。


「二体がダメでも、合体の先はまだまだあるし」


「あるのか」


「あるとも」


 その言い方に、妙な確信があった。


 たぶん、こいつの中ではもう次の完成形がいくつも見えているんだろう。


 そして正直、さっきのモンスターは見た目も良かった。


 鎧に亡霊っぽいオーラがまとわりついていて、強キャラ感がかなり強かった。


 見た目だけで言えば、今まで見たモンスターの中で一番かっこよかったかもしれない。


「それに、見た目もかなり良かったぞ」


 そう言うと、グレイヴの顔がぱっと明るくなった。


「だよね! めっちゃかっこいいんだよ!」


 そこからは早かった。


 俺たちはそこで意気投合して、そのまま色々と話し込んだ。


 俺のバルの今までのいきさつ。

 グレイヴのモンスターのこと。

 どうやって今の形にたどり着いたか。


 グレイヴも、最初に手に入れたのはスケルトンだったらしい。


 日が照っている時は満足に外で戦えず、それでこのダンジョンを見つけたのだという。


 墓場なら戦える。


 そう思って、ここに籠っていたらしい。


 だからこそ、図書館の本に書かれていないようなことも、試行錯誤して色々見つけてきたのだと。


 イベントでは残念ながら日が照っていたので、ポイントは少ししか得られなかったらしい。


 だが、その代わり他の人の戦いはしっかり見ていたようだ。


 そして、ヴェイルの戦いを追っている時に、俺のことを知ったらしい。


「なるほどな」


 色々話してみると、グレイヴには妙な親近感が湧いた。


 最初が不遇だったこと。


 そこから色々試行錯誤して、今の強さへつなげていること。


 その辺りが、わりと俺と似ている気がしたからだ。


 正直、ここで別れるのは惜しい。


 物理無効化相手への対策として、新しい武器を考えてもう一度戦いたいし、それがなくても、この先の合体も見てみたい。


 だから、そのことを素直に伝えてみた。


 すると、向こうも同じことを考えていたらしい。


「私も、さらに強くなった時に再戦したいし」


 そう言ってから、グレイヴは軽く首を傾げた。


「フレンドになる?」


 なりたいのは山々だ。


 だが、そこですぐ頷けない理由が俺にはある。


「……俺には、フレンドになった相手に不利益が及ぶんだよな」


 そこを説明する。


 俺の称号まわりの話だ。


 すると、意外なところで、その問題はもう解決していたことがわかった。


「君に降参を宣言させて勝った後に、称号を手に入れたんだ」


「称号?」


「狂人を懲らしめた者、ってやつ」


「……そんなのあるのかよ」


 フレンドになって称号がつくのは把握している。


 だが、倒されてもつくのか。


 しかも内容を聞くと、マイナス系ではないらしい。


 効果としては、狂人の影響を受けない、というものだという。


「ピンポイントすぎないか? その称号」


 いや、ありがたいのかもしれないが、あまりにも俺専用みたいな性能すぎる。


 そもそも称号って、そんな簡単に手に入るものだったっけ?


 ……いや、簡単じゃないのか。


 俺に勝つって時点で。


「とりあえず、障壁はなさそうだな」


 そういうわけで、俺たちはフレンド登録をした。


 その後はそこで別れた。


 今日はもう、それまでだ。


 俺もそのまま拠点に戻ってログアウトする。


 色々進展してよかったな、と思う。


 図書館という存在。


 進化の可能性。


 そして、グレイヴという相手。


 収穫はかなり大きかった。


「でも……」


 そこで、ひとつだけ引っかかることがある。


「俺起点で称号が量産されるのって、どうなんだ?」


 それだけは、あまり嬉しくなかった。


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