第107話 バル、ステイだ!
ここか……。
墓地だからか、人がいないな。
墓地のダンジョンは、この墓にある扉から入っていくらしい。
ちょうどリスポーン地点があったので、更新しておいた。
中に入ると、今までの洞窟型と違って広かった。
今までのダンジョンは、洞窟の中という感じだったが、ここは広い墓地という印象の場所だ。
門の先が広い空間になっているので、どこかに飛ばされたような感じもする。
まだ昼のはずなのに、少し暗い感じに変わっているし、入り口は街の中にあるが、実態は別の場所につながっている、とかそんな感じか?
目の前には、ところどころに墓石が置いてある。
お供え物があるものもあったが、これは誰かがお供えでもしたのか? それとも演出用か?
目の前の墓石を読んでみると、人の名前っぽいものが書いてあるし、NPC用の墓とかだったりするんだろうか?
ダンジョンの中に墓を作るなら、土地が少なくて済みそうだ。
……そんな、どうでもいいことを考えてしまった。
とりあえず、ここには今まで戦ったことがないモンスターと戦いに来たんだ。
そう思って奥に進んでいくと、早速出てきた。
ここのモンスターは、骨のモンスターだった。
やっぱり墓地だから、モンスターといえば不死系だよな。
ダンジョンの本にも書いてあったやつと一致している。
「とりあえず突進で様子見だ」
バルが走る。
そして一撃だった。
「……お」
思ったよりあっさりだ。
「割とここのモンスターも弱そうだな」
もしかして、街の外のモンスターにすら倒せない人向けのダンジョンだったりして。
まあ、始まったばかりだし、これからか。
バルがやる気あるおかげかどうかはわからないが、余裕で先に進めそうだ。
その後も、何体か骨系や蝙蝠みたいなモンスターを倒しながら進んでいく。
すると、そこで新しいモンスターが出てきた。
「ゾンビ系か」
速度は遅い感じで、耐久力もなさそうだ。
「バル、こいつも突進で一撃で倒しちまえ」
他のモンスターと同じように、これも一撃だった。
だが――倒した後のバルの様子が変だった。
さっきまでのやる気満々な顔が一転して、こっちを見て明らかに嫌そうな顔をしている。
「どうした? バル」
バルがこちらに近づいてくる。
だが、その前に気づいた。
嫌な臭いがする。
「……うわ」
腐った肉と腐臭だ。
さっきのゾンビを倒した時についたのだろう。
「バル、ステイだ! 近づくな!」
そう言ったが、バルは止まらない。
俺はヌルヌルダンジョンのことを思い出した。
あの時と同じだ。
こいつ、自分についた嫌なものをこっちにもつけようとしている。
「おい待て、やめろ!」
言っても無駄だった。
俺は反射的に、今まで来た道へ向けて全力で走った。
前のダンジョンの時は、気持ち悪い感じがあって嫌だったが、最終的には慣れた。
でも、臭いのはダメだろう。
「このダンジョンにいる間、ずっと臭いとか無理だぞ!」
しかも後ろからは、腐臭付きの巨大球体が迫ってくる。
ひどすぎる。
そのまま後ろのバルから全力で逃げていたせいで、注意が足りなかった。
前から来たモンスターに、そのまま体当たりをかましてしまう。
「うわっ!」
対応が遅れた。
そして、バルがこちらに追いつく前に、俺はそのまま処された。
視界が暗転する。
次に気づいた時には、リスポーン地点に戻されていた。
「……はぁ」
ため息が出る。
バルを見ると、腐肉も腐臭も取れて気をよくしたようだった。
だが、そのあとでこっちを見る。
そして、やられた原因を察したのか、自分が悪いことをしたと気づいたらしい。
微妙に目を合わせないでいる。
「……お前な」
腐った肉と腐臭が俺につかなくなったのは助かった。
だが、そのせいで途中で戻されたのも、それはそれで面倒だ。
どっちが得だったのかは、判断に困る。




