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第103話 絶望するバル

 バルが、目に見えて落ち込んでいた。


 俺もちょっと落ち込んでいる。


 あれだけ期待させておいて、出てきた結果が家畜だなんて、流石にひどい。


 その後、研究員たちは興味を失ったのか、あとはミレイアに任せて、それぞれ自分たちの仕事へ戻っていった。


 そして、やる気を失ったミレイアから説明を受けることになった。


 家畜種のモンスターは、餌をたくさん食べることができて、たくさん与え続ければ進化できるモンスターだという。


 バルのように見た目は全然違っていても、変異体という枠組みで、他とは違ったモンスターとして存在するらしい。


 尻尾の数が違ったり、翼がなかったり、色が違ったり。


 ノーマルと違う姿のモンスターは変異体と呼ぶそうだ。


 だが、一部の能力が違ったりはしても、本質は元のモンスターと同じだという。


「……なるほどな」


 全然嬉しくない説明だ。


 一応、進化先についても聞いてみた。


 すると、餌をさらに与え続ければ、今よりも巨大化してジャイアントコケコになるらしい。


 家畜種は基本的に、畜産のためのモンスターとして分類されていて、戦闘能力は非常に低い。


 大きくなるごとに、質の高い大きな卵や乳などを得ることができる存在として重宝されているのだという。


「進化しても、さらに大きくなるだけなのか」


 そう呟いて、バルを見る。


 今まで見たことがないくらい落ち込んでいた。


 というか、もう絶望している。


 現実を受け入れられないのか、口を大きく開けたまま、どこを見ているのかわからない状態だ。


 目の前で手を振っても気づいていない。


「バル?」


 反応がない。


「バル! しっかりしろ!」


 揺さぶってみても、やはり反応はなかった。


 そりゃあ、自分が弱い家畜の存在だと言われて、そのうえ進化してもさらに巨大化するだけだと聞かされたら、精神が飛んでしまうのもわからなくはない。


 そんなバルをよそに、ミレイアがぽつりと言った。


「よく考えると、先ほど聞いた話だと……むしろ、その家畜種で勝ち上がったというのは、それはそれでおかしいですね。この変異体のビッグコケコ」


 まあ、そこはそうだろうな。


 家畜種が弱いなら、イベントで一体で六位なんて結果になる方がおかしい。


 ミレイアも同じことを思ったらしい。


「家畜種は基本的に、畜産物を生成して守ってもらう存在なので、戦って弱いモンスターにも勝つことすら難しいですし」


 そこで少し考え込むように言葉を区切る。


「そもそも家畜種を育てようなんて酔狂な人は、今までいなかったはず……」


 バルが強いのは、俺が卵の時に鍛えたからだな。


 ……卵の中身が家畜種のコケコだったのは、たぶん俺の運が悪かったからだろうが。


「バル! いい加減現実に帰ってこい!」


 俺はもう一度声を張った。


「呆けていても何も解決しないぞ!」


 すると今度は、反応が返ってきた。


 だが、期待していた形ではなかった。


 バルの目から、今度は涙が溢れてきたのだ。


「うわ……」


 流石にこの反応をされると困る。


 俺もどうしていいかわからない。


「なぁ、バル……」


 とりあえず、思いつく限りで励ますしかない。


「姿はどうしようもなかったとして、別のことを目指さないか?」


 バルは泣いている。


 でも、聞こえてはいるらしい。


「一番強くなるとか。見た目だけがかっこよさじゃないだろ?」


 少なくとも、そういう方向もあるはずだ。


 見た目が理想通りじゃなくても、別の強さや格好よさはある。


「かっこよさを目指すんだったら、武器とか防具とかどうだ?」


 俺はさらに続けた。


「見た目重視の武具を、ミルトに作ってもらおうぜ?」


 それが響いたのかどうかはわからない。


 ただ、しばらく励まし続けているうちに、バルは涙を流したまま、俺に抱きつく形になった。


 だから俺も、その体を撫でるようにして受け止める。


 今はそれくらいしかできない。


 バルの気持ちが上向きになる施設とか、利用するか?


 無料券もあるし、なんだったら、れいにゃが言っていたファミリアサロンとか使ってみるのもありかもしれない。


 それとも、別の、精神を癒すような施設を探すか?


 売買じゃないから、たぶん使えるだろうし。


 そんなことを考えていると、さっきまでバルを見ていたミレイアが、少し遠慮がちに話しかけてきた。


「あの……」


「ん?」


「あるかわかりませんが、新しい進化条件を探してみませんか?」


「……新しい進化条件?」


 進化の方法が、他にあるのか?


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