第59話 森に負けるな
大陸歴一四〇七年八月九日
朝からアルスはゼダン、マティアスを引き連れ、木の伐り出しへ向かう前のヴァルターを捕まえていた。
場所は湖側へ続く坂道の近くである。
最近は毎日のように木を伐り続けているため、以前とは比べものにならないほど見通しが良くなっていた。まだ開けたと言えるほどではないが、木々の隙間から辛うじて水面が見える程度だった景色も、今では湖そのものを望める場所が増えている。
「どう、ヴァルター。湖側の視界も少しずつ開けてきたけど、伐採の進捗は」
アルスが尋ねると、ヴァルターは斧を肩に担いだまま周囲を見渡した。
「とりあえず、あからさまに邪魔な木を優先的に伐採していますので、開けて見えるかもしれませんが、砦主の言うように少しずつなんですよね」
そう言って苦笑する。
「開けたと言えるまで持っていけるのは、いつになることやら」
「そうか。でも今でも前と比べると雲泥の差だからね」
アルスは周囲を見回した。
実際、最初にここへ来た頃とは比較にならなく、あの頃は木と木の間から辛うじて湖の存在が分かる程度だったのだ。
「その調子で頼みたいところなんだけど、実はもう一つ相談が有ってね」
「何でしょう」
「南西の街道へ抜ける道を急ぎで整備したいんだ」
「ああ、あっちですか」
ヴァルターは納得したように頷いた。
「確かにあっちも好き放題に木が生えてますからね。荷車を引くのは勿論、普通に歩くだけでも隙間を縫いながらになりますし、無駄に時間が掛かります」
「そうなんだよね」
アルスも頷く。
「恐らくだけど、道を引くことが出来ればかなり時間が短縮出来ると思うんだ」
現状、道らしい道は存在せず、木立の間で通れそうな場所を探しながら進んでいるだけだ。
拠点から南西の街道へ出るまで三日も掛かる理由の大部分は、そうした迂回にある。
もし人は勿論、荷車も通せる程度の道が出来れば活動は一気に楽になるだろう。
「なにも街道まで繋く必要は無いんだ」
アルスは続けた。
「下手に綺麗に繋げると、この先に何か有りますよって教えてるようなものだからね。街道から見えない場所までで良いから引きたい」
実際、街道から拠点方向へ入ってしばらくは木の間隔も比較的広い。
そこを無理に道へ変える必要は無く、むしろ今のままの方が隠れ家としては都合が良い。
問題はその先である。
問題は拠点へ近づくほど木々が密集することだった。隙間を探しながら進まなければならず、真っすぐ歩くという単純な行為が、途端に難しくなるのだ。
「そりゃ木を伐って株を抜けば道も引けるんでしょうけど」
ヴァルターは腕を組む。
「今の湖側でやってる視界を開くための伐採と違って、相当重労働になりますよ」
「難しいかな」
「いや、難しくはないんですよ」
ヴァルターは首を振った。
「湖側は、こちらからは見やすく向こうからは見にくい形にしたいので、伐り方一つ取っても気を使います。それに対して街道側は純粋に邪魔な木を伐るだけですから、その部分は楽です」
そこまで言うと、少し表情を曇らせる。
「ただ問題は荷車も通すとなると、その後の切り株ですね」
「切り株か……」
「ええ。あれを抜こうと思うと、人力では相当時間が掛かります。馬を使ったとしても一朝一夕で終わる話じゃありません」
アルスはゼダンとマティアスの顔を見る。
確かに言われてみればその通りで、木を伐るだけならまだしも残った株は荷車の天敵である。
するとマティアスが口を開いた。
「別に棒道で一直線の道を引いて欲しいわけでは無いですよね」
「それが出来れば理想だけどね」
「でしたら、無理に理想を追わなくても良いのではないでしょうか」
「どういうこと?」
「要は今の現状、一番問題になっている部分を解消しましょうという話です」
マティアスは説明する。
「今は森の中を迷路のように進んでいます。でしたら、その迷路の中で一番通りやすい場所を繋げば良いのです」
「なるほど」
その話を聞き、ゼダンも理解を示した。
「綺麗に真っすぐ引こうとすると伐る木の数も増える。だが森の流れに合わせて道を引き、どうしても邪魔な木だけを伐るのであれば労力も減るという話だな」
「ええ。その通りです」
するとヴァルターも納得したように頷いた。
「そういう話であれば、楽とは言いませんが先ほどの話より余程現実的ですね。道筋を定めてくれれば、可能かどうかの判断は出来ますよ」
そして少し考えた後、真面目な顔で言った。
「要するに森に負けるなという話ですね」
一瞬だけ沈黙。
「まあ、そうなるのかな」
アルスが苦笑する。
「森相手に勝とうとするから大変なんです」
ヴァルターは平然と続けた。
「右へ行けるなら右へ行く。左へ行けるなら左へ行く。ただし前には進む。それで十分ですよ」
「まあ戻ってなければ良いだろう」
ゼダンが笑う。
「相手は森ですからね。勝とうとすると負けます」
「何だその理屈は」
「経験則です」
即答だった。
元樵が言うと妙な説得力がある。
少なくとも森については、この場の誰より付き合いが長いのだから。
「分かった。ならこうしよう」
アルスは話をまとめた。
「この後マティアスはレオンを連れて南西の街道まで行ってくれ。どこを通る道にするか検討するんだ。縄を持って行って、後から見ても分かるように線を引いて欲しい」
「了解しました」
マティアスは即答した。
「そしてヴァルターは、その縄の道が完成したら、それが現実的なものか確認してくれ。どうしても無理な場所が有れば、また違う道を考える」
「分かりました」
「うん。そういう形でやってみようか」
「はい」
話が纏まると、それぞれが動き始める。
ヴァルターは斧を肩に担ぎ、湖側の伐採へ向かった。
そしてマティアスはレオンを呼び、共に倉庫から長い縄を引っ張り出してくる。
「ではレオン、行こうか」
「はい」
返事こそ返ってきたが、やはり少しだけ元気が無い。
以前のレオンであれば、新しい仕事を任された時はもう少し表情が動いていた気がする。
別に沈み込んでいる訳ではなく、仕事もするし会話もするのだが、どこか考え事を抱えたまま歩いているような印象が抜けなかった。
もっとも、それを口に出すことはない。
マティアスも同じことを感じたのか、縄を肩へ掛けながら、さり気なく声を掛ける。
「道筋を決めるだけだから、そう気負う必要は無いぞ」
「気負ってはいません」
レオンは小さく首を振った。
「ただ、少し考え事をしていただけです」
「そうか」
マティアスもそれ以上は聞かなかった。
本人の中で整理が付いていないものを、無理に言葉へさせても仕方が無い。
「では行こうか。今日は森に負けない道を探す仕事だ」
冗談めかして言うと、レオンは僅かに笑った。
「森に負けない、ですか」
「ああ。負け続けている結果が三日だからな」
「確かに」
今度は少し自然な笑みだった。
それを見てマティアスは安堵したのか、レオンを促し出発する。
二人は縄を抱え、南西街道方面へと馬を引き連れ歩き出した。
坂を下った先に道は無い。
だからまずは、どこに道を作るのかを決めるところから始めなければならなかった。
その背中を見送りながら、アルスは小さく息を吐く。
レオンの件は気になるが今は任せるしかない。
マティアスが付いている以上、一人で抱え込ませることにはならないだろう。
「さて」
気持ちを切り替える。
「こっちはこっちでやることが有るね」
「ええ」
ゼダンが頷く。
南西街道への道作りの次は運搬問題だ。
前々から気には成っていたが、後回しにしていた課題である。
アルスはゼダンと共に、ウォルフとヘルガを引き連れ拠点の裏手へと向かった。
最近伐採が進み、少しずつ湖が見えるようになってきた場所である。
ここへ来た理由は景色を見るためではない。
「それで話というのは何だ」
ウォルフが腕を組みながら尋ねる。
「ああ。実はクラウスから相談が有ってね」
「クラウスから?」
ヘルガが首を傾げた。
「狩りの獲物を拠点へ引き上げる時の話なんだ。材木を上げる時みたいに縄を掛けて、皆で引っ張れないかって」
「ああ」
ヘルガは納得したように声を漏らした。
「確かに大物を獲って来た時は、見てるこっちが笑い――」
そこで一度言葉が止まる。
「心配になるくらい、ふらふらしてるからね」
今、絶対に別の言葉を言おうとしたよね。
聞こえてるぞ、とアルスは内心だけで突っ込む。
実際、クラウス達の苦労は相当なもので、狩りそのものも大変だが、本当の問題はその後である。
獲物を仕留めたら終わりではなく、そこから拠点まで運ばなければならない。
そして最後に待っているのが、街道側、湖側両方にある急な坂道だった。
特に大鹿や大猪などを仕留めた日は悲惨で、前々から狩猟班の泣き所であった。
クラウス、ティム、リッキー、ゲーフの四人の組み合わせで初めて狩猟に出た際に非常に苦労したらしく、思い返せば以前、ゼダン、ティム、クラウス、レオンでも同じことが有ったはずだ。
どちらの時も、拠点へ辿り着く頃には全員が疲れ切っていた。
今日も朝から四人で狩猟へ向かったが、出発時のクラウスの顔はどちらかと言えば戦場へ向かう兵士のようだった気がするのだが、ただあれは何か違うことに憂慮していたような気もする。
「獲物を見つける前から疲れた顔をしていたな」
アルスが呟く。
「そりゃそうだろうさ」
ヘルガが笑う。
「クラウスは罠と獲物を見ながら、あの三人の相手もしてるんだからさ」
「獲れなくても疲れ、獲れたら更に疲れそうな面子だからな」
ゼダンも苦笑した。
ああ、そういう事か。そう言えば、俺もクラウスを心の中で応援していたっけな、と思い出す。念のためもう一度、クラウス頑張れ。
「ただ実際私も経験しましたが、確かにあれは楽では有りませんな」
「そういう事なんだよ」
アルスは頷いた。
「だから少しでも楽に出来ないか考えたいんだ」
狩猟の結果が大きい時だけに限らず、買い出しの際、毎度毎度荷車から皆で手分けして担いで荷を運ぶのも大変なんだ。
ならば、運ぶ方法そのものを考えても損はない。
「なるほどな」
ウォルフが湖側の坂へ視線を向ける。
「では、どう運ぶかという話だな」
最近は優先的に湖側の木を伐採しているため、材木の引き上げにこの坂道を使う機会が随分増えていた。
見れば横に昨日引き上げた何本もの木材が積み上げられている。
斜面や湖畔で伐採された木を縄で括り、夕方の訓練前に上から皆で引き上げるのだ。
「それで考えたんだけど、材木と同じやり方だと問題が有ってね」
アルスは積まれた材木の一本を指差した。
「引き上げた材木を見ると分かるんだけど、坂道に擦れるから道に接する面が剥げるんだよね」
実際、木の表面はところどころ削れ、樹皮も剥がれていた。
「それは仕方ないだろうな」
ウォルフは木材を見ながら頷く。
「下に丸太でも通せば緩和はされるのだろうが、ここの場合は坂道だからな。丸太を並べても転げ落ちていく。ただの罠か兵器にしか成らん」
「それは確かに危ないね」
ヘルガも苦笑する。
坂の上から丸太が転がってきたら、下に居る人間は堪ったものではない。
「ただの材木なら今は建材として使ってるだけだから、それでも問題は無いんだ」
アルスは続ける。
「でも獣を同じように引っ張るとなると話が変わる。皮は擦れるし、下手をすると肉まで削れるかもしれない」
今回の話の切っ掛けになったのは、まさにそこだった。
クラウス達は食糧にするために狩りの獲物を担いで坂を登っている以上、材木と同じ扱いはできない。
「下に敷板でも這わせれば良いんじゃないか?」
ウォルフが提案する。
だがアルスは首を横に振った。
「それも考えたんだ。ただ結局、道自体が凸凹してるからね。途中で止まったり、板から落ちたりすると思うんだ」
獣の大きさも毎回違い、今日の獲物は大丈夫でも、明日の獲物ははみ出すかもしれない。
「まあ、確かにな」
ウォルフも納得したように頷く。
「ただ現状、皮は使っておらんのだから多少削れても構わないのではないか?」
「ウォルフ。それは今だからだよ」
アルスは即座に答えた。
「人が増えれば、その削げ落ちる分の肉だって大事な食糧になる。それに皮を鞣せるようになれば、それも商品になる」
「ふむ」
「今は問題になってないだけで、その内絶対問題になると思うんだ」
先を見据えるなら、今のうちから考えておくべきだった。
するとウォルフは腕を組む。
「なら結局、担いでくるしか無かろう」
確かにそれが一番確実ではある。
だが、それではクラウス達の負担が何も減らない。
「うん。だから別の方法を考えたんだ」
そう言いながらアルスは少し先を指差した。
「ここだよ」
「ここ?」
「街道側じゃない。湖へ降りる側の坂道の横」
三人が視線を向ける。
そこには坂道に沿うように続く岩肌があり、過去に崩れたのか、一部は切り立った崖のようになっている。
「この辺り、絶壁になってるんだよね」
材木搬入の度に見ていた景色だ。
だからこそ、ある時ふと思ったのである。
坂道を使うから擦れるというのなら、そもそも坂を使わず真上へ吊り上げれば良いのではないかと。
「獲物や荷物を下まで運んで、そこから真上に持ち上げられないかなって思ったんだ」
三人が再び絶壁へ視線を向ける。
下から上へ擦らずにそのまま持ち上げるという発想だった。
しばらく岩肌を見上げていたウォルフが、やがて口を開く。
「……なるほど。昇降機か」
ウォルフの言葉に、アルスは首を傾げた。
「昇降機?」
「うむ」
ウォルフは絶壁を見上げながら頷く。
「砦主の言っていることは分かった。荷を網や板に載せ、縄で吊り上げるという話だろう」
「そうそう」
アルスも頷いた。
「昔、ローデンの街壁で投石用の石を上げていたのを思い出したんだ。縄で編んだ網に石を詰めて、皆で引き上げていたんだよね」
「ああ、そういう話か」
ウォルフは納得したようだった。
「少し地盤の固さを確認する必要は有るが、出来なくは無いだろうな」
「お、本当に?」
思わず声が弾む。
それが出来るなら話は大きく変わる。
狩った獲物だけではなく、フェルデンから運んできた荷物も、毎回総出で担いで坂を登る必要が無くなるかもしれない。
「ただ待て」
そこでゼダンが口を挟んだ。
「重さの問題はどうするのですかな」
「重さ?」
「ええ。担いで運ぶのであれば人数を増やせば済みますが、縄で吊り上げるとなると話は別でしょう」
言われてみればその通りで獲物一頭でも相当重いし、荷物の場合も重いものは結構ある。
それを腕力だけで引き上げるのは、むしろ今より大変になるのではないだろうか。
「あ」
アルスも気付く。
「確かに」
ゼダンは続ける。
「形は作れても、結局引き上げる人間が苦労するのであれば本末転倒です」
「そうか……」
良い案だと思ったんだが、また振り出しかと思った時だった。
「いや、そうでもないぞ」
ウォルフが言った。
「え?」
「要は滑車を使えば良い」
さらりと告げられた言葉に、全員がウォルフを見る。
「滑車?」
「ほれ、井戸などで見たことは無いか」
「ああ」
アルスも思い出す。
確かに井戸には車輪のような物が付いていた。
「それに滑車の数を増やせば、そこまで力を使わずとも物を上げることは出来る」
「出来るのか!」
「うむ」
ウォルフは頷く。
「もちろん限度は有るがな。少なくとも縄一本で持ち上げるよりは遥かに楽になる」
おお、急に希望が見えてきた。
ゼダンも興味深そうに絶壁を見る。
「なるほど。それなら現実味が有りますな」
「後は地盤だな」
ウォルフは岩場を見ながら続ける。
「この辺りが荷重に耐えられるか確認する必要は有るが、場所としては悪くない」
「じゃあ出来る?」
「恐らくな」
その瞬間だった。
「問題はそこじゃないだろうさ」
ヘルガが口を開いた。
何故か少し呆れた顔をしている。
「ん?」
ウォルフが振り返る。
「何がだ」
「そりゃ地盤がしっかりしてりゃ昇降機は作れるだろうさ」
「うむ」
「ここでなくても場所を探せば出来ると思うよ」
「だろう?」
ウォルフは満足そうに頷く。
「なら何が問題だ」
ヘルガは大きく溜息を吐いた。
「簡単な話さ」
そして一言。
「あんた、滑車作れるのかい?」
「…………」
ウォルフが固まり、それを見たアルスとゼダンも固まる。
「……作れん」
最初に声を出したのはウォルフだった。
「そうだろう?」
ヘルガは肩を竦める。
「木でそれらしい物は作れるかもしれない。でもアタイもあんたも木工職人じゃない」
「うむ……」
「それに、それだけ重い物を吊るつもりなら金具も必要だろう。鍛冶屋の仕事さ」
言われてみればその通りだった。
出来る出来ない以前に、そもそも誰が作るのかという話である。
夢中で盛り上がっていたが、一番大事な部分が抜け落ちていた。
「その通りだな……」
ウォルフは咳払いした。
「砦主。期待させたかもしれんが、滑車が無ければ形だけ作っても使い物にはならん」
「そうなのか……」
希望が見えたと思ったら、今度は職人不足の壁である。
世の中なかなか上手くいかない。
「その滑車ってフェルデンで手に入るのかな」
「さてな」
ウォルフは肩を竦めた。
「何せフェルデンへ行ったことが無いから、俺には分からん」
ああ、そうだった。
ウォルフもヘルガも、まだフェルデンへ行かせていない。
「ウォルフはフェルデンへ行けるのかな」
アルスは確認する。
色々あって街では暮らしにくいと言っていた記憶が有る。
「フェルデンは大丈夫だぞ」
「そうなの?」
「行ったことが無いと言っただろ?」
ウォルフは真顔で答えた。
「まだ何もやってない」
まだって何?
一体何をする気なんだ?
聞かない方が良い気がした。ので、そのまま続ける。
「……なら今度買い出しへ行く時、一緒に行って見てきてくれるか」
「心得た」
ウォルフは頷く。
「ならフェルデンで手に入るつもりで、こちらは昇降機が置けるか地盤を見ておこう」
「うん。頼んだよ」
こうして昇降機計画は、一先ずフェルデンで滑車が手に入るかどうかを調べてからという話に落ち着いたのであった。
ウォルフは絶壁の縁へ歩いていき、地面を足で踏みながら確かめ始める。
昇降機が置けるかどうかから調べるつもりなのだろう。
一方で、マティアスとレオンは既に南西の街道へ向かった。
どこを通れば最も効率良く道を引けるのか、縄を使いながら実際に森の中を進み、道筋を決めているはずだ。
そして、その結果を受けて今度はヴァルターが動く。
伐採で本当に道が作れるのか、切り株の処理はどうするのかと、計画が実現可能かどうかを判断する役目だ。
誰か一人が成し遂げる話ではない。それぞれが役割を持ち、一つずつ形にしていく。その積み重ねが、少しずつ拠点を前へ進めていた。
考えてみれば不思議なものだ。
道はまだ存在しなく、昇降機もまだ存在しない。
完成したものは何一つ無かったが、南西の街道へ向かう道と湖側の昇降機の二つが完成すれば、きっとこの拠点は今よりもっと動きやすくなる。
アルスは遠くへ視線を向けながら、そんな事を考えるのであった。
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