登場勢力・領地・街紹介 第2章終了時点
勢力解説(西部四十八家内)
■西部四十八家
西方一帯に点在する諸侯家によって構成される緩やかな連合体。名称は「西部四十八家」と称されるが、実際に確認されている構成家数は四十三家であり、その差異の理由については明らかになっていない。単に五家減じても古い呼称が残ったのか、それとも別の事情があるのかは永遠の謎とされている。
各家は独立した統治権を有し、政治・軍事・経済はそれぞれの判断に委ねられている。そのため家同士の対立や紛争も珍しくなく、統一的な統治機構は存在しない。一方で、外部からの大規模な侵攻に対しては共同防衛を行う取り決めがあり、平時は分散し、有事には結集するという緩やかな連合体として機能している。
勢力圏は広く、総人口は概ね百六十万人規模と推定される。内陸農業地帯、山岳地帯、河川流域、沿岸部など各領の特色は大きく異なり、多様な地域社会を内包している。
現在までに物語上で確認されている主な構成家は以下の通りである。
・ミュラー家(滅亡)
・エリクセン家
・ブラウナー家(ミュラー家の南方沿岸の小規模港湾領)
・バウム家(山間部への経路上に位置する中継的領地)
・ローゼンベルク家(旧来の名門家系/エリーゼの実家)
・グライフ家(廃砦の旧所有家)
・グルンフェルト家(グライフ家の隣接領主)
・ヴァルケン家(レーヴェン従属湖岸領主)
・レーヴェン家(河川支配)
・グラーヴェ家(ミュラー家長女の嫁ぎ先)
・ドレッシン家(滅亡。減じた五家に含まれるとされる)
なお、ミュラー家はエリクセン家の侵攻によって滅亡したが、西部四十八家はこれを外敵による侵略ではなく内部抗争と判断し、連合としての軍事介入は行っていない。その一方で、ローゼンベルク家とグラーヴェ家は独自にミュラー家領主一族の捜索を続けている。
連合内部では争いも絶えないものの、外敵に対抗するという大原則そのものは現在も揺らいでおらず、西部四十八家としての結束自体は依然として維持されている。
■ミュラー家
主人公アルスの生家にあたる小領主家。西部四十八家の一角を構成していた家であり、領都はローデン。
領内人口は五千人弱と小規模で、経済力・軍事力はいずれも連合内では下位に属していた。しかし歴代当主の統治能力によって家の存続を維持してきた経緯を持ち、沿岸部で生産される塩は量こそ多くないものの、周辺との関係を支える特産として機能していた。
現当主はサエル=ミュラー。家中および領民からの信頼は厚く、実直な統治を行っていたとされる。
しかし、エリクセン家による急襲を受けて敗北。領都ローデンを含む領地は制圧され、ミュラー家は事実上滅亡した。
一方で、生存者たちは各地へ離散している。三男アルスは山中の廃砦を拠点として密かに勢力を築き、五男ジョナスは海賊「紅鯨団」へ婿入りして独自の基盤を得つつある。また長男ファビオも北方を放浪しながら行動を続けており、滅亡したはずのミュラー家の行く末は、なお予断を許さない状況にある。
■エリクセン家
西部四十八家の一角を構成する中規模領主家。領都は現時点では未確認。領内人口は約二万人規模であり、ミュラー家と隣接する北方領を統治している。
ミュラー家とは長年にわたり比較的安定した関係を維持してきたが、先代当主の急死を契機として状況は一変する。後継として十二歳の幼少の当主が立てられると、先代当主の弟ゲルハルトが後見人として実権を掌握し、家中の統制を回復させた。
ゲルハルト主導によるミュラー領侵攻は成功を収め、同家は領域の拡大と塩資源の獲得を実現する。しかしその後は、フォーゲル家の要請に応じて塩の確保を優先し、元来のエリクセン領での徴発や旧ミュラー領での略奪を繰り返すこととなった。
その結果、領地こそ拡大したものの税収の増加は限定的であり、領民の負担と憎悪は増大している。家臣の中にはフォーゲル家との関係見直しを公然と進言する者も現れ始めており、強権によって保たれてきた統制には徐々に綻びが見え始めている。
また、近年深まったフォーゲル家との結び付きは、同家の発展を支える一方で、新たな不安定要素としてエリクセン家そのものを揺るがしつつある。
■グライフ家
西部四十八家の一角を構成する領主家。領内人口は約一万五千人規模と見られ、現在は連合内でも下位寄りの勢力に位置している。領内にはエリクセン家とフォーゲル家を結ぶ街道が通過しており、バウム家とも隣接するなど、周辺有力家の影響を受けやすい地理条件を持つ。
かつては一定の軍事力と支配領域を有していたが、長年の縮小傾向により往時の勢力を失っている。統治は収益性を重視する傾向が強く、管理負担の大きい地域や施設は十分な維持が行われず、領内には整備された地域と荒廃した地域の差が存在する。
アルスたちが拠点とする廃砦も本来は同家の施設であるが、その存在を拠点として再利用されている事実は未だ把握していない。アルスたちの調査によれば、拠点南東部の一帯は徴税や巡回もほとんど行われず、半ば放棄状態となっている可能性が高い。
対外的な影響力は限定的ながら、有力家の狭間に位置する戦略的重要地としての性質を持つ。また近年では、レーヴェン家主導による湖賊討伐にも共同軍の一員として参戦している。
■ローゼンベルク家
西部四十八家の中でも特に古い歴史を持つ名門諸侯家。領内人口は約十万人、動員可能兵力は約四千五百とされ、連合内でも有力家の一角に数えられている。
領内は農業を基盤としつつ街道交易も盛んであり、急激な発展こそないものの安定した統治によって長く勢力を維持してきた。西部四十八家の会合では調停役を担うことも多く、武威よりも信頼と実績によって発言力を築いてきた家として知られている。
現当主はエルンスト=ローゼンベルク。大過なく家を運営する堅実な人物として評価されており、感情に流されず現実的な判断を下すことで家中をまとめている。
ミュラー家滅亡後は、娘エリーゼと孫アルビーナを保護するとともに、諜報網を用いてミュラー家生存者の捜索を開始した。しかし依然として有力な手掛かりは得られておらず、当主エルンストは焦燥を募らせながらも、更なる調査と対応を検討している。
西部四十八家の中核を担う名門の一つとして、その動向は周辺諸侯にも少なからぬ影響を与えている。
■グルンフェルト家
西部四十八家の一角を担う領主家。領内人口は約四万人規模で、広大な農業平野を有する穀倉地帯を統治している。軍事力は突出こそしないものの一定の動員力を備えており、安定した国力を持つ中堅諸侯として認識されている。
領地はグライフ領の南西に位置し、バウム領の北東とも接している。アルスたちの拠点からバウムゼンへ向かう街道を境に、北東側がグライフ領、南西側がグルンフェルト領となっている。
政治的には保守的な傾向が強く、急進的な改革よりも既存の秩序と慣習を重視する統治を行っている。そのため領内運営は堅実であり、徴税や巡回も継続的に実施されているなど、放棄地域の目立つグライフ家とは対照的な様相を見せている。
派手な拡張政策や対外進出には消極的だが、農業生産によって支えられた安定性は高く、西部四十八家を下支えする実務的な領主家の一つと見なされている。
■レーヴェン家
西部四十八家の有力諸侯の一つ。領内人口は約七万五千人、動員可能兵力は約四千とされる。主要河川と橋梁を支配しており、往来する人や物資から得られる関税収入によって豊かな財政基盤を築いている。
その繁栄は交易によって支えられているため、政治的には「交易重視・分裂維持派」として知られる。西部四十八家が統一されれば関税収入の減少や既得権益の縮小に繋がる可能性が高く、現状の緩やかな連合体制を最も好む家の一つである。
先代領主の頃よりドレッシン家率いる湖賊によって湖の支配権を奪われており、その奪還を悲願としている。湖自体はレーヴェン家の領地ではないものの、湖上交易の掌握は莫大な利益に直結するため、その重要性は極めて高い。
最近、従属下のヴァルケン家や、近隣に宿場町を有するグライフ家を率いて共同討伐を企画したが、ドレッシン家の前に撃退されている。現在もなお、湖の支配権を巡る争いは続いている。
■ヴァルケン家
西部四十八家に属する小領主家。領内人口は約一万人。湖岸部を治める領主家であり、かつてはレーヴェン家との交易によって一定の繁栄を築いていた。
しかし先代の頃、ドレッシン家率いる湖賊によって湖の支配権を奪われたことで状況は一変する。湖上交易の衰退によって領内経済は急速に悪化し、独力での存続が困難な水準にまで追い込まれた結果、レーヴェン家への従属を受け入れることとなった。
本来であれば併合を望んでいたものの、交易網維持を優先するレーヴェン家の方針により、名目上は独立した従属領主として存続している。その実態は、湖賊討伐をはじめとする負担や要求を一方的に押し付けられる立場に近い。
領民は重なる負担によって疲弊し、領主一家へ救済を求める声も少なくない。しかし当の領主一家にも有効な打開策はなく、領内全体が閉塞感と苦境の中に置かれている。
湖の支配権を取り戻せるか否かは、ヴァルケン家にとって家の存亡そのものを左右する問題となっている。
■グラーヴェ家
西部四十八家の中でも有数の勢力を誇る大領主家。領内人口は約十一万人、動員可能兵力は七千前後に達し、西部でも上位の軍事力を有している。
広大な農地を支配しており、西部最大級の穀倉地帯として豊かな経済基盤を築いている。また騎士団文化が色濃く根付いており、武勇と名誉を重んじる気風を持つことでも知られている。
政治的には西部四十八家の統合を唱える立場にあるが、それは対等な連合強化ではなく、「自らが主導する形での統一」を前提としたものである。そのため周辺諸侯からは理想家として期待される一方、野心家として警戒されることも少なくない。
近年は勢力を拡大し続けるフォーゲル家を西部全体に対する脅威として強く警戒しており、分裂したままでは対抗できないとの危機感を抱いている。
なお、ミュラー家とは縁戚関係にあり、本編未登場のサエル=ミュラーの長女が嫁いでいる家でもある。ミュラー家滅亡後は、ローゼンベルク家と共に領主一族の捜索を行っている数少ない家の一つである。
勢力解説(西部四十八家外)
■フォーゲル家
西方一帯において最大級の勢力規模を有する大領主家の一つ。領内人口は約八十万人に及び、単独の家としては西部四十八家を構成する諸侯を大きく上回る規模を誇る。
領都はシュタインブルク。経済活動よりも軍事機能を優先して発展してきた軍都であり、兵站・徴発・動員体制を軸とした統治構造を特徴としている。
地理的には西部四十八家の勢力圏と一部領地が重なるものの、その大部分は連合の枠外に位置する。規模・軍事力ともに他家を大きく凌駕しているため、現在に至るまで西部四十八家には参加していない。
現在もナユリ王国との戦争は長期化し、戦況は膠着状態にある。戦費調達のための重税や徴発によって領内の疲弊は進み、とりわけ深刻だった塩不足は、エリクセン家からの供給によって多少改善されたものの、根本的な解決には至っていない。
近年では資源確保と収益拡大の動きを強めており、ナユリ王国で捕らえた兵士や村人を奴隷として売却することで莫大な利益を得ている。統治基盤そのものは依然として強固だが、その繁栄は戦争の長期化と周辺地域からの収奪によって支えられている。
■ナユリ王国
北方に位置する中規模国家。領域は海沿いに東西へ広がり、総人口は約百二十万人規模を有する。
沿岸部を中心に交易が発達しており、海産物の流通と対外取引によって経済基盤が支えられている。農業・林業・牧畜業といった基幹産業も安定しており、国全体としての生活基盤は堅実である。一方で鉱山資源には乏しく、とりわけ金属資源の不足を交易によって補っている。
フォーゲル家との戦争は、西方属国への侵攻に対する防衛を契機として始まった。その後は属国を巡る争いの枠を超え、フォーゲル家との直接的な全面衝突へと発展している。
現在の戦況は長期化し、双方とも決定打を欠いたまま泥沼化している。近年のナユリ王国では、正規兵の前列に重犯罪者を並べて半ば捨て駒として突撃させる「重犯罪奴隷兵」を運用し始めており、犠牲と引き換えに一定の戦果を挙げている。
国内の安定はなお維持されているものの、戦争の長期化は周辺地域の物流や各勢力の動向にも大きな影響を及ぼしており、その行方は西部四十八家やフォーゲル家の情勢とも密接に結び付いている。
■ドレッシン家
かつて西部四十八家の一家として、南方湿地帯周辺を治めていた領主家。現在は滅亡しており、「西部四十八家」の名と実数が一致しない理由の一端を担う家でもある。
滅亡の際、当時の領主は幼い息子と家臣たちを連れて放浪の旅へと出た。その末に北方の湖へ辿り着き、湖上に新たな生活基盤を築きながら仲間を増やして勢力化。やがて湖賊集団として定着していった。
現在の頭領は、その領主の幼い息子であったフレンチ=ドレッシン。湖の地の利を活かした巧みな用兵によって近隣領主の討伐隊を幾度も退けており、その手腕から湖賊たちの間では名将、あるいは名指揮官として絶大な支持を集めている。
近隣勢力からは流通を阻害する存在として警戒されているものの、日常の生業は漁業が中心であり、周辺の町村とは定期的な物々交換も行っている。運輸や交易への積極的な関与は少なく、湖と共に生きる独自の共同体としての性質が強い。
滅びた領主家でありながら、その血統と名は湖の上で今なお受け継がれている。
■紅鮭団
ミュラー領から北西の海上に浮かぶ小島を拠点とする海賊勢力。元は各地の領主支配から逃れてきた漁師たちが身を寄せ合う避難先であったが、貧しさから脱するため、周辺を通る商船から通行料の名目で物資の一部を徴収するようになり、次第に海賊集団として勢力化していった。
現在では近隣の島々や沿岸の漁村にも影響力を持ち、海上における一勢力として認識されている。一方で、小島の存在自体は漁民たちの間では非常時の避難先として知られているものの、支配者層にはほとんど把握されておらず、その閉鎖性が勢力維持の一因となっている。
現頭領は、紅鮭団を築いたサーン兄弟の息子たちによる二頭領体制を採用しており、情と現実を両立するタカ=サーンと、率直な物言いで組織を支えるノリ=サーンがそれぞれの立場から団を率いている。
海賊でありながら漁師としての側面も色濃く残しており、単なる略奪集団ではなく、海と共に生きる独自の共同体としての性格を持つ勢力である。
街解説
■領都ローデン
ミュラー領の領都ローデンは、海と平野の境に築かれた小さな町である。
西には外洋の荒波から守られた入り江を抱え、本来であれば商船が行き交い、桟橋が賑わう良港として発展する素地を持っていた。しかし現在、その活気は失われている。
エリクセン軍の侵攻によって町の中心にあったミュラー家の館は焼失し、石造りの鐘楼や市場、鍛冶場、倉庫にも戦禍の爪痕が残った。街中にはエリクセン家の旗が掲げられ、支配の交代は誰の目にも明らかな形で示されている。
かつて約二千人の民が暮らしていた町には避難や流出による空白が生まれ、残された領民も圧政の下での生活を余儀なくされている。フォーゲル家の塩需要を満たすため、沿岸部では生活必需品の生産よりも塩の増産が優先され、慢性的な物資不足が続いている。
占領から既に月日が流れているものの、領民への徴発や搾取は収まる気配を見せない。目を盗んで脱出を試みる者も後を絶たないが、多くは捕らえられ町へ戻されている。そのため住民の間には怨嗟と不満が静かに蓄積し続けている。
東には南北へ連なる山脈が横たわり、守りには適している一方で、鉱山資源や交通路には恵まれていない。領外へ通じる街道も往時の賑わいを失い、行き交うのは軍関係者や監視下の人々ばかりとなった。
守るには足りたが、広がるには足りなかった町。その均衡を失ったローデンは今、海を持ちながら海に出られず、道を持ちながら自由に道を辿ることもできない。
かつての穏やかな港町は、占領と搾取の象徴として静かな荒廃の中に沈みつつある。
■領都バウムゼン
バウム領の領都バウムゼンは、西部内陸に築かれた商業の町である。
四方を丘陵と森に囲まれ、周辺の農村や伐採地、小規模な鉱山で産出された麦、木材、鉄鉱石などの生産物は一度この町へ集められ、市場を通じて各地へ流通していく。
城壁や城塞は質素で、バウム家の兵力も多くはない。一方で、街道が交わる要衝であることから、傭兵や商人、旅人が絶えず行き交い、酒場や宿屋は常に賑わいを見せている。中立を重んじるバウム家の方針もあり、様々な勢力の商人が出入りする開かれた町でもある。
また、各村の生産物を一度領主側が全量回収し、値付け後に販売する制度を採用しており、売上から手数料と税を差し引いた分が生産者へ還元される。バウムゼンは、その取引の中心地として機能している。
人口はおよそ五万人。西部では大都市ではないものの、人の流れは絶えない。しかし、生活の立ち行かなくなった村人も流れ着きやすく、商人の富と貧民の困窮が同居する、貧富の差が大きい町でもある。
兵は少ない。だが、人は多い。
そして、人の多い町では――よそ者も珍しくない。
アルスたちはこの町を二度訪れ、最初はディートリヒとの出会いを得て、二度とも彼の紹介によって新たな仲間たちを迎え入れている。
■領都シュタインブルク
フォーゲル領の領都シュタインブルクは、内陸に築かれた軍事都市である。
高い城壁と戦略的に配置された門を備え、街の中心には領主の館、その周囲には訓練場、兵舎、武器工房が整然と並ぶ。鍛冶屋や甲冑工房の炉は昼夜を問わず燃え続け、街には常に鉄の匂いと煙が漂っている。
都市人口は約十五万人。兵士や職人、兵站関係者が多数を占め、街全体が生活の利便性よりも防衛と訓練の効率を優先して設計されている。外縁部には広大な練兵場が広がり、放射状に伸びる街道は軍の迅速な展開と領内統治を支えている。
現在はナユリ王国との戦争の影響で、多くの兵が前線へ出征しており、軍都としては平時に比べて活気を欠いている。また、エリクセン家を通じた塩の確保によって不足は多少改善されたものの、慢性的な欠乏はなお解消されていない。
一方で、ナユリ王国から連れてこられた奴隷の市場は連日賑わいを見せており、戦争そのものが新たな利益を生む構造も生まれている。
シュタインブルクは、戦いのために生まれた都市である。
■街道宿場町フェルデン
グライフ領内に存在する街道沿いの宿場町。エリクセン領とフォーゲル領を結ぶ主要街道に面し、さらにバウムゼン方面への分岐点までも二日ほどの距離にあることから、宿場町として大きく栄えている。グライフ家にとっても重要な収入源の一つとなっている。
荷馬車や旅人の往来は絶えず、宿屋や厩舎が立ち並ぶ。規模こそ大都市には及ばないものの、周辺地域では最も大きな町であり、小規模な市場も開かれている。保存食、毛皮、木工品を扱う商人が集まり、鍛冶屋では鉄や鉄製品の補充も可能である。
街道を北東へ進めば、湖賊ドレッシン家が勢力を張る湖へと至る。もし湖の支配権を奪還できれば、更なる発展が見込まれる戦略的要地でもある。
また、アルスたちの拠点から一日半ほどの距離に位置することが判明しており、今後は物資調達や情報収集の拠点として活用される機会が増えると考えられる。ファビオ一行も北方への逃避行の途上でこの町を利用している。
人と物が行き交い、情報が集まる――フェルデンは、街道がもたらす賑わいによって成り立つ、グライフ領屈指の宿場町である。




