幕間16 知る旅
大陸歴一四〇七年六月二十日
ミュラー領北領境遭遇戦から、既に三カ月以上の時が過ぎていた。
あの敗戦の日、ファビオは腹心であるニコとエンゾだけを伴い、父サエルの言葉を胸に、崩壊していく戦場から離脱を果たした。
当初は生き延びるための離脱に過ぎなかった。
だが、北へ進み、ミュラー領へ突如槍を向けたエリクセンとフォーゲルの実態を自分の目で見て回るうちに、その旅の意味は少しずつ変わっていった。
彼らはまず、エリクセン領内を彷徨った。
街道沿いの町や村へ立ち寄っては人の流れを見て、酒場で話を聞き、時には農村へ足を伸ばしながら、その土地の空気を確かめ続けてきたのである。
そして、その感想を一言で表すのであれば——酷い、の一言であった。
人々の表情には常に沈んだ色が張り付き、町には妙な荒れ方がある。
表向きには秩序が保たれているように見えても、裏路地へ目を向ければ空気は淀み、街道沿いでは盗賊崩れのような連中が平然と徒党を組み、村々でも領主や徴税官への不満が隠し切れていなかった。
原因は明白で、税だ。
それも、ただ重いだけではない。
理由までは把握できなかったが、無理やり吸い上げ続けていると一目で分かる類の徴発である。
当初、ファビオは、自らの故郷を崩壊へ導いた敵を見定めるつもりで北へ来た。
だが、実際に見えてきたものは、勝者の余裕でも繁栄でもなく、領民から無理やり血を絞り続けるような有様だった。
そして同時に、それはファビオへ別の現実も突き付けてくる。
もしミュラー領が、彼らに呑まれていたならば——いや、恐らく既に呑まれているのだろうが、
あの故郷もまた、やがて同じ姿へ変わっていくのではないか。
そう思うたび、胸の内には鈍い重さが積もっていった。
もっとも、だからといって今の自分に何か出来るわけでもない。
既に家は滅び、自らは落ち武者同然の立場であり、供回りもニコとエンゾしか残っていない。
見たかったものは、十分見た。
そう判断したファビオは、やがてエリクセン領を離れ、北東のフォーゲル領へと向かうことを決めたのである。
道中、グルンフェルト領とグライフ領を順に見て回った。
特にグライフ領では、街道宿場町フェルデンへしばらく滞在することに成った。
フェルデンを越えれば、街道の右手には巨大な湖が広がり始めるのだが、その周辺には湖賊が根を張っているという話であり、勢力圏へ不用意に踏み込む前に、一度腰を落ち着けて情報を集める必要があったのだ。
その滞在中、ファビオは幾つかの道筋を検討した。
このまま少し道を戻り、バウム領バウムゼンへの道に変更するか。
それとも、初志貫徹としてフォーゲル領へ入るか。
宿の一室で、ニコとエンゾを交えて話し合った末、最終的に出された結論は単純だった。
——やはり、フォーゲルを見よう。
その一言である。
そうして彼らは進路を北東へ定め、ついにフォーゲル家の領都シュタインブルクへと辿り着いたのだった。
もっとも、“潜入”などと言うものではなく、実際には拍子抜けするほどあっさりとしたものだった。
領都へ入る際、門兵から名前と目的を問われはしたのだが、偽名を名乗り適当な旅の理由を述べれば、それ以上深く追及されることはない。
身元の裏取りもなく、そのまま通行を許されてしまったのである。
無論、それは幸運だけによるものではなかった。
ここへ至るまでの道中、ニコが綿密に情報を集め続けていた成果でもある。
どのような確認をし、どの時間帯なら通行量が増え不自然さが薄れるか。どういう旅人なら怪しまれにくいか。
そうした積み重ねがあったからこそ、余計な揉め事もなく自然な流れの中へ紛れ込むことが出来たのだった。
そして今、ファビオたちはシュタインブルクの一角にある宿へ腰を落ち着けている。
窓の外では、人の声と金属音が絶え間なく混ざり合い、街そのものが休むことなく動き続けているようだった。
少なくとも、この街がミュラー領都ローデンとは比べ物にならぬ規模であることだけは、門を潜った瞬間から理解させられていた。
宿へ腰を落ち着けてからしばらく後、領都の様子を見に出ていたニコが戻ってきた。
扉を閉めるなり、彼は軽く外套を払いながら口を開く。
「若君。やはりナユリ王国との戦は、未だ終わりが見えていないようです。軍都として栄えているはずのここも、軍が不在の影響か、随分景気が落ち込んでいるようでした」
その報告を受け、ファビオは椅子へ腰掛けたまま静かに頷く。
「宿へ入る前に軽く見回したが、街の規模の割には人通りが少なく感じたな」
確かに人は居るのだが、都市の大きさに対して熱気が足りない。
街自体は巨大であるにもかかわらず、人の熱が都市全体へ回っていない。
鍛冶場からは絶えず金属音が響き、武具屋も並んではいる。しかしそれらが都市全体の勢いへ繋がっているようには見えなかった。
ニコは続ける。
「恐らく、フォーゲルを本当の意味で支えているのは、ここシュタインブルクではないのでしょう。軍と領主を置くための都としては機能していますが、金と物を回しているのは別です」
「商業都市ハーゼルフェルトか」
「ええ。こちらへ来る途中でも耳にしましたが、人や物の流れは、かなりあちらへ集中しているようです」
ファビオは小さく息を吐き、窓の外へ視線を向けた。
確かに規模は大きい。ミュラー領都ローデンとは比較にもならない。
しかし、それほどの大都市でありながら、どこか無理やり帳尻を合わせているかのような、不自然さも感じられた。
それでもなお、ローデンとは比べ物にならぬ力を持つ都市であることに違いはない。
「……やはり規模が違う。それを痛感するな」
これほどの力を持つ相手に狙われた以上、どうしようもなかったのかもしれぬ──そんな思いが胸をよぎる。
そう思いながら、ファビオは街の音へ耳を傾ける。
「不景気やもしれぬ。だが、ローデンを思い浮かべながら見てみよ。祭の日でも、これほど人が集まることはあるまい」
「それは間違いありません」
ニコも素直に頷いた。
「ですが若君、人が多いということは、それだけ必要なものも増えるということです。しかも、ここは軍都として発展してきた街。生産も鍛冶や軍需方面へ偏っています。他領との流れが崩れれば、途端に苦しくなる構造でしょう」
「それもまた事実か」
ファビオは腕を組みながら低く呟く。
「実際、フォーゲル領へ入ってからというもの、妙に不便さばかり感じる。町や村を繋ぐ道は悪く、案内も少ない。街道そのものも、場所によっては整備が甘い。よくこれで領内を回しているものだ」
「軍事主体の家故でしょうな」
ニコは迷いなく答えた。
「領内の道を整え過ぎれば、流通は確かに加速します。ですが同時に、敵軍や反乱軍にとっても動きやすくなる。地理を把握しづらくしているのも、恐らくそのためでしょう」
「なるほどな」
ファビオは苦笑する。
「守るために不便を抱え込んでいる訳か。実にフォーゲルらしい話だ」
人の暮らしではなく、軍の都合を基準に領全体が組み上げられているという印象だった。
二人が話していると、不意に宿の扉が開いた。
買い出しへ出ていたエンゾが、大きな袋を抱えて戻ってくる。
「戻りました。いや、塩が高いですね」
荷を下ろしながら、彼はうんざりしたように肩を回した。
「食料品全体が高いんですが、その中でも塩だけ頭一つ抜けてます。ありゃ相当ですよ」
「塩?」
ファビオの眉がわずかに動く。
「そもそもフォーゲルは、どこから塩を得ていたのだ。シュタインブルクだけでも相当な人口だぞ。領全体で考えれば、とんでもない量が必要になる。領域は内陸地しかないが、どこかで岩塩でも採れるのか?」
するとニコが、既に調べていたらしく応じた。
「皆無ではないようですが、産出量は少ないそうです。どうやら、以前から慢性的に不足気味だった模様で」
「慢性的に……」
ファビオはそこで言葉を止めた。
塩。ナユリとの戦。そして、エリクセン。
頭の中で、これまで旅の途中に見聞きしてきた話が少しずつ一本の線で繋がっていく。
「……塩か」
小さく呟く。
「塩、塩、塩……なるほど。そういうことか」
その変化に、ニコもまた同じ結論へ辿り着いたらしく、静かに口を開いた。
「恐らく、そのお考えで間違いないかと。エリクセンだけでなく、フォーゲルまで参戦してきた理由……その根本には、塩不足があるのでしょう」
「ナユリとの戦も、その延長線か」
「でしょうな。そして、その負担を支えるため、周辺へさらに圧を掛け始めた。結果として、我らミュラーにも牙が届いた」
二人の会話を聞きながら、エンゾが遅れて目を見開く。
「待ってください。それじゃあ、俺たちが滅ぼされた原因って……」
「フォーゲルの塩不足だ」
ファビオが淡々と答える。
「正確には、塩を巡る戦と、その負担だな」
「そんな、たかが塩で……」
エンゾが吐き捨てるように言った瞬間、ファビオは静かに首を振った。
「違うぞ、エンゾ。たかが塩ではない。塩だからこそ、だ」
その声音には、不思議なほど感情が乗っていなかった。
「人は塩なくして生きられぬ。兵も、民も、家畜もだ。どれほど強大な軍を持とうとも、塩が止まれば崩れる」
そこまで言うと、ファビオはゆっくり椅子へ背を預ける。
「……そうか。フォーゲルとナユリの戦が、塩という形で我が家へ降りかかったのか」
その呟きの後、部屋には短い沈黙が落ちた。
窓の外では、相変わらず鍛冶場の金属音が鳴り続けている。
だが今のファビオには、それがまるで、どこか無理を重ねながら回り続ける歪な車輪の軋みのようにも聞こえていた。
夕方が近づくにつれ、シュタインブルクの空気は昼間とは別の熱を帯び始めていた。
鍛冶場から流れてくる金属音は相変わらず絶えない。
だが、それに混ざるようにして酒場の喧騒や呼び込みの声が増え始め、通りには昼間よりも露骨な欲望の気配が滲み出していく。
昼の街が軍都としての顔ならば、夜の街は、その軍都へ群がる人間たちの顔だった。
宿の部屋で一息ついていたところへ、買い出しを終えたエンゾが椅子へ腰を下ろしながら口を開く。
「いや、しかし凄かったですよ。奴隷市まで立ってました」
その一言に、ニコが視線を向けた。
「覗いてきたのですか」
「軽くだがな」
エンゾは苦い顔で肩を竦める。
「ナユリから相当数連れ帰ってるみたいだ。かなり賑わってたぞ。だが、妙だった」
「妙?」
「売られてるのが、殆ど女子供なんだよ。愛玩奴隷ってやつか? 労働奴隷みたいなのは少なかった。男も居たには居たが、力仕事に向いてそうなのは殆ど見なかったな」
その言葉に、ファビオが静かに口を開く。
「健全な男は市に出さず、商人を通して他へ流しているのだろう」
「他へ?」
「元ナユリ兵は勿論、近場で攫った若い男も含めてな。反乱の火種になり得る連中を、自分たちの膝元へ大量に置いておきたいとは思うまい」
「ああ……なるほど」
エンゾはそこで納得したように頷く。
「だから女子供ばかりなのか」
だが、次の瞬間には再び首を傾げた。
「いや、でも変じゃないですか? 軍は今ほとんど出払ってるんでしょう。だったら、女子供の奴隷なんてそんな要るもんですかね」
その問いに、ファビオはわずかに笑った。
「居ないのは軍だ」
そう言いながら、窓の外へ目を向ける。
「ここはフォーゲルの領都だぞ。王国を名乗っていないだけで、実質それに近い規模を抱えている家だ。ならば当然、重臣も官僚も、大商人も居る」
淡々と続ける。
「戦場へ出ぬまま、金と暇を持て余している連中など幾らでもいるだろうさ」
部屋へ、短い沈黙が落ちた。
外からは酒場の笑い声が聞こえてくる。
しかし、その音はどこか空虚にも思えた。
前線では泥と血に塗れて死んでいく者たちが居る一方で、この街では人間そのものが商品として並べられ、欲望の対象として消費されている。
しかも、それが特別異常なものとして扱われている様子もない。
戦争が長引いた結果、生まれた需要なのか、あるいは最初からこういう土地だったのか。
ファビオにはまだ判断がつかなかった。
だが少なくとも、この街が多くの犠牲の上で回っていることだけは理解できる。
ニコが口を開いた。
「若君、如何なされます。しばらく腰を据えて様子を見ますか」
だが、ファビオはゆっくり首を振る。
「いや、軍が居ないのであれば、ここへ長居しても見えるものは限られそうだ」
椅子へ背を預けながら続けた。
「下手に居座って顔を見られても面倒だ。ここには、俺を知っている者が居ても不思議ではないからな」
「では、次はどちらへ?」
「商業都市ハーゼルフェルトへ行ってみるか」
ファビオは迷いなく答える。
「話に聞く限り、フォーゲルの本当の意味での中心はそちらだろう。軍の居ない軍都など、所詮は半端な姿に過ぎん」
するとエンゾが、待ってましたとばかりに身を乗り出した。
「なら若君、明日にでも発つとして、今夜くらい街で飯でも食いませんか?」
「……ほう?」
「せっかくフォーゲルの領都まで来たんです。少しくらい見て回りましょうや」
その言葉に、ファビオは小さく笑う。
「……そうだな。フードでも被っていれば、そう簡単に顔も割れまい」
「そう来なくては!」
エンゾが嬉しそうに立ち上がる横で、ニコが呆れ半分に肩を竦める。
「やれやれ。この二人、結局こういう所は似た者同士なんですよね」
そうして三人は、夕暮れの街へと繰り出した。
シュタインブルクは景気が落ち込んでいるとはいえ、それでもなお巨大都市だった。
大通りへ出れば、人の流れは絶え間なく続いている。
露店の明かり代わりに焚かれた火が夜気の中で揺れ、肉の焼ける匂いと酒の臭いが入り混じる。
酔った笑い声に怒鳴るような客引き。そしてどこか荒れた熱気。
だが同時に、それでもなお街として回り続けているだけの力がある。
そんな雑多な熱気だった。
三人は人混みへ紛れながら、通りをゆっくり進んでいく。
すると途中、不意にエンゾが視線を横へ向けた。
「あれ、奴隷商ですかね」
通りの端を、小規模な隊商が進んでいた。
この時間に門へ向かっているということは、恐らく夜のうちに街を出るつもりなのだろう。
「この時間に出ていくとはな。明日の朝まで待てばいいものを」
エンゾが不思議そうに言うと、ニコが隊列を観察しながら口を開く。
「馬車二台に護衛七。奴隷は……十二人ですか。規模としては小さな奴隷商でしょうね。宿代を惜しんだのでしょうか」
「だろうな」
ファビオも視線を向ける。
「確かに、さっきエンゾが話していた内容とも一致する。身体付きの良い男ばかりだ」
縄で繋がれた男たちは、誰も痩せてはいなかった。
日に焼け、傷を持ち、肩幅も広い。
武器こそ奪われているものの、その立ち姿には兵士特有の空気が残っている。
敗北し、捕らえられ、売られる立場になってなお、完全には折れていない。
そんな雰囲気だった。
「あれは農民崩れじゃありませんね」
ニコが静かに言う。
「恐らく、捕虜として確保したナユリ兵でしょう」
「やっぱりそう見えるか」
ファビオも頷いた。
「仕入れて、他所へ流すのだろうな」
するとエンゾが不思議そうに眉を寄せる。
「でも、あれだけ使えそうな連中なら、普通に労働力として抱えた方が良くないですか?」
「善し悪しは別だが、危険も大きい」
ニコが答える。
「元兵士ということは、集団行動も戦い方も知っているということです。しかも相手は、ついこの前まで敵として戦っていた連中ですからね。数を纏めたまま置けば、反乱の火種になりかねません」
「だから他所へ流す訳か」
「ええ。それに、大手の奴隷商は大量に纏めて扱います。こういう半端な数の捕虜は、小規模な商人が安く買い叩いて別の土地へ流す方が早いのでしょう」
「なるほどなぁ……」
エンゾは感心したように頷く。
「勿体ない話だ。普通に兵として使っても、かなり強そうだぞ」
隊商を見ていたファビオの視線が、列の最後尾で止まる。
「……いや、一人だけ妙なのがいるな」
二人もそちらを見る。
最後尾を歩く男は、他よりさらに一回り大きかった。
坊主頭で、異様に分厚い首。
縄を引かれながら歩いているにもかかわらず、その歩幅だけで周囲の空気を押しているような圧迫感がある。
そして何より、頭から顎へかけて四本の大きな傷跡が刻まれている。
「あれは……」
エンゾが思わず呟く。
ただ、ニコはすぐに気付いたようだった。
「恐らく、重犯罪奴隷兵ですね」
「重犯罪奴隷兵?」
「ナユリ王国の制度ですよ」
ニコは小さく頷く。
「激戦地では、正規兵の前へ重犯罪者を並べ、半ば捨て駒のように突撃させるらしいです。その際、区別用として顔へ傷を刻むとか」
「そんな連中が役に立つのか?」
エンゾが露骨に顔をしかめる。
「逃げたり裏切ったりするんじゃないのか」
「当然、戦場までは徹底管理されるそうです。逃げれば即処刑。ですが逆に、生き残れば恩赦が与えられるらしい。しかも強制徴用ではなく、自薦形式だとか」
「自分から行くのか……?」
「死罪を待つよりは、戦場で生き残る方へ賭けるのでしょう」
そう答えるニコの横で、ファビオは依然として最後尾の男を眺めていた。
「……なるほどな」
小さく呟く。
「あれは化け物だぞ」
「化け物?」
「戦場で死に損ね続けた人間特有の空気をしている。恐らく、相当数潜っている」
ファビオの声には、警戒とも感心ともつかない響きが混ざっていた。
「ナユリも、中々面白い制度を作る。ああいう人間が本当に混ざってくるのであれば、一概に悪手とも言えん」
奴隷商隊は、そのまま夜の門へ向かって消えていく。
縄で繋がれた男たちは、一度も振り返ることなく歩き続けていた。
その背中は、まるで戦争そのものが形を持って街を横切っていくようにも見えた。
そして、その光景を見送りながら、ファビオは改めて理解する。
この街の繁栄も、夜の喧騒も、鍛冶場の火もすべては戦によって支えられている。
人を殺し、人を奪い、人を売り飛ばすことで回っているのだと。
「……さて」
やがてファビオは視線を外し、小さく息を吐いた。
「俺たちまで突っ立っていても仕方あるまい。路銀に余裕がある訳でもないしな。飯屋へ入るぞ」
「高い店は禁止ですよ、若君」
「分かっている」
「いやぁ、でも折角なら肉くらい食いましょうや」
三人はそんな取り留めのない話を交わしながら、再び人混みの中へ紛れていく。
夜のシュタインブルクは、火と喧騒と欲望に照らされながら、更けていった。
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