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1話 南 周 JKデビューします!

初日は2話同時投稿、その後は試験的に毎日同じ時間に1話ずつ投稿の予定。

 「はっ、はぁっ…!!」


 住宅街の中を全力疾走で駆ける私。耳に聞こえるのは絶え絶えで新鮮な空気を貪り続ける私の呼吸の音と学校指定のローファーがアスファルトに当たる音。


─そして私の後ろから聞こえ続ける、金属をアスファルトに引きずる、聞き馴染みのない耳障りな大きな異音。


 後ろを見れば音の主は探さなくてもすぐに見える。


 身長は140センチくらいで子どもの見た目をしているけど、所々もやもやしているような、揺らいで見えるような感じがしてはっきりと人の形はしていない。それに確実に“それ”の正体がヒトではないことは教えてもらっていて、今更改めて確認するまでもないけど絶対に普通じゃないことが1つ。


 “それ”の両腕が─正確にはひじの辺りから鎌みたいになっている。仮にそうだとしてもあり得ないけど、手術をして取り付けられたものなんかじゃなくって鎌の根本に肉が見えるから多分元からそんな形なんだと思う。


 「はぁっ、もうっダメっ…!まだっ、“着かないのっ”……!?」


 住宅街の中で、明らかに様子のおかしい“化け物”に追いかけられている状況。普通なら誰かが通報でもしてくれるけど今それは意味がない。


 私は限界を伝えてくる足の訴えをできる限り無視して目的の場所に向かって文字通り死に物狂いで走る。


 私を助けてくれる、後ろから迫りじわじわと距離が近くなっている“それ”─妖怪を退治してくれる彼が待っているあの場所に─。


─────────


 「あまねぇ!こっちこっち!」

 「そんな引っ張んないでよぉ、制服伸びちゃう」


 この辺りの地域ではそこそこ人気のある高校の入学式の日。私、南 周は友達のゆいちゃんとかなちゃんと一緒に学校の正門で写真を撮るため、制服の袖を引っ張られるようにしてあっちに行ったりこっちに行ったりバタバタうろうろ。


 「すみませーん!そこ通りまーっす!!」


 掴んでいた袖から私の手に持ち替えたゆいちゃんは私を引っ張ってどんどん先に進み続け、他の新入生がつくる人だかりに声をかけて私たちが通る道を切り開いていく。


 モース?モーセ?そんな名前の人が両手を広げたら海が二つに分かれた。みたいにゆいちゃんはどんどん歩いてく。それに引っ張られる私と、私よりもほんの少しだけ後ろからかなちゃんがついていく。


 2人とは小学生のころからの友達で、ゆいちゃんは小さいころから男の子みたいに元気いっぱいで私たちの他にもたくさんの友達がいるみたい。かなちゃんは中学生の時から本が好きになったみたいで、いつの間にかにメガネを掛けて「ザ・文学少女!!」って感じ。


 ゆいちゃんが引っ張って、私とかなちゃんが引っ張られるのがいつもの私たち。今回もゆいちゃんの提案で3人一緒に校内を巡りながらセルフィ―を撮ってる。正門で写真を撮り終えて校内に色々設置されてるらしいオブジェ?モニュメント?を見て回る。


 「次あれの前で撮ろうよ!」

 「いいよぉ、誰から撮る?」


 かなちゃんが指した先には鉛筆とか消しゴムとかがおっきくなった、トリックアートみたいなオブジェの群れ。文房具の隣には学校指定のバッグとか、バスケットボールのボールチェーンとか、かわいい物がたくさんあった。


 「アタシが撮るから先ふたりであのバッグのとこ行って!」

 「おっけー。ほら、こっち」

 「うん。─この辺?」

 「ん~、そこだとなんか違う…?もうちょいあまねが奥かな?かなはそのまま!」


 「あーでもない、こーでもない」と頭を悩ませるカメラマンゆいちゃんの指示に従って私たちは立ち位置を何度も変えてより盛れるセルフィ―を撮れるように調整。


 「わかった!あまねがそこで、そのバッグに寄りかかるみたいにしたらいいんだ!」

 「こう?」

 「んー…そう!じゃあ撮るよー!!」


 ポーズ指定の通りにバッグによりかかっている様に見える位置でポーズをとる。離れたところでもテンションが上がってるのが伝わるゆいちゃんが何度もスマホの画面を押してシャッター音を響かせる。…連写しすぎじゃないかな?


 「おっけー!!次アタシだから…かなお願い!」

 「はーい。私ので撮って後で送ればいいよね?」

 「それで!てか、かなの方が画質いいんじゃない?」


 私とかなちゃんを撮り終えたゆいちゃんが順番を交代。「私はいつまでこのポーズでいたらいいんだろ、バッグのそばじゃないから周りの人から見られているような気がして恥ずかしくなってきたんだけどなぁ」なんて考えながら次のカメラマンの指示を届くはずない距離から目で急かす、そんな私でした。


────


 「─にしてもすごいよね!あんなデッカいのいつ作ったんだろ!!この写真の花とか全部本物でしょ⁉…センパイたちすっごいねぇ」

 「たしかに、正門のアーチだけでも凄い人だかりだったよね」

 「そーそー!アーチもでっかかったよね!なんか制服をでっかくしたオブジェもあってさ、そういうテーマパークみたいだったもん」


 私たち3人は運よく一緒のクラスになれたみたいで、教室の角の方だった私の机に集まってさっきたくさん撮ったセルフィ―を見返しながら校内にあったオブジェの話で盛り上がる。


 「なんか私だけすっごい後ろでポーズとってたからめちゃくちゃ恥ずかしかったんだからね!?後ろ通る人が私のこと見るからなんか変なことしてないか怖くなったもん」

 「だって周がそのまま私たちの横に並んでもなんか違うんだもん!それに小さくした方がいいんじゃないの?」

 「う…それはそうだけどぉ」

 「それにああいった写真撮るとき『でっかい物を普通の大きさで使う巨人みたいな撮り方』とか『物の後ろでポーズとって小人みたいにする』のがよくある、というか想定でしょ?周の場合は…巨人になる方はわざわざ撮らなくてもいいじゃない?なら物より遠くに立つしかないじゃん?」

 「やだなぁ、そんな人を巨人みたいに。失礼だよ?」


 私たちの間では何度もやってるやり取りだからお互い遠慮なしに話すし、私もちょっととぼけてみる。


 「どの体格でそれを言ってんだよ」

 「この体格だよ?」

 「でかいって」

 「そうなの!?地元じゃ別に大きくないのに?」


 わざと大げさにリアクションして、ゆいちゃんが重ねてツッコむ。


 ─小学生の頃は全然そんな様子はなく、お母さんもお父さんも目立つほど背は高くなかったのに、中学生の途中からぐんぐん伸び始めた私の身長は去年の身体測定時点で170センチ後半に差し掛かっていた。そして今は多分180センチは十分ありそうなくらいの身長。これが写真を撮るとき私だけ手間取った原因の1つ。


 昔は私も「かわいい系」「小動物系」なんて言葉が似合う女の子を夢見てたのに、今となっては良く言って「アスリート体形」「モデル体型」、悪く言えば「ガタイが良い」「女の子らしくない」。とはいっても成長しちゃった以上どうしようもないし、なんなら別にこの身長についてネガティブに考えてることはない。寧ろゆいちゃんもかなちゃんも「待ち合わせの時とかすぐ見つかるから助かる!」なんて好き勝手言うけど、一回も私を避けたりしないでくれているから私も気にしないで過ごしていられる。


 なるべく気にしないようにしているし、数週間もすれば周りの人も慣れるとはいえ、やっぱり初めて私を見た人は驚いたり、興味があるような感じで私のことを見てくる。私だって同じくらい背が高い女の人を見たらきっとびっくりして見ちゃうかもしれないから、色んな人から見られるけどいちいち反応しない。


 「かなちゃんは言ってくれるよね?『周は別に大きくないでしょ、全然小さいよ』って」

 「去年何センチだった?」

 「170後半でした!」

 「…私はなにも言わないよ」

 「ひどくない!?…なんか年々かなちゃんが私たちに冷たいよぉ」

 「だよね!?かなはもっと私たちにあったかくすべきだよね!昔はあんなにノリノリで『わたしが一番二重跳びきれいにできるもん!!』なんていってたのに─」

 「言ってない」

 「「──!!」」


 大げさに息を呑んでおふざけを続ける私とゆいちゃん。若干大人っぽい反応だけどそれでも会話に参加してくれるかなちゃん。こんな感じでこの後も何回も話題を変えて話続けて、─担任の先生が来てからもずっと話していたから軽く注意されてしまいました。


────


 入学式の日からある程度経ってなんとなくクラスメイトの子たちと知り合ったくらいの頃、いつものようにゆいちゃんとかなちゃんと一緒に話してると、なにか視線を感じたような、視界の端で何かがちらついたような気がした。


 「──?雪だるま…?」

 「雪だるま?どこ?」

 「あそこ、教室のドアのとこ」

 「…なくない?かな、見える?」

 「…私にも見えないけど」


 私には教室と廊下を隔てるドアの辺りにとっても小さな雪だるまが見えるけど、なんでかゆいちゃんとかなちゃんには見えてない。


 5センチもないくらいの大きさで、腕も顔もある。それにペットボトルのキャップみたいな青いものを帽子みたいにしててなんか可愛い。


 「ほら、青い帽子被ってすっごい小っちゃいのあるでしょ?」

 「…やー、ない!見えない!」

 「え~?ほら、あそこだって」


 小っちゃな雪だるまを指さして2人にも見てもらおうとしてるのに、なんでか2人は上手く見つけられない。確かに小っちゃいけどそこまで見つけられないほどじゃないし全体的に白色の雪だるまだから目立って見えないはずはない、と思う。


 「─ん!?次数学じゃん!はやく移動しなきゃ!」

 「うそ!?教室どこだっけ、てか宿題あったっけ」


 携帯の時計を見て慌てたゆいちゃんに連れられて急いで教室を移動する準備をする。授業によっては1クラス全員で同じ内容をやるんじゃなくって成績でクラス分けがされる。っていっても私たちはここでもやっぱり三人一緒なんだけど。

かなちゃんは私とゆいちゃんより数学が得意なはずだからもしかしたら合わせてくれてるのかもしれない。私たちが解けない問題もいつの間にかに解いてて暇そうにしてるし。


 次の授業まで後4分くらい。教室まではちょっと遠いから小走り気味じゃないと間に合わないかも。


 「─“これ”じゃない?周が見つけた雪だるまって」


 教室を出るとき、かなちゃんがさっき私が自分の席から指さした所で雪だるまを見つけたみたいで私たちに知らせる。


 「…ん?こんなだったかなぁ?」


 かなちゃんが拾って私たちに見せたのは私が確かに見たはずの立体的な雪だるまじゃなくってメモ帳みたいなサイズの紙。それに私が見たデザインの雪だるまの絵が描いてある。

 てっきり私が見た立体の雪だるまをようやく見つけてくれたんだと思ったから、予想と違う物が出てきてほんのちょとだけフリーズ。


 「紙に描いてあるの見てたってこと?…なんだっけ、立体的に見えるあれ」

 「トリックアート?」

 「それ!…でもこの絵別にトリックアート感ないし、席からじゃ見えにくいんじゃない?」

 「えぇ~、そう言われても私にはこの雪だるまが絵じゃなくってちゃんとあるように見えたんだよ?」

 「よちよち、あまねちゃんはおめめが良いからね、トリックアートっぽく見えちゃったんだよねぇ」


 かなちゃんが幼稚園児に話すみたいに弄ってくる。ゆいちゃんから弄られるのはいつもの事だからさらっと流せるけど、かなちゃんの場合はその1回が強いからダメージが大きい。それに絶対に言い返せないタイミングでしか仕掛けてこないからかなちゃんに弄られたら泣いたフリをしてごまかすしかない…!でなきゃしばらく揶揄われる!


 わざとらしく泣いたフリをするとそこで弄るのはやめてくれるし、「たしかに私達のとこからじゃ微妙に見えにくかったのかもね」とフォローを入れてくれる。


 ちょろいね。


 「雪だるま解決!ほら、さっさと教室行くよ!!」


 ゆいちゃんを先頭に私たちは急いで教室に早歩きで移動。なんとなく気になったからかなちゃんから雪だるまが描かれた紙を受け取って立体的に見えた疑問と一緒に制服のポケットに保留。


 ─それを思い出したのは放課後、あの不思議なクラスメイトと知り合った時だった。

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