表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

116/118

第114話 永遠の約束(★サリオン視点)

 黒曜城では、ババとグレースが僕たちを迎えてくれた。

 神核炉が起動した影響は北端のこの地にも届き、瘴気の森に棲む魔物たちも大騒ぎしていたらしい。 

 彼らは結界を張り、少ない人数で城を守り切ってくれた。


 帰還した僕たちの姿にババは一瞬喜んだが、すぐに僕の腕で眠るカナリヤに気付いた。

 彼女は暫く絶句した後、苦々し気に呟いた。


「本当に、どうして……みんな、この老いぼれより先にいっちまうのかね」



 僕はカナリヤの身体を、彼女の部屋へと運んで寝かせた。 

 それから、リュミエやルージュたちに頼んで彼女の身支度を綺麗に整えて貰った。


 悲しみに沈み込むよりも、僕にはやるべきことがあった。

 それはもう、黒曜城へ帰路につく途中には決意していたことだった。

 


「僕はやる。誰がなんと言おうと、絶対にやるぞ」


 魔物たちの集った大広場で、僕は宣言する。

 暗い表情をした彼らが、ギョッとした様子で顔をあげた。


「もう一度、カナリヤの死体人形を蘇らせる」


 彼らは僕の言葉を、ある程度は予想していたのだろう。

 しかし、それに手放しで賛成する者は誰もいなかった。


「陛下、お気持ちはわかります。ですが、一度目の蘇生でカナリヤ様が意思を持ったのは全くの偶然。その理由は、いまだに解明できていません」


 リュミエが声をあげた。


「もしも、カナリヤ様が意思を持たない人形として動き出したら……」


 彼女は心配しているのだ。

 カナリヤが意思のない人形として蘇生して、僕が傷つくことを怖れている。

 他の皆も同じ思いなのだろう。


「構わない。もしそうなっても、僕はカナリヤを愛し続ける」


「陛下!」


 耐え切れずにヴァルクも声を挟んだ。

 けれど、僕は構わずに叫ぶ。


「このまま、何もしないでいるなんてできない!」


「陛下。せ、せめて、もう少し蘇生の条件を研究してからにゃ」


「カナリヤが動いている間にあれだけ調べても、分からなかったのに? 今から研究したって、成果が出る見込みはない」


「しかし陛下、陛下御自身も、今は疲弊していて」


「疲れていたって蘇生は出来る。そもそもカナリヤがこんな状況で、のんびり静養なんて無理だろう」


「ああもう。ルージュたちも何か言ってやってくれにゃ」


 僕を説得しようとして頭を抱えたミュラとノクスが、ルージュたちに話を振る。

 三羽のカラス娘はじっと身を寄せ合って話し合いを見守っていた。

 彼女たちは不安そうに瞳を揺らしながらも、長い沈黙の後、ぽつりと呟いた。


「ルージュは……、カナリヤ様に、戻ってきて欲しいです」

「ブルーもです」

「ジョーヌもです……」


 その言葉に他の魔物たちが息をのむ。

 それは全員の、共通の願いに違いなかった。


「頼む。やらせてくれ。……自棄になっている訳じゃないんだ」


 僕は改めて、リュミエたちへ真剣な顔で告げた。


「だけど、このままでは終われない」


 カナリヤは最後まで、諦めずに戦ってくれた。

 ならばその夫である僕が、じっとしていることなんて出来ない。


「失敗する可能性だって勿論、分かっている」


 それはカナリヤの永遠の喪失を意味する。

 挑戦しなければ、未来への期待だけは残り続ける。

 でも、それでは彼女に手が届かない。


「それでも、どうなっても、僕のお嫁さんはカナリヤ一人なんだ!」



 ――僕の言葉に、それ以上反対する者はいなかった。

 そして次の満月の夜に、カナリヤの蘇生を行うことが決まった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ