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エターナル・ストーリーズ  作者: 燐鏡 剣斗
Chapter6 「Shadow Spirit」
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66話目 「ディストーション・ブレイカー(後編)」

どーも、作者です。


最近寒くなってきましたね…

体調に気をつけてお過しください。


では、どーぞ。

「どうした?かかっててこないのか?私はそんなに気が長くない方なのでな、待っててやれるのは後2、3分といったところだぞ?」

ブリュンヒルデは槍をひゅんひゅんと振り回し槍で風を切る。

その一振り一振りに気迫を感じる。けして適当に槍を振り回しているわけではない。

振り回しているこの一瞬一瞬でも常に攻撃に対して気を配っている。

何も考えず手を出せば確実にブリュンヒルデの槍の餌食になるだろう。

慎重に隙を窺う智恵と桜月。額には冷や汗が流れていた。

「つっきー、どうしよう…」

「ちーちゃん、私が前に出るから援護頼むね。死なないようにだけはするから…!」

桜月は魔力を手に持った杖に込め、凝縮していく。杖の先端の宝石に魔力が満ちていく。

「頼むよ、『逢月蒼宝杖』…!私の力に答えて!」

「ほう、それが悠斗とやらからもらったレジェンダリークラスの武器か。確かにレジェンダリークラスを名乗るほどの力はあるようだ。」

千代は振り回していた槍を地面に立て、桜月をじっと見つめる。

「ふっ、よく見れば可愛らしいお嬢さんだ。私も君みたいに可愛い格好をしてみたかったものだ…」

「と、突然何を…?」

「気にするな、私のちょっとした戯れ言だ。これから正気に戻りこの記憶を忘れる君たちにとっては意味のない言葉だ。」

そういうと千代は再び槍を持ち上げ、左手と右手でしっかりと握る。

「さて、準備はいいかな?可愛らしいお嬢さん2人を傷めつける趣味はないが、この身体の持ち主の意向なのでな。君たちをここで倒す…というよりも止めさせてもらう。」

そして、千代は桜月と智恵の前から消えた。比喩ではなく、本当に目の前から忽然と姿を消したのだ。

智恵はとっさに魔導書を開き部屋全体に魔法陣を展開する。

「(どこっ…!)」

智恵は探知を行う。部屋全体に張り巡らせた感知魔法で千代の居場所を探ろうとする。しかし、千代の場所は見当たらない。

「魔法に検知されない類の術式?!」

「違うな、感知が『できない』のではなく、『追いついていない』のだ!」

ふっ、と千代が智恵の前に現れる。そして、千代は大きく槍を振りかぶり智恵に向かって振りぬく。

「ひっ」

智恵はとっさに後ろに下がろうとするが、槍のリーチが長く斬撃の範囲から逃げることはできないだろう。

「嫌っ!」

智恵は手に持っていた魔導書に魔力を大量に流し込んで千代の方へと投げる。

許容魔力量を超えた魔道書は暴走し、爆発を起こそうとする。だが、

「甘い!」

千代は魔導書を掴み、魔力を吸い取る。許容範囲に戻った魔道書は暴走を止め、止まる。

右手一本で槍を支えているとはいえ、千代の筋力とブリュンヒルデの技術。左手を槍から手放し、空中に浮いていた魔導書を掴んだとしても槍の速度は下がることはない。

「ちーちゃん!」

近くにテレポートした桜月が千代の槍を魔力のこもった逢月蒼宝杖で打ち返す。

キィンという甲高い音がフィールドに鳴り響く。そして、そのぶつかった時の衝撃で3人共、槍と逢月蒼宝杖がぶつかった場所から弾き飛ばされる。

ずざざという音とともに壁際まで押し返される千代。槍を地面に付きたて滑る速度を落とす。

桜月は智恵が吹き飛んだ方向へ先回りし、智恵を受け止めていた。

「つっきー、ありがとう」

「ちーちゃんが怪我したら大変だからね。このくらいお安い御用だよ!」

むふー、と胸を張って自慢気に立つ桜月。智恵はその姿を見てふふふと笑っていた。

「(なぜだろうか、すごいもやもやする…)」

千代はそんな2人を見て何か違和感を感じていた。

彼女たちは間違いなく操られている。目も今までの奴らと同じようになっており、シャドウスピリットなのは間違いない。

しかし、それにしてはあまりにも感情が豊かでまるでいままでどおりのような行動だ。

陰ながらずっと千代を見守り、大体の状況は把握しているつもりのブリュンヒルデだったのだが、そこに関しては疑問が多かった。

見た感じ演技をしているわけでもなさそうだ。お互いがお互いを本心から心配している。

もしかしたら、そこに隙があるのかもしれない。未来の悠斗や未来の千代が知り得なかった決定的な隙、弱点が。

「(シャドウスピリットは感情を完全に縛ることはできない…いや、むしろ縛るのではなく開放しているのか?人の心の闇の部分を増幅して開放しているのか?)」

よくよく考えて見れば今まで戦ってきた敵もそうだった。

相手はこちらを殺す気でかかって来てはいるが、自分の気持ちを曲げているようには見えなかった。

誰もが自分の技を使い、自分の戦闘スタイルを貫く。本当にただ殺すだけならばいくらでも方法はあったはずだ。なのにもかかわらずあくまで正々堂々と正面から戦いに来る。

「はははははははは!なるほど、ならば私はこうすればいいか!」

千代は、ブリュンヒルデは唐突に大声で笑い出す。

楽しそうに。殺意を全く感じず、違和感も感じず。ただ楽しげに、楽しそうに笑った。

「なるほど、なるほど。こうなってしまった以上はもう君たちには私から手を出すことはできないな。」

ブリュンヒルデは槍先を地面に下ろす。

「さぁ、来い。君たち2人のチームワークというやつを見せてみろ。そして、私を打ち破ってみせろ!」

ブリュンヒルデはわざと挑発するように2人に向かって叫ぶ。

「(今、君たちを開放してやれる方法がわかった。不本意だが、この戦法で行かせてもらうぞ?)」

ブリュンヒルデは力を抜いたように見せて相手に悟られないように光速で移動できるよう準備をしていた。

「(勝負は一瞬、失敗したら…ま、後はあの悠斗とやらに任せるとしよう)」

ふっ、と息を吹き抜く。身体から力を抜き、集中する。ほんの一瞬、その一瞬の隙をただじっと待つ。

槍先が地面に当たり、コーンという音を響かせる。その音が鳴るとともに、動き出す。

「「『レインボー・シューティング・ザッパー』!」」

桜月が高く飛び上がり、空中でピタッと止まり、宙に作られた魔法陣を蹴り加速しながらブリュンヒルデの方へと杖の先を構えて突撃してくる。

そして、桜月が蹴った魔法陣から基本6属性の魔力が桜月の周りに纏わりつき、

桜月を属性の膜で包む。その姿は、さながら虹色に輝く流れ星のようだった。

「ハァァァァァッッッッ!」

ブリュンヒルデは槍を握り直し、地面をおもいっきり蹴って一瞬で飛び出す。

そして、桜月の杖をすれすれの所で回避し、魔法陣を創りだして披露していた智恵の腹の部分を光速移動の一瞬ですれ違いざまに槍で切り裂く。

「きゃぁっ」

切られた衝撃でくるりと一回転して地面に倒れる智恵。そして、倒れると同時に後方で地面を砕く音とともに大きな地響きが起こる。

だが、ブリュンヒルデはその瞬間を逃さなかった。

もう一度地面をおもいっきり蹴り、舞っている砂埃の中へと入り込む。

杖を地面から引きぬき、体制を立て直す桜月。だが、砂埃のせいで敵がまともに見えなかったことが仇となってしまった。

突然腹部に強い痛みとともに斬撃が入る。

「きゃっ」

桜月も智恵と同じようにくるりと回転して地面に倒れ込む。

そして、砂埃が一瞬で吹き飛ばされ壁際にずざざざと滑りながらブリュンヒルデが現れる。

「っ…はぁ…はぁ…これはきついな、身体が思っていた以上に動かない…だがまだまだ成長の余地はあるということか…」

息を切らしながら槍を杖代わりにして立つブリュンヒルデ。

「(でも、これで…)」

ブリュンヒルデは2人を切るときに魔力を槍に込め、斬りつけた際に直接2人の体内へ魔力を送り込んでいた。

その魔力は暗に対する属性である聖の魔力だった。更に、特殊な性質を持っており、暗に反応し庵を吸収して増幅するという性質があった。

ただ、この性質を付与するのに膨大な魔力を消費する必要があり、ブリュンヒルデが憑依する際に使用できる魔力どころか、千代の身体本体からも魔力を消費してしまった。

そして、魔力がなくなった以上ブリュンヒルデは憑依し続けることができない。

「(ふぅ、役目はここまでかね…ま、後はあの悠斗ってやつがなんとかしてくれるだろう…)」

ブリュンヒルデの精神が千代から離れていく。

「(魔力が回復するまではしばらくあんたの傍で見守ることしかできないけどね…ま、安心しな。いつでも助けてやることはできるからさ。)」

そして、完全に分離した・・・その瞬間だった。

倒れていた桜月がバッと起き上がり、そのままこちらへ飛んできたかと思うと、霊体であるはずのブリュンヒルデの首を掴み、地面に叩きつける。

「ぐあっ!」

突然首を捕まれ地面にたたきつけられた挙句、首を締められている。

霊体になってから今までこんな状況を経験したことがないブリュンヒルデはパニックに陥っていた。

「は…な…せっ…!」

苦しそうにもがき、桜月の腕を掴んで離そうとするが桜月の腕はピクリとも動かない。

「くっ…そ…!」

「ははははは、いやぁ、傑作傑作。まさか一番迷惑な戦女神様がこんな簡単に捕まるとはねぇ…仕事が楽で助かりますよ、ほんと。」

奥の扉から黒いローブを纏った人物が入ってくる。

「き…さま…、ラスト…とやら…か!」

「おぉ、私の名前覚えててくれたんですかぁ?かの有名な『ディストーション・ブレイカー』さんに覚えててもらって光栄ですねぇ!」

ラストはブリュンヒルデの前であざ笑うようにわざとらしく言う。

「あぁ、安心してください。今の私は寛大ですからあなたを消す気はありません。どちらかと言うと、興味が有るのは彼女なんですよぉ…!」

ラストは意識がない千代の方へと歩いて行く。

「んん~!やはり彼女はすばらしい…!『器』として完成されている!これほどまでに私に合う器がほかに存在するのだろうか?いや、ないだろう!」

顔は見えなかったが、ラストが笑っているのは分かった。

「この女神のような身体…!気高いながらも純粋な精神…!本当に素晴らしい!」

「きさ…まぁ!その汚い手で、千代に触るなぁ!」

ブリュンヒルデは怒りで桜月をはねのけ、落ちている槍を魔力で拾い上げラストへ向かって振りかぶる。

「邪魔だ、消え失せろ!」

ラストはブリュンヒルデに向かって腕を一振りした。ただ、それだけの動作なのにもかかわらずブリュンヒルデは大きく吹き飛んだ。

「ぐああっ!」

ドサッと地面に落下する。起き上がろうとするが、何故か身体が麻痺したように動かない。

「な、なぜだ…」

力を込めるが、身体が動かない。まるで行動することを身体が拒否しているかのように。

「さて、邪魔者も消えたし…その『身体』…頂くとしますか!」

ラストが呪文を詠唱すると、黒いローブに包まれた身体が分解され、黒いローブだけが地面に落ちる。

そして、霧状になったその体は、千代の中へと入っていく。

「やめろ、やめろ!」

悲痛な声で叫ぶが、その声は届かない。黒い霧は完全に千代の中に入り込んでしまった。

そして、千代は起き上がる。それはもちろん、千代の意志とは関係なく。

次回更新は11月13日です。

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