62話目 「サキュバスVS吸血鬼と人間のハーフ」
どーも、作者です。
段々メンバーが少なくなってきましたね…
では、どーぞ。
一方その頃5層へと進んでいた千代達一行。
メンバーが千代、大人千代、蒼汰、メアリー、サキュルとついに5人まで減ってしまった。
悠斗、アルス、エリスは後から追いついてくるのは予測できたが、メンバーが一層につき一人ずつ減っていく上相手はかなりの強敵揃い。
そうやすやすと次の層へ進ませてはくれないことから考えると後から合流するのはかなり時間がかかるだろう。
そうなると、現存のメンバーでこの先を対処していかなければならない。
そう考えると少し先が不安な千代。
主戦力の悠斗、大人悠斗が抜け更にマスターの内の1人、エリスまで抜けてしまっていた。
千代や蒼汰も実力的には申し分ないが悠斗という軸を失ったヴァイスリッターはかなり脆いだろう。
「私に、この先の戦闘を戦えるほどの勇気があるのだろうか…」
そうつぶやく千代。それは本心から漏れた言葉だった。
「だいじょーぶ、私も居るしそれに蒼汰だっているじゃない!」
その言葉に反応したように大人千代が千代を慰める。
「えっ、僕?」
唐突に名を呼ばれ驚く蒼汰。話の流れから自分が呼ばれるとは思っていなかったのであろう。
「そー、蒼汰。君は今や悠斗と肩を並べるほどの実力を持ってると言っても過言じゃないよ。悠斗の全力の戦闘についていけるのは君たち2人くらいだからね。」
「それでも、悠斗の固有能力は私達とは桁違いすぎる…」
「僕たちは技術面で追いつけているかもわからないのに固有能力の覚醒で更に差が開いてしまっているような気がして…」
「確かに、固有能力の面では劣っているかもしれない。でも、君たちに与えられた固有能力は、君たちが一番使いこなせるんだよ?」
その言葉は、単に言葉通りの意味だけを持っているのではなく、別の意味を持って発されているように感じた。
「使い…」
「こなせる…」
「そう。君たちが使うからこそ、本当の強さになるんだよ。それは今理解しなくてもいい。時間を掛けて意味を理解したらいいよ。その時に、蒼汰の能力は覚醒するよ。」
大人千代はにっこりと笑顔を見せ、蒼汰に言う。
そして、前へに振り返りドアの前に立つ。
「さて、次の敵さんは誰かな?」
ドアを両手で開き、中へと入る。もちろん、部屋の真ん中には一人立っていた。
消え去った時と同じ、服装。悠斗たちの世界でも共通である洋式の人に従う人が
着る服。一般的にはメイド服と呼ばれることが多い。それをまとい、立っていた。
いつものように、つま先までピンと意識を張り巡らせているかのようにまっすぐに立っていた。いつもと変わらず、まるでマスターの帰りを待っていたかのように。しかし、その目は赤く染まり、その瞳に映るマスターに殺意を向けていた。
チャームファンタジアのチームメンバーの1人、ラミア・バケット。
先程は気が付かなかったが、足元には2匹の狼が居た。
「あちゃー、これはまた厄介な敵に当たっちゃったね」
大人千代が残念、という感情を表にだして溜息をつく。
「ラミア…」
「マスター、申し訳ないですけど…ここで、死んでください…」
「それはいくらメンバーの願いでも、聞き入れることはできませんわ。私には、あなた達を救うという使命が残っていますの。」
「残念ですぅ…なら、せめて私の手で消してあげますぅ…」
ギラリと目を輝かせメアリーを睨みつけるラミア。その目には明確な殺意と怒りが篭っていた。
「ならば、ここは私が相手をしましょう。ラミアを救うにはそれしか無いですわ」
メアリーが前に出る。だが、それはサキュルによって止められる。
メアリーを止めた後、メアリーの前に出るサキュル。インベントリから魔道書と杖を取り出し、詠唱の態勢に入る。
「早く…行って。この魔法を詠唱したら、すぐ。多分…あの扉。」
サキュルが杖で指した扉が開こうとしていた。ラミアが明確な戦闘の態勢に入ったからだろうか。
「時間…稼げるのは一瞬。その間に、行って…。」
サキュルは杖に魔力を込めた状態で魔導書を開き、杖に込める魔力を増幅させる。
杖の先が青く輝き出し、冷気を纏う。そして、サキュルは詠唱する。
「『アイス・スノーゲイン』!」
杖先から大量の冷気が吹き出し、ラミアに襲いかかる。
「早く、今!」
珍しくサキュルが叫ぶ。その声に反応して、4人は奥の扉へと走っていく。
「サキュ、必ず戻って!」
「大丈夫…。私なら、無事に追いつける。」
最低限の言葉を交わし、4人は扉を抜け、姿が見えなくなる。
「大丈夫…、必ず…。」
杖から吹き出した冷気はラミアを襲い、装備から凍りつかせていく。
「これはやっかいですねぇ…」
ラミアはすぐさまその場から離れようとするが、足が動かないことに気がつく。
サキュルはラミアが最初は避けないと把握したうえで比較的ラミアの足元を狙って魔法を放っていた。つまり、足を凍らせてその場から身動きを取れなくしたのだ。
「次…。」
再び杖を構えるが、先ほどとは構え方が変わっていた。杖を後ろ向きに構えていた。それは、剣の構えの一つであるとされている居合の構えに似ていた。
その状態で地面に落ちていた魔導書を魔力で開き、詠唱する。杖の先に黄金色の光が集まり、魔力が集まるほどにその光の大きさが増していく。
「『ヘイル・ブレイダー』…!」
光が完全に集まりきった直後、勢い良く走りだし、力を込め魔力が溜まった杖の先でラミアに殴りかかる。
「そう来ると思ってたんですよぉ。」
落ち着いた様子のラミア。すると、ラミアの傍で座っていただけの狼が、ラミアとサキュルの間に入る。
「くっ…!」
サキュルは苦悶の表情をしながらも、思いっきり狼へ向かって杖を打ち付ける。
「ラミちゃん…私を、甘く、見過ぎ」
「ふえっ!?」
「吹き…飛べぇ…!」
サキュルは杖の先に溜まった魔力で狼を殴りつけたあと、その杖をラミアの方へ向ける。
「さっきのは…フェイク。本当は、こっち…!」
しっかりと、ラミアに照準を合わせ、放つ。
「『ホーリー・ジェネシス』!」
サキュルが構えた杖の先端から、貯められていた魔力が放出され一本のレーザーが至近距離でラミアに向かって放たれる。
超高密度の圧縮された聖の魔力で創りだされたそのレーザーは杖に引っかかっていた狼を完全に分子レベルまで融解させ、跡形もなく消し去る。
「まずいです!」
ラミアは凍っていた足を無理矢理溶かし、逃げようとするが一瞬反応を送らせてしまったせいでレーザーをよけきれず、まだ凍ったままでよけきれなかった左足とレーザーに当たってしまった左腕を持って行かれてしまう。
「っぁああああ!!」
悲痛な声を上げるラミア。左腕と左足を同時に持って行かれてしまった上、体の半分を失っていると同義レベルの痛さを感じているのだろう。
「ラミちゃん…もう、やめよ?」
それは、サキュルの本心からの言葉だった。いくら気だるげとはいえ、マスターの右腕。その実力はメアリーと同等レベルのものだ。ラミアとサキュルでは戦闘能力に差がありすぎる。さらに、ラミアの固有能力は戦闘向きではないのも戦闘能力の差をつける原因の一つだった。
「まだ、まだぁ…ぁぁぁぁ!」
「いくらごまかしても、その痛みは消えない。だから、もうやめよ?」
サキュルはもうこれ以上戦いたくなかった。いくら今は敵とはいえ、私がやると言ったとはいえ。チームメンバーがこれ以上苦しむ姿も見たくないし、苦しませたくない。
その思いから、サキュルはラミアにやめようと提案しているのだった。
「まだ…ですぅ…!私はぁ…必ずぅ…!あの生意気なマスターを…!」
「ラミ、ちゃん…」
「だから…!ここであなたごときに負けている場合じゃないんです!」
ラミアは残っていた右足でサキュルへ向かって飛びつき、右腕で地面に押し倒す。上からのしかかるように仰向けに倒れたサキュルに乗っかるラミア。右腕に魔力を込める。
「ラミ、ちゃん…!」
「あなたにはここで死んでもらいます~!」
魔力を込めた右腕で思いっきりサキュルの顔を殴りつけるラミア。
サキュルは身動きが取れず、思いっきり殴られる。すると、サキュルの口からこの世界に存在しないはずの『血』が流れだす。
ラミアの拳にはサキュルの口から出ている血が少しずつ付いていく。何度も何度も殴るごとに、拳に血が付いていく。
何度も殴られていくうちに、サキュルは動かなくなっていく。弱く、弱く動いていたはずの体が自然と止まっていく。だがそれに気が付かずラミアは殴り続ける。
だが、次第にラミアの拳から魔力が抜けていく。それとともに、目から水がこぼれ落ち、それがサキュルの頬を濡らしていく。ラミアの手は次第に弱くなっていく。何度も殴って赤く染まった手に、涙が零れる。
「何で…!何でなんですっ!悲しくないはずなのに、なんで涙がでるんです!」
気が付くと自然とサキュルを殴っていたはずの手は止まっていた。その拳は赤く染まりながらも震えていた。いや、拳だけではない。体全体が震えていた。
体の自由が効かない。それは、操られているからではなく、体自体が、魂が動くなと命令しているかのように。敵だ、殺すべき相手なのにそれを手に掛けることができない。
いくら動けと願っても、体は言うことを聞かずただサキュルの体の上で呆然とする。
だが、それでも目から流れる涙は止まらず、それどころか先程よりも多く流れていた。
「何で…っ!何でぇっ…!」
地面に赤く染まった手を打ち付ける。気が付くと自然と体が動いていた。感情に体が動かされたような感覚だった。
体の自由が効くことがわかり、とっさにサキュルを揺らす。
「サキュ…!サキュ!」
その言葉にサキュルは反応しない。何度揺らしても、何度言葉をかけてもサキュるの体はピクリとも反応しない。
「嘘だよね…!サキュ!」
悲痛な声で叫ぶ。誰か、助けて。サキュを、私の大好きな親友を!
「誰かぁっ!」
その声は、虚しく部屋を反響する。
「うぅっ…」
自分が手に掛けたのは分かっていた。操られていたなど言い訳にもならない。確かに自分の手で、自分の親友を手に掛けたのだ。そんな私が願ったところで、神様は助けては…くれない。
「お願い…!私はどうなってもいいから、誰か…!」
「その声、言葉、思い、願い。すべて確かに聞き届けたぜ?なんちゃって、かっこいいこと言える立場じゃねぇけどな」
唐突に後ろから聞こえる声。それは、6層から降りてきた人物の声だった。
「ったく、昔の俺とかアルスは何やってんだ。そんなに時間かかる相手でもねーだろ。エリスはまだなったばかりだし仕方ねーけどさぁ。おかげでお姫様2人が泣いちゃってるじゃねーか」
その人物は文句を言いながらラミアとサキュルの方へ歩いてくる。
「お待たせしましたお姫様。なんちゃってな?」
その人物は軽口を叩きながらも、最高の笑顔でラミアとサキュルの前へと現れた。
次回更新は10月20日です。




