58話目 「禁忌魔法『シャドウスピリット』」
どーも、作者です。
新章「シャドウスピリット」。
といっても、この章は殆どが仲間との戦闘です。
章を分けたほうが見やすいと思い、分けることにしました。
では、どーぞ。
「悠斗。」
7層へ向かって走っている途中、大人千代が大人悠斗へ問いかける。
「なんだ、千代。残ったアルスが心配か?」
「いや、アルスなら帰ってくると思ってる。そうじゃなくてさっきの…」
「『シャドウスピリット』か。確かに俺も気にはなった。いくら未来から来ているとはいえ禁忌の魔法を使える人物は限られてる。」
「私が知ってるうちだとあれを使えるのは…」
「俺も同じ考えだ、間違いないだろうな。だからといって情けを掛ける必要もないと思うぞ。」
心配そうにする大人千代とは対照的に淡々としている大人悠斗。
敵が誰か理解した上での発言だった。迷いがないのだろう。
「その、『シャドウスピリット』ってなんですの?」
突然、メアリーが大人悠斗へ質問する。
「『シャドウスピリット』か。そう遠くない未来のエターナルオンラインで見つかった禁忌魔法だ。没データの中から偶然見つかったらしい。」
大人悠斗は一冊の本を創りだす。
「本来没データを漁ることができるのはゲームマスターとマスターから許可が出た人物だけだ。ゲームマスターはお前らも知っての通り、咲夜。そして、マスターから許可が出た人物は6人。俺と千代、蒼汰、智恵、桜月ともう一人。」
大人悠斗は創りだした本をメアリーに投げ渡す。
メアリーはギリギリのところで危なげにキャッチし、その本を開く。
「な、なんですのこれは…!」
そこには、現在の技術では扱えそうにもない魔法の情報が大量に記されていた。
「『禁忌魔法事典』。許可を持ってないと本を読むどころか、所持するだけで規制対象となる。禁忌魔法の使用法、効果が載ってる。だが、正直チートレベルの魔力を持たないと詠唱の時点で魔力切れを起こすだろうな。」
大人悠斗は軽々と言ってはいるが、つまり持っているだけで犯罪を犯しているような代物をあっさりと創りだしてしまえるほどの権限を持っているということか。
「俺にとっちゃこれだけ禁忌魔法がある事自体が驚きだ。いくら没データから拾ってきてるとはいえ、考えついてそれを実装しようとした事自体がな。」
前を向いて走ってはいたが、悠斗はその言葉が嘘偽りない本心からの言葉だというのは分かった。
「まぁ、シャドウスピリットはその中の一つだ。お前たちは体力がつき、倒れた時リスポーンするのはノータイムか?」
その質問に、多くの人物が横に首を振る。
「リスポーンにはそれなりの時間が必要だ。それは画面の前でプレイしていた時も、今この世界に入ってる…のは現状昔の俺だけか。まぁいいや、とりあえずそのリスポーン必要な時間は一時的に本体が無防備になるんだ。そこを狙って奴は魔法を使った。それが『シャドウスピリット』だ。」
「でも、どうやってその無防備なとこに魔法を?いくら本体が無防備とはいえ、サーバー側で周りは一応保護されてるから簡単にはいかないと思うんだ…」
「それは禁忌魔法だからこそってやつだ。『シャドウスピリット』は無防備なプレイヤーに掛けることによって憎悪の心を増幅させ、意識的に精神を自分の支配下に置く。たとえそれが、画面の前でプレイしていたとしても強制的に精神をゲームの中に引き込み、操る。」
その言葉に、悠斗は恐怖を覚えた。
たとえ画面の前だからと安心していてもその魔法一つでゲームの世界に引きずり込まれ、操られてしまう。
それではまるで、操り人形のようではないか。
自分の意志とは関係なく、憎悪の心で仲間すら傷つける。
もし自分がそうなってしまったらと思うと、ぞっとした。
「この魔法のせいで関係ない人までゲームの世界に精神が入り込むことになっちまう。昔の俺みたいにな。だからこそ、禁忌の魔法として封印されてきたんだ。まぁ、今のお前らは将来こんな魔法がエターナル・オンラインに現れないよう努力してくれればいいだけだ。少しずつなら未来の修正は可能だからな。」
大人悠斗はメアリーに渡した本を返してもらい、本を燃やす。
「ま、いい感じに説明が終わったところで着いたぞ、7層だ。」
大人悠斗が指差す先には、大きな扉があった。
次回更新は10月4日です。




