57話目 「闇に囚われし者、シャドウスピリット」
どーも、作者です。
最近スマートフォンでの執筆を練習し始めました。
やはりPCに比べると書きづらいですが、
少しの時間にちょこちょこと書けるのがいいですね。
では、どーぞ。
「8層、か。道中はほとんど戦ってないとはいえついにここまで降りてきた…」
悠斗はしみじみと何かを思っていた。思い出すのはここに来るまでにあった色々なこと。
固有能力の覚醒、メンバーの離脱、新武器の銃、未来からの自分。
どれも今までに体験したことがない経験だった。
それらだけではなく、今までの障害をすべて乗り越えてきてここまで来た。
戦闘スキルもそれなりに向上しているはずだ。
「智恵…桜月…必ずクリアして戻るからな」
それは、先ほどいなくなったメンバー。突然の攻撃から守りきれなかった自分の責任もある。
そして、悠斗は8層の扉を開く。
ゴゴゴという音を立てながら開く扉。長い間閉じられたままだったのか、扉に重みを感じた。
それは、ここまで到達したチームがいない、ということを示していた。
そして、扉を開いた時待っていたのは広大なフィールドではなく、ちょっとした闘技場のようなフィールドだった。
その中心に、人影が一つ。
その人影は、フィールドの中心に剣を突き立てたまま微動だにしなかった。
悠斗たちは警戒を解くことなく、その人物の近くへ歩いていく。
近づくに連れ、その人物の正体が見える。
それは、先ほどいなくなったはずのルビーズ・マルクトだった。
だが、目は先ほどのパールと同じように赤くなっていた。
「やっと来たっすね、待ちくたびれたっすよ」
ルビーズは剣を地面から引き抜く。
「さぁ、俺と勝負するっす。勝てたらここを通すっす。」
ルビーズは剣を構える。剣を構えただけなのにもかかわらず、ルビーズの気迫に気圧されそうになる。
「ありゃ、魔力で強化されてるな」
大人悠斗が後ろからつぶやく。
「しかも魔術の類だな。相当なレベルの闇魔術だ」
いつの間にか悠斗の足元に魔法陣が展開されていた。
それは、大人悠斗が念のために展開していた防御魔法の方陣だった。
「大丈夫っすよ、話が終わるまでは攻撃する気は無いっすから。」
「そんな殺意むき出しの状態で言われても説得力ねぇよ」
「信用無いっすねぇ…」
「敵に操られてる人物を信用しろという方が無理な話だ」
「そこに気がつくとはさすがっすね。」
「そんだけ闇の魔力を感じたら流石に気がつく。」
大人悠斗とルビーズの2人で話しているが、周りはまったく意味がわかっていなかった。
「さて、そんなことより誰が俺と戦うっすか?俺に勝負を挑まないかぎりは俺はここを通す気はないっすよ。」
改めて剣を構え直すルビーズ。言動はいつもどおりだが、殺意は本物だった。
「そうだな、それじゃあ俺が「私が出よう」」
大人悠斗が出ようとしたが、アルスが前に出て大人悠斗を止める。
「マスター代理として、私がけじめを付ける必要がある。」
先ほど作ってもらった大剣を背中から引きぬき、構える。
「『湖の騎士にして右腕』」
固有能力を開放し、自信の剣術をマスタークラスまで使えるようにする。
一切手を抜くことはないという意志の表れでもあった。
「仲間を見捨てるようなことはしない。それは、悠斗から学んだことだ。だからこそ、私はルビーズ、貴様を止める」
ふっと地面を蹴りルビーズとの距離を詰め、一閃を叩き込むアルス。
だが、見切られていたようでその一閃はルビーズの剣によって防がれてしまう。
「その程度じゃ、俺の剣は折れないっすよ?」
「レジェンダリークラスの武器というのは本当に厄介だな…『カリバーン』…」
カリバーン。それはルビーズが持っているレジェンダリークラスの武器の事である。
レジェンダリークラスの武器は基本的にどの武器よりも基本能力が優れており、
さらに一つ一つに特殊能力が付与されている。
「俺の剣、『カリバーン』の強さは知ってるっすよね?」
「当然だ。治癒だったな」
カリバーンの特殊能力は治癒。致命傷さえ喰らわなければ一瞬で傷が治ってしまう。
「なら、俺に勝つ方法もわかってるっすよね?」
「一発でケリをつけろ、ということだ」
アルスは悠斗達のほうへ向き、言う。
「悠斗、ここは私に任せて先へ行け。アルスのことだ、多分扉は開いているだろう。」
「おっ、やっぱりバレちゃうんすね。でも、惜しいっす。正確には戦闘が始まると扉が開く仕様になってるっす。」
ルビーズはやれやれ、というふうなモーションを取った。
「それならなおさらだ。さぁ、行け悠斗!」
「負けんなよアルス!」
悠斗達はルビーズとアルスの横を抜けて8層を突破する。
「さて、ルビーズ。私は負ける気は無いからな。ここで貴様を倒して私も先に進む。」
「それができれば苦労しないっすよ。特に、マスターは一番戦力にならないんじゃないっすか?」
あざ笑うように言うルビーズ。
「貴様もか…メンバーがマスターを侮辱する行為がどれだけのことか分かって言っているのか」
「はっ、実力がないマスターを侮辱して何が悪いっすか?」
「貴様ァッ!」
アルスは思いっきり地面を蹴りルビーズへ突撃する。
ルビーズの剣へめがけて体験を振りぬく。
ルビーズはその剣戟を避け、隙だらけのアルスの顔へ突きを繰り出す。
アルスは剣を手放し左手の裏拳で剣を弾く。そして、右足をルビーズの顔へ向け振りぬく。
それをしゃがんで回避し、アルスの左足を掌打で弾く。
軸になっていた左足を弾かれ、バランスを崩しうつ伏せに倒れそうになるが、ルビーズの頭を掴みそれを思いっきり押して体制を立て直す。
そのまま剣を拾い、後ろへ下がる。ルビーズも地面に頭を打ち付けたが、すぐさま体制を立て直し剣を拾って後ろに下がる。
だが、アルスは攻撃の手を休める事無くバックステップの直後に前に向かって飛び出し、ルビーズの隙を突く。
ルビーズは突然の攻撃に対応できず、アルスに向かって突きを繰り出す。
だが、とっさの突きがアルスに当たるわけもなく突きは避けられ、大剣がルビーズの体に深々と刺さる。
「ぐっ」
アルスは剣を抜き、そのまま縦に剣を振り下ろしルビーズを切り捨てる。
「ぐあっ」
地面に膝をついたルビーズに向かってアルスは膝蹴りを繰り出す。顔を思いっきり蹴られたルビーズは膝をついたまま後頭部を地面に打ち付ける。
「まだだ」
その後頭部を地面に打ち付けると同時に、アルスは顔に向かって思いっきりかかと落としを決める。
ルビーズはそれを避けることができず、アルスの足と一緒に地面に顔が埋まる。
ミシミシと地面が音を立てながらアルスの足とルビーズの顔を吸い込んでいく。
アルスは足を上げるが、それでも手を緩めない。
「『王の審判』」
剣に魔力を込め、光を集める。そして、それを剣に集中し光の剣を創りだす。
そしてアルスは宙に飛び上がり、ルビーズの埋まっている地面に向かって剣戟を繰り出す。
何度も、何度も。それこそこの8層の地面が跡形もなくなってしまうほど剣戟を繰り出す。
剣から光の斬撃が飛びだし、ルビーズへ飛んで行く。一本一本の斬撃に最大限の力を込めて。
そして、宙で力を為、ルビーズの居るところへ光速の突きを繰り出す。
空中からの落下速度で威力を上げ、一撃の破壊力を最大限まで高めている。
アルスの繰り出した光速の突きはルビーズがいたであろう所へ落ちる。
突きが当たった場所から地面にヒビが入り、地面が砕け割れる。
ガラガラと音を立てながら瓦礫をどかし、地面から出てくるアルス。
「流石に、やり過ぎたか」
バッバッと鎧についた塵を払うアルス。剣を背中の鞘にしまい、8層の出口へと向かう。
「おい…待てよ」
後ろからゾワッとする気迫と共に声がした。
アルスは恐る恐る後ろを振り向くとそこには体のほぼ半分が光となって消えそうなルビーズが立っていた。
「まだ終わってねぇぞ…!お前ごときになぁ!俺が負けるわけがねぇだろうがよぉ!」
「ルビーズ、その口調は何だ。いつものお前らしくないぞ。」
「うるせぇ!俺は決めてたんだ、お前を殺すと!前々から気に入らなかったんだ!ちょっと実力柄あるからって副マスターの座を取りやがってよぉ!あのマスターもそうだ!大した戦闘能力も無いくせにマスターだぁ!?笑わせんな!俺こそがマスターにふさわしいんだよ!」
「ルビーズ…いや、もう貴様はルビーズではないな。せめてもの救いに、楽にしてやろう」
アルスは右手に零の力を込める。
「『アイスレジスト』!」
そして、詠唱する。
アルスの右手から多数の氷の槍が飛び出す。その槍が地面に刺さると、その位置から地面が凍る。
そして、その槍自体がルビーズを貫くと、その一から凍りだす。
「せめて安らかに眠れ…」
それは、アルスなりの情けだった。
「アルス、お前は絶対に…許さねぇから…な…」
ルビーズは凍りつき、そのまま砕け散る。
「ルビーズ、その話は戻ってからまたするとしよう…」
アルスは出口から出て、悠斗たちへ合流する為に走りだした。
「はぁ。期待していたんだが、流石にこんなゴミクズでは勝てないか。流石にマスター代理をしてるだけはあるな。」
アルスが部屋から出た後、フードを被った人物が部屋に入ってくる。
「ルビーズ・マルクト。奴はダメだな。いくらレジェンダリークラスの武器でも雑魚は雑魚か。」
瓦礫を蹴り飛ばす。
「さて、ここからが楽しみだ。特に、あの桜月と智恵とか言ったな…あの2人が一番おもしろそうだ。」
その人物は、含みを持った笑みを浮かべながら、その部屋から消えた。
次回更新は9月30日です。




