52話目 「エターナルフロアの現状」
どーも、作者です。
今回はただの会話回です。
そして、次回からはフロアボスと戦います。
では、どーぞ。
「いやー、それにしても蒼汰とか桜月、それに智恵…懐かしいなぁ」
大人悠斗はヴァイスリッターの面々を見て、そう言った。
未来から来た大人悠斗からしたらこのエターナルフロア攻略は何年前の話になるのだろうか。
懐かしい、と感じるレベルならば今からそれなりに月日が立っている世界から来たのだろうか…
そんなことを走りながら考えていた悠斗。
すると、それを覗きこむように前から器用に顔を出す大人千代。
「どうしたんだいっ?」
にっこりと笑いながら聞いてくる。本心からの笑顔であることは聞かなくても分かる。
今の千代に比べて、根本的な考え方や性格は変わっていないが、それでもかなり明るい性格になっていように感じた。
それは、未来の悠斗の影響なのか、もしくは未来のヴァイスリッターの影響なのか。
今の自分にはわからないことだった。だが、千代は大人になっても元気なんだな、というのはわかったので、それだけでもいいとした。
「いや、特には。強いていうなら、あまりにも敵が少なすぎるというか…」
「あぁ、敵の事ね。それなら、未来の悠斗に聞いてみるといいよ。なんでかわかるから。」
大人千代は最後尾で気配を察知し、常に注意を払っている大人悠斗を呼ぶ。
最後尾から大人悠斗は前に走ってきて、大人千代に事情を聞く。
「どうした?なにか問題でもあったか?」
「いや?特にはないよ。それよりも、なんでエターナルフロアにザコ敵が居ないか知りたいらしいよ。」
「えっ?あぁ、あいつらのことか」
大人悠斗はなにかを知っているようだった。
「いや、昔の自分がここにいることは知ってたから、少しは楽になるかなと思って敵を潰していっただけなんだよな…多分これより下はザコすら出てこないと思うぞ?」
それは、大人悠斗が軽々しく言った、衝撃の言葉だった。
これより下の層の敵を全滅?そんなこと、たった1人でできるものなのだろうか。
「まぁ今回出た位置が89層だったのが不運だったかな…エターナルフロアを登る羽目になるとは」
まるで敵が居なかったかのように話す大人悠斗。
「まぁ、ほとんどが喧嘩売ってきたし、面倒だったからな…千代にも手伝ってもらったけど」
「いやー、爽快だったね。久しぶりのストレス発散になったよ!」
「お前は手当たり次第にスキルぶっ放しすぎなんだよ。お陰でエターナルフロアの内装の一部が吹き飛んだしな…」
「敵が居なくなる代償と思えば安いもんだよ!」
「それを治すのは誰だと思ってんだよ…」
相変わらず、というよりもやっぱり2人は仲が良かった。そんな関係に、いずれなるのだろうかと思うと少し恥ずかしかった。
「ところで、蒼汰とメアリーはどんな感じだ?」
唐突に大人悠斗が悠斗に向かって聞いてくる。悠斗は、その質問の意図がわからなかった。
「どうって…メアリーが片思いしてる感じだとは思うけど」
「ほほー、そうかそうかそんな感じかぁ…今となっては感慨深い物があるなぁ、はははは」
ニヤニヤしながらなにか納得したように頷く大人悠斗。良からぬことを考えているダメな大人の顔だった。
「じゃあこっちからも一つ質問。その、あのさ…その、あれだよ」
「んー?なんだなんだ、そんな恥ずかしがるなって、お前と俺の仲だろ?」
走りながらなのに、肩を組んでくる大人悠斗。走りづらい。
「その…千代とは、どんな関係なんだ?」
うだうだしていてもしかたがないので、はっきりと単刀直入に聞く。
だが、今の悠斗の顔は誰が見ても真っ赤であることはわかった。
その質問に、大人悠斗は笑いながら答える。
「そりゃもちろん、夫婦ってやつだ。千代はいい嫁さんだと思うぜ?」
よどみなく、しっかりと大人悠斗は答える。ふざけ半分なのに、言葉に重みを感じる。
「本当によく出来た嫁だよ。家事は何でもこなすし、身の回りのことだけじゃなく俺の周りのことまでしっかりとサポートしてくれる。」
大人悠斗の横で大人千代と千代が照れ隠しのためか俯いていたが気にしないでおこうと思った悠斗。
だが、聞いてる本人も恥ずかしくなってきていた。
「まぁ、簡潔に述べるなら最高の嫁ってところだな。大丈夫、今は不安かもしれないがゆっくりと進めていけばいいさ!」
バシバシと悠斗の背中を叩く大人悠斗。まるで、父親のような感覚だった。
「ま、悩め迷え若者よ。いずれ俺の言ってる意味がわかる日がくるさ!」
完全に大人の余裕を見せつけた大人悠斗。未来の自分だとわかっていても、その人柄には信頼したくなるような物があった。
「とりあえず次の層まで、というよりも90層まで走ってもいいと思うぞ?どうせ敵居ないし」
「無駄な体力も使いたくないもんね。じゃあモーメント用意するからちょっとまってね…」
「えぇ…ってことは俺が90層まで走るのかよ…」
「一番体力残ってるのは悠斗でしょ!さぁ、走る走る!」
「はぁ、人使い荒いなぁ…」
大人悠斗は足に魔力をため、それを増幅させ、ブースターとしての力を使う。
ドンッという音とともに勢い良く走りだす大人悠斗。その姿はもう見えなくなってしまった。
「ここ、確か31層だけどそんな速度でたどり着けるものかなぁ…」
「大丈夫、ああ見えても悠斗はできる子だから。さて、私は準備を始めるかな。」
そういうと、大人千代はポケットから青い球体をとりだし、それを地面に置く。
「よいしょっと!」
地面に置いた球体に向かって固めた魔力を撃ち、起動させる大人千代。
球体が浮き上がり、その場に固定される。
「とりあえずこの位置を固定して、座標も固定しちゃおうか!」
左手で魔力を送りつつ、右手の指先で空中に文字を描く。
「これで、よしっと。さて、後は悠斗の連絡待ちだけど…」
すると、ピコピコというレトロな音がなる。
「おっ、来たね。どう悠斗、聞こえてる?」
『あぁ、問題ないみたいだな。とりあえずこっちも座標固定はできたぞ。』
「おっけー。じゃあ、皆転送しちゃうよー!」
『全員かよ!魔力安定するかなぁ…』
「うーん、じゃあ先に智恵ちゃんをそっちに送るから、それでなんとか安定させて。」
『とりあえず了解だ。さっさと済ませようぜ』
大人千代は右手で青い球体を地面に叩きつける。だが、球体が割れることはなかった。
さらに、球体が地面にあたったとこから一定範囲に魔法陣が作られ、球体を中心に魔力帯のようなフィールドが作られていた。
「智恵ちゃん、ちょっとこっちに!」
智恵は言われたとおりに大人千代が作った魔法陣の中に入り、そこで止まる。
「しばらく動かないでね。よし、行くよ!」
大人千代が魔力を開放し、モーメントを起動させる。
地面の魔法陣が回転し、光のカーテンのようなものが浮かび上がる。
そして、その光が弾けると同時に、智恵の姿が魔法陣の中から消えていた。
「よし、成功だね。こっちの世界で使えるかどうか心配だったけど何とか行けるみたい。」
すると、大人千代は魔法陣の大きさを更に拡大し、メンバー全員を包み込めるほどの大きさに作り上げた。
「さぁ、行くよ!」
先ほどのように光が周りを包み込む。そして、悠斗達の視界は白に包まれた。
ほんの少しの真っ白の世界の後、見慣れぬ場所に出る悠斗達。だが、そこには智恵と大人悠斗が立っていた。
「全員無事だな。よし、行くか」
大人悠斗が先頭に立ち、進む。
だが、何かを忘れているような気がした。気のせいだろうか…
「あ」
そう、この場には大人千代が居なかった。
そして、10分ほど後怒りながらボードに乗ってきた大人千代に怒られる大人悠斗の姿がそこにはあった。
次回更新は9月8日です。




