51話目 「大人悠斗と大人千代」
どーも、作者です。
今回はちょっとしたお話編です。
次回から次の層に入っていきます。
では、どーぞ。
「ここまでできれば十分だ。よく頑張ったな、正直昔の俺がここまで頑張るとは思わなかったよ。」
全ての力を出し切り、疲労感から地面に座り込んでしまっていた悠斗。
座っている悠斗の頭にぽんぽんと手を当てる大人悠斗。
座り込んでいる悠斗の手にはオートマチック式の銃である『インフィニティスレイヤー』が握られていた。
「(それにしても、とっさに銃を抜いて戦えるほどに使いこなすとは…昔の俺の成長速度はすごいな…)」
さっきまでの戦闘を思い出しながらそう思う大人悠斗。自分以上の使い手になるかもしれない。
「(なんて思ったが、今の俺以上に使いこなせてたら苦労しないな)」
現状の自分の戦闘能力を考えてさすがに自分を超える成長はしないと思った大人悠斗だった。
それは自分の力を過信しているわけではなく、これ以上の成長はできないと実感しているからであった。
「ハァ…ハァ…」
完全に息が上がっていた悠斗。これ以上の運動をすれば、身体に支障が出るだろう。
「無茶はするな、お前さんは力を使いすぎてる。その状態で戦おうとすれば確実に倒れるぞ」
悠斗の怪我を少し治療しながら立ち上がろうとする悠斗を抑える大人悠斗。
もちろん、治療にも魔力やスタミナを消費する。たとえ包帯やバンテージなどの治療品を持っていても、
ゲーム内の怪我を治すには特別な力を込めた物を使わなければならない。
しかし物に魔力を込める、というのは魔力の経験を十分に積んだ者にしかできない上、
物に込めた魔力はゲーム内時間で約半日しか持たない。以上のことから、基本的には治療品に魔力は込めずに魔法で治療したところに追加効果を期待して使う、という方法が一般的となっている。
悠斗は無茶をしすぎて、かなりの怪我をおっていた。怪我が大きければそれに比例して治療するための魔力は増える。
だが、大人になった悠斗にとっては人1人の大怪我を治す事は余裕だった。それほどの魔力のストックが有るのだ。
「それにしても、だ…」
治療しながらチラッと横を見る大人悠斗。
大人悠斗が見た方向には千代をお姫様抱っこしながら満面の笑みを浮かべている大人千代が居た。
「もちろんお前はその状況を説明してくれるんだよな?回答によっては容赦しないぞ」
顔が引きつってる状態で声をかける大人悠斗。大人千代が変な答え方をすれば確実に治療をやめて飛びかかるだろう。
「いや~?別にぃ~?なにも、なかったよ?」
笑顔が全く崩れない大人千代。それは偽りの笑顔ではなく本心からの笑顔だというのは悠斗にもわかった。
「ほう、じゃあなんでお前は昔の千代をお姫様抱っこしているんだ?そしてなんで千代は気絶してるんだろうなぁ~?」
メリメリと地面から音が聞こえた。それは大人悠斗が地面を強く踏みしめた為に出た音だった。
「これぇ~?これはねぇ、昔の私の固有能力を覚醒させるために『継承』したら戦女神があまりにもしぶとくてねぇ…」
「ほう、そうかぁ…」
メリメリという音に加え、ミシミシという音が出始めた。少なくとも土で出来ている地面から出ていい音ではない。
「それ以外は特に無いよぉ?お姫様抱っこは私の趣味っていうか…」
「お前は自分の趣味で昔の自分をお姫様扱いしてんじゃねぇっっっ!」
ついにキレた大人悠斗。地面を思いっきり踏みつける。
すると、その力が強かったせいか、フロア全体が揺れ出す。
「あ゛っ」「あっ」
大人悠斗と大人千代が同時にまずい、という意味を込めた声を出す。
唯一状況を理解してない悠斗。何が起きているのかを判断しようとするが、今までになかった出来事なので判断ができない。
「昔の俺、早く俺の背中に乗れ!」
大人悠斗が慌てて腰を少し落とし、悠斗に乗りやすいように背中を空ける。
何がどうなっているのかわからない悠斗だが、大人悠斗の声からは焦りが感じ取れたので、言われたとおりに大人悠斗の背中におんぶして貰う形でのった。
「千代、絶対に昔のお前落とすんじゃねぇぞ!」
大人悠斗は足を、正確には靴を地面に強く打ち付ける。
すると、足元に一枚のスケボーのような板が現れる。
「ここで昔の私をロストしたりなんかしたら、私は一生立ち直れないね!」
大人千代も同じように地面に靴を叩きつけ、スケボーのような板を生み出す。
2人は各々の板に乗り、魔力を開放する。
「「『ライトライン・エクススケート』!」」
その声と同時に、大人悠斗と大人千代の前に光の道が出来上がる。
それは障害物を避けるように作られていく。
「行くぞ千代!」
「了解、悠斗!」
その掛け声とともに2人が乗った板は勢い良くとび出す。
そのボードはスケボーやバイクなどのスピードとはケタ違いの速度を出していた。
まるで光の速度で移動しているかのような速度だった。
しかし、恐怖感はまるで感じず、体感速度もそれほどではなかった。
「(だけど、速い!)」
周りの風景が足早に悠斗の横を通り抜けていく。本来は悠斗達が風景の障害物の間を縫って高速で移動しているはずなのだが、謎の安心感からそう感じるようになっていた。
「もう少し耐えろよ!あと少しで出口だ!というかこのフィールド広すぎだろ!」
文句を言いながらもしっかりとぶつからないように、悠斗が振り飛ばされないようにバランスを取ってすり抜けていく大人悠斗。そのテクニックは悠斗が見とれるほどだった。
「見えた、悠斗!あそこが出口だ!」
「よし、このまま一気に扉を破壊して突き抜けるぞ!」
なんという無茶をと悠斗は思ったが、次の瞬間にその考えは一変する。
「『火焔』っ」
大人千代が手のひらから手のひらサイズの火の玉を作り出し、大人悠斗の前方へ投げる。
前に飛んでいった火の玉は、もちろんそれの速度より速い大人悠斗へ向かって前から突っ込んでくる。
それに蹴りが当たるであろうタイミングで、悠斗は右足に魔力を集中し、ボードから少し飛び上がる。
「ちょっと浮くが、我慢してくれっ」
悠斗は大人悠斗に必死にしがみつく。
「『エクスプロミネーション』!」
大人悠斗はその火の玉を魔力を込めた右足で思いっきり蹴り飛ばす。
火の玉の大きさが悠斗の魔力で増幅され、かなりのサイズになった火の玉が扉に向かって勢い良く飛んで行く。
そして、扉に触れると同時に、高熱と強烈な赤色の光を発しながら爆発する。
その爆発が止むと、緑の壁の一部にポッカリと大きな穴が開いており、そこに光の道がつながっていた。
「よし、一気に抜けるぞ!」
魔力を更に開放し速度を上げる大人悠斗。
それにピッタリとついてくる大人千代。まるで次に行く先を予測しているかのようにピッタリと。
これがコンビネーション、というよりも何よりも強い信頼関係というやつなのだろうか。
加速した勢いで一気に穴を通り抜ける大人悠斗達。
抜けると同時に、30層のフロアが崩壊する。
「危ねぇ…もう少しで巻き込まれることだった…まさかフロアの支柱を壊しちまうとは思わなかった」
どうやらさっきの大人悠斗の足踏みで30層のフロアの支柱を壊してしまい、それをきっかけに崩壊したようだ。
「こりゃ戻れないな…」
悠斗をおろし、再び崩れた30層の方を見る大人悠斗。
「そういえば中にゲート作ったままだったね…」
後ろが少し落ち込む大人千代。どうやら大切な物をおいてきてしまったようだ。
「ゲートは最悪俺が作ればいいけど、前回作ってからまだ時間が立ってないからな…」
大人悠斗は手をぐーぱーして何かを確かめる。
「やっぱ無理だな…しばらくはゲート作れなそうだ」
「本当に?だとしたら、後どれくらい戻れなそう?」
「多分…1日、2日くらいか」
「そんなに…」
「しゃーない、今回ばかりは俺の責任だし少し時間をかけ過ぎた」
そう言うと大人悠斗はポケットから懐中時計のようなものを取り出す。
それは、悠斗と特訓を始めるときに創りだしていたものだった。
「あー、やっぱ時間止めるのもそろそろ限界っぽいな」
その言葉とともに、懐中時計は灰になって消えた。
「昔の蒼汰達をこっちに連れてくるのは簡単だけど、俺達がどうするかだよなぁ。これ以上干渉するとまずい気もするが、さすがにこの状況は手を貸さないと辛そうだよなぁ」
一人でぶつぶつと呟く大人悠斗。
「んー、まぁいっか。世界線が多少変わっても俺たちに支障は出ないだろうし、結果的に俺たちのルートへ辿り着くだろうしな。重大な分岐点に手を出さなければいいだけだし」
一人で悩んで、一人で勝手に解決している大人悠斗だった。
「千代もそれでいいよな?」
後ろを振り向き、大人千代に確認を取る大人悠斗。
「私的にはもう少し昔の私とふれあいたいし!構わないよ!」
「お前のその自分が良ければいいみたいな考え方は気楽そうで羨ましいよ。」
「自分の好きに動いて何が悪い!」
ふすー、と胸を張ってえばる大人千代。だが、その言動にはふざけた気持ちは入っていないように感じた。
「まぁ、そういうことだ。これからエターナルフロア攻略まで、俺達未来の悠斗と未来の千代が同行しよう。多少なりとも戦力としてみてくれて構わないぜ?」
多少どころか、かなり心強い味方だった。圧倒的な戦闘技術に知識、戦力がある。
一人で現在のヴァイスリッター全員を圧倒する強さを持つであろう大人悠斗。
すこし変だが、持ち前の圧倒的なセンスで戦力になる大人千代。
この2人が仲間になるのはかなり心強かった。
次回更新は9月4日です。




