50話目 「固有能力の覚醒『千代』」
どーも、作者です。
ついに、50話。
いやー、50話って自分にとっては特別な区切りの話だと思っています。
特別な区切りですが、特に特別な話を作るわけでもなく、平常運転です。
では、どーぞ。
「うおぉぉぉぉ!」
雄叫びを上げながら突撃していく悠斗。
だが、それをよんでいるかのようにするりするりと攻撃を交わす大人悠斗。
「よっと」
自分の横を通り抜けそうになった悠斗を大剣の腹で止め、そのまま弾き飛ばす。
パンッという音と共に後ずさり状態で滑っていく悠斗。
踏ん張りが聞かず、なかなか止まらない。
「まだ終わってないぞ!」
その声にはっとし、止まった直後に上を見上げると、かなり高い位置で大人悠斗が剣を構えていた。そして、そのままこちらめがけて落下して来た。というよりも、引き寄せられているかのようだ。
「『シューティング・ブレード』」
大人悠斗の大剣は閃光のような跡を残しながら、まっすぐに悠斗へ向かってくる。
「『エクスティーション』!」
悠斗はとっさに自分の目の前に半透明な大盾を3枚作り出し、それを重ねて落下してくる大人悠斗に対して構える。
「あーあ、もったいないな…そんなことに魔力使っちゃって」
唐突に後ろから声がし、悠斗は寒気を覚える。
それは、降ってきているはずの大人悠斗の声だった。
「誘導に引っかかるようじゃまだまだってやつだ」
慌てて悠斗は後ろに振り向く。が、そこには誰も居ない。
「隙あり」
突然、悠斗の腹部に斬撃のような痛みが入る。
大人悠斗が腹部を剣が通り抜けるように切ったのだ。
「ぐうっ」
その痛みに耐え切れず、悠斗は膝をついてしまう。
だが切られているはずの腹部には傷一つなく、切られては居なかった。
「どうだ?どんな感じかわかったか?」
大人悠斗は剣を粉々に砕き、ばら撒く。そして、悠斗に近づき回復魔法をかける。
「これを習得できれば尚更お前の戦闘スキルは向上すると思うぞ。画面の前でプレイしていた時以上にな。」
その言葉を聞いて悩む悠斗。自分には今の状態で習得することができるのだろうかと。
「安心しろ、そんなに難しいことでもないし要は今までの技術の応用的なものだからな。」
簡単そうに大人悠斗は言う。
「でも…」
「昔の俺は本当に心配症だな…ま、とにかくやるだけやってみろ。何度でも付き合ってやる。」
「いや、そうじゃなくて」
「ん?」
「外で待たせてる仲間はどうしようと思って」
「あ」
仲間のことをすっかり忘れていた大人悠斗。慌てて、懐中時計の様なものを創りだす。
その時計のスイッチのような部分を押す。だが、何も変わってはいなかった。
「今、何を?」
「ん?ああ、時間の概念を止めた。今この瞬間世界と俺達は『時間』の流れから外れた存在になった。」
「時間の流れから外れた存在?」
「簡単に言うと今この時間軸に存在する人間すべてが成長も老化もしなくなったってことだ。実質不老ってやつかな」
「でもそんなの」
「ありえない、か?それがありえちまうんだな。現にいまできてるだろ?まぁ正直ここまでやっちまうと人間が踏み込んでいいのか分からない神の領域だけどな。」
「神の領域…」
「やってることは人を超えてる。まさに神の所業だな。だが現状お前もほぼ神の領域に足を突っ込んでいるんだぞ?その固有能力がな。」
「『唯一無二の絶対的創造』が?」
「ああ。物を無から作り出す、ってのはまずありえないことだ。どんな世界でもあっちゃいけないことだ。等価交換が基本の世界ではな。」
「等価交換?この世界に等価交換なんて」
「あるぞ。現実もそうじゃないか。お前がプレイしたという『時間』のぶんだけ、『経験』が得られているだろう?『時間』を失って『経験』を手に入れてるからな。」
「あぁ…」
「ま、話が長くなっちまうから詳しいことは言わないがとりあえず仲間の心配はしなくていいぞ。今頃みんな眠ってるだろうしな。さっき分身に睡眠魔法をかけさせに向かわせたし。」
「それなら、安心だ」
「さて、千代に怒られる前に終わらせちまおう。なんだかんだで色々と心配だしな…」
「お願いします!」
「そんなかしこまらなくてもいいぞ。どうせ未来の俺だし。俺自身に敬語使われるのもむず痒いしな。」
「いやそれでも今は俺の師匠的存在なんで!」
「むぅ、仕方ない、始めようか」
「さて、昔の私に戦闘と固有能力の覚醒について教えるけど…」
大人千代は千代を見て、一言言う。
「やっぱ可愛いな~!自分って点を含めても可愛い!」
極度の自分好き、というわけではなさそうだが大人千代の言動にはなにか恐怖を感じる千代だった。
「あぁ、また話がそれちゃうところだったね。さて、昔の私は確か『可憐なる戦女神』が固有能力だったよね?」
こくこくと頷く千代。変に答えるとまたどうにかされそうで怖かった。
「そうだね、それじゃあ覚醒しちゃおうか。」
軽々と言ってのける大人千代。そんな簡単にできるものなのかと疑問に思う千代だった。
「この能力はね、未来の私から渡して初めて覚醒する能力なんだ。今の私が覚醒できたのも更に未来の私から受け継いだおかげ。」
すると、大人千代は目の前で固有能力を開放する。
「我、ここに戦女神との契約を結ぶものなり。知恵は力に、力は勇気に。すべてを先導し、勝利へと導くものなり。顕現せよ、我が力!『神に愛された戦乙女!』」
大人千代の服は軽めの鎧に包まれ、背中にはマントがひらめく。
手には長い槍を持っており、聖の力を感じ取ることができた。
「どう?これが、あなたがこれから扱っていく力だよ。」
その姿を見て、千代は希望のようなものを抱いていた。自分の力はまだ成長できるものなのだと。
そして、その力を使いこなせば皆を守ることもできるだろうと。
「これが、覚醒…」
「そうだね。悠斗に比べてかなり簡単な覚醒になっちゃうけど性能は折り紙つきだよ。」
大人千代は手に持っている槍を千代に手渡す。
「この槍を地面に突き立てて、そのまま固有能力を使ってごらん。そうすれば、覚醒できると思うよ。」
そういうと、大人千代は一歩引いた。
「もし何かあっても必ず私が止める。それが今の私にできることだから。」
その言葉を信じ、千代は槍を地面に突き立てて固有能力を使う。
内部から力が溢れ出てくるのを感じる。だが、千代の体に戦女神が憑依した瞬間、異変が起こる。
今までは千代がかろうじて保っていられたはずの意識が飛び、完全に千代の意識が消える。
「ぐぅぅぅぅぁぁぁぁぁあああああ!」
苦しむようにもがく千代。だが、けして槍は離さない。いや、離れないのだ。
「忌々しい…槍がぁぁぁぁ!」
槍を手放そうとする戦女神。だが、千代の手から槍は離れようとしない。
「こんなもの…へし折ってくれる!」
槍の先を掴み、そのまま半分に折ろうとする。だか、槍は固く折れる気配がない。
「そこまでにしときなよ。さすがの私もそれ以上抵抗するなら無理矢理離れさせるよ。」
しびれを切らした大人千代が暴れる戦女神に言う。
「貴様、この女に何を吹き込んだ!私をこの女から離そうなどという愚かな真似をしおって!」
「愚か?いやいや、君がその子に憑依し続けるほうが私にとっては愚かな行為だと思うよ。」
少し怒り気味に言い放つ大人千代。だが、その目は本気で千代を守る気でいた。
「ふざけたことを!貴様ごときが私に勝てると!」
「簡単すぎてあくびが出るくらいには。」
「その口、二度と開けないようにしてやる!」
戦女神は千代の体を使い、さっきまで地面に突き立てていた槍を使って大人千代を攻撃する。
だが、その決着は一瞬だった。
「もうあなたの力を使わなくても戦えるくらいにはその子も強くなっているんだよ」
大人千代は槍をわざと紙一重でかわし、千代の腹にパンチを打ち込む。
「ぐうっ…貴様…何者だ…」
「私は、相田千代。未来のその子。」
「未来の…そうか、お前があの『女神の申し子』か…貴重な体験をした、と言っておくか…」
その言葉を最後に戦女神は気絶する。
倒れてきた千代を受け止め、そのままそっと地面に寝かせる。
「ちょっと荒っぽくなっちゃったけどこれで私の役目は果たせたね。」
横になっている千代の頭を撫でながら、まるで自分の子を見守るかのような温かい感じで優しく、寄り添っていた。
次回更新は9月1日です。




