48話目 「未来との邂逅」
どーも、作者です。
今回から少し話が大掛かりになってきます。
次の話、またその次の話で30層を抜けることになります。
では、どーぞ。
30層に到達した悠斗達一行。
ここでの条件はペアであり、やはり悠斗が駆り出される羽目になった。
悠斗が出る羽目になれば、当然ついてくるのはヴァイスリッターの誰かである。
今回は、千代が悠斗のペアとして行くことになった。
公平な、じゃんけんという方法でである。
また俺が駆り出されるのか、と文句を言いつつも中に入る悠斗と千代。
悠斗は両手に何も持たず、あくまで戦闘スタイルではない状態で入っていく。
フィールドは自然豊かな森で構成されており、足元や至る所には小川が流れていた。
花も多く咲いており、足の踏み場に少し困るような量だった。
「なんか心が落ち着くな、さっきまで戦闘ばっかだったからかは分からないが」
さっきまでの戦闘を思い出しながらもまったりとした心構えの悠斗。
今は戦闘のことから頭を離し、のんびりしたいところだが、外で待機しているメンバーも居るのでそうもいかない。
「それにしてもこんな森の中に敵がいるとかいつ襲われてもおかしくねぇな」
高くそびえ立つ樹を見て、そうつぶやく。
「大丈夫だ、私が警戒しているからそう簡単には悠斗に怪我させない。」
いつの間にか剣を構えていた千代。だが殺気は感じなかった。
しばらく歩くと、どこからか微かに声が聞こえてきた。
悠斗は千代に少し黙っててくれるように促し、声がする方へと静かに近づいていく。
「……だし、……だろ!」
「……くない!……しろ!」
その声の主は2人で、喧嘩しているように聞こえた。
近くの草むらまで移動し、千代とそこに身を隠し、そっと様子を確認する。
すると、男性と女性の2人組が言い合いをしていた。
その2人の足元には刀を持ったまま倒れている侍のようなモンスターが倒れていた。
そこで、悠斗はあることに気がつく。言い合いをしている内の1人は20層で銃をくれた人だった。
「今回はお前が悪い!俺に戻って来いといったくせにやっぱりそこにいて調査しろだとか、必要に応じて俺の援護をしろだとか!挙句の果てにはお前までこっちに来ちまうし!」
「し、仕方ないだろ!悠斗に任せっきりだと色々心配だったし、さすがに一人で調査するのは時間がかかるだろうと思って親切心でだな!」
「お前の親切心はいつも度が過ぎるんだよ千代!昔はもっと純真でさ、可愛げがあったのにな!」
「今は純真じゃないっていうのか!?いくら私でもその言葉は傷つく!」
「その程度の言葉に傷つくような心の持ち主じゃないだろ!」
悠斗はその喧嘩を聞いていて、違和感を覚えた。
あの2人の名前は自分と同じ『悠斗』と自分の横にいる『千代』らしい。
この世界で同名と出会う、なんてことは珍しいことではない。
だがあの2人はどこか自分たちに似ているような気がした。
「悠斗と千代…」
横で息を殺していた千代がつぶやく。どうやら千代も違和感を感じているようだ。
悠斗はとりあえずその場から引こうとして、立ち上がろうとする。
だが、気を配っていなかったせいで後ろにある木の枝に気がつかず、それにぶつかって枝を折ってしまいパキッという音を立ててしまう。
「敵か!?」
目の前の人物はとっさに剣を構える。
だが、横にいた悠斗という人物がそれを止める。
「多分俺の予想が正しければ敵じゃない。」
そしてスタスタとこちらへ歩いてくる。
「だぁぁぁ!」
すると、とっさに千代が飛び出し男性へ斬りかかる。
「予想通りだ」
その人物は千代の剣をかわさず、右手で受け止める。
「悪いけどちょっと貸してもらうよ」
そしてそのまま剣を引っ張り、千代のバランスを崩す。そして、そのまま剣だけを取り、千代を受け止める。
「大丈夫かい?」
その人物は敵意を向けてはおらず、優しく聞いてくる。
殺意はなく、危害を加えるつもりもないようだ。
「…」
千代は黙ったままだ。あるいは、何かの機会を伺っているのか。
「ははっ、ずいぶんと嫌われちゃったね。ま、しょうがないか…」
そういうと、その人物は剣を千代に返した。
「いい太刀筋だけど、動作を読みやすい。もう少し動作を少なくするといい攻撃になると思うよ。」
細かいアドバイスをし、その人物は後ろに振り向く。
「おーい、早く来いよ千代ー。面白いもの見れるぞー!」
後ろのほうで待っているであろう千代という人物に向かって声を出す。
「悠斗、またお前は先走って面倒なことにまきこ…む…」
走ってきた千代という人物は男性の後ろに立っている千代を見て黙り込んだ。
「ほら、懐かしいだろ?まぁこの時間に飛んできたのは偶然だけど」
男性は喜々とした表情で話す。
「…」
千代と呼ばれた女性は黙りこくったまま何故かうずうずとしていた。
「あ、あの…」
千代が状況を聞こうとした瞬間、女性は千代に向かって飛びかかった。
「ひっ」
慌てて千代は剣を振るが、その斬撃はかわされ、隙を晒してしまう。
だが、千代に待っていたのは攻撃ではなく物理的な衝撃だった。
そう、斬りかかろうとしたのではなく、抱きつこうとしたのだった。
「うは~!昔の自分かーわーいーいー!純真だった頃本当にかわいい~!」
「むぐっ、あのっ、くるしっ…」
「な、なぁ千代?楽しそうなところ悪いんだが苦しそうだぞ?」
悠斗らしき人物は慌てて千代と呼ばれていた人物を引き剥がそうとする。
だが、思っていた以上に力が強くなかなか引き剥がせない。
「お前…本当になんか好きなモノ見つけた時…力強くなるのなんなんだよ…」
思いっきり引っ張っているのにピクリとも動かない。
「自分も手伝います!」
目の前で起きていることに唖然としていてぼーっとしていた悠斗ははっと気を取り戻し、慌てて悠斗らしき人物の元へと向かう。
「おぉ、助かるよ昔の俺!悪いが右腕のほう頼んだ!」
悠斗は女性右腕をつかみ引き剥がす。
2人がかりでやっと引き剥がし、千代を助け出す悠斗達2人。
「あー、もっと、もっと触らして!昔の自分可愛すぎる!」
「おいやめろ。その昔の自分がビビって逃げ腰になってるぞ。あとその言い方誤解招くからやめろ。」
さっきのことがよほど怖かったのか、千代はビクビクと怯えながら逃げようとしていた。
「それで、あのー…」
悠斗が何かを聞こうとした瞬間、女性の目が光った。
「あ、まずい逃げろ!俺が抑える!」
男性は慌てて女性の腕の下から自分の腕を通し、腕で固めて押さえつけようとする。
「昔の悠斗もいる~!こっちも触りたい~!」
必死に男性の腕を振りほどいて触ろうとしてくる女性。
悠斗は本能的に危ないと、察した。
少し時間が立ち、落ち着いてきたところで、悠斗は質問をしてみた。
「そういえば、あなた達は何者何ですか?俺達を知っているようですけど…」
すると、男性はこう答えた。
「何者、か。まぁこの時間軸に存在してはいけない人物であることに間違いはないな。」
「時間軸?」
「まぁ簡単に言うと、私達は未来から来たって感じね。」
横から女性が口を挟んでくる。
「未来…えっそれじゃまさか」
何かに気がついた千代。それは、悠斗にもわかった。
「そう、俺達は未来のお前たちだよ。今から20年後くらいの『相田悠斗』と『三上千代』。正確には、千代は今『三上』ではないけどな…」
「それはつまり…」
「…そうよ、私達はそういう関係よ」
「…」
その一言で辺りがしんと静まる。
「なぁ、だから言ったじゃないか。ここに残らずさっさと戻ればよかったって。ここに残ればそれだけ過去の自分に合う可能性が増えたんだぞ?」
「仕方ないじゃない。そうでもしないと原因がわからないわけだし…」
「まぁ俺の時間軸でもここで出会う出会わないで分岐があるし…合うことは必然だったけどな?それでもさすがに必要以上の干渉はマズイだろ?」
「それでも、今ここで言えることは言っておくべきだと思うの…」
「いや、言っておくべきことじゃなくて、教えるべきことだな。」
「戦闘の基礎と、固有能力の覚醒をな。」
次回更新は8月25日です。




