40話目 「対となる吸血鬼」
どーも、作者です。
描写、描写下手すぎィ!本気で描写下手すぎィ!
はい、そんな感じです。
インキュバスの詳しい能力は次回。
では、どーぞ。
「それにしても、こんな手を思いつくとは思いませんでしたわ…」
「それは私も同感だ。本当に『女性プレイヤー』なら通れるものだな…」
「最悪の場合、僕が守るから安心してよっ!」
「むしろこの体で負けることのほうが想像できませんわ…」
無事扉の内部に入れた3人。扉の内部には洋館の広場のような風景が広がっていた。
今はこの広大なフィールドのゴール、次の層への扉を目指して歩いていた。
内部に入ったメンバーが無事次の層へ行けるようになると、自動的に扉の前で待機しているメンバーは次の層の階段の前へテレポートするようになっている。
「それにしても今回の相手は誰だろうね~?僕早く戦いたいよ!」
「恐ろしいこと言ってる場合じゃありませんのよメア。」
「だが、まだまだ序盤のここで躓くわけにも行かない。さっさとクリアしよう。」
恐ろしいながらも和気あいあいとしている3人組。
端から見れば、仲の良い友達3人組に見えるだろう。
「やぁ、待ってたよ。」
入ってからしばらく歩いた場所で後ろから声をかけられる。
「誰だ!」
後ろに振り返りながら千代は剣を抜く。
「おっとっと、やめてやめて~?僕はお嬢さんがたとはあまり戦いたくないんだよねぇ」
「なんですのコイツは非常に気持ちが悪いですわ」
嫌そうな声でメアリーがののしる。
「辛辣ぅ~!いやー、傷ついちゃうね!」
「さすがの僕でもこれは引くな…」
嫌そうな顔をしているメア。
「ははっ、3人連続でフラれちゃったよ!ドンマイ、僕!」
妙にテンションが高い悪魔が笑っていた。
見た目から言うとサキュバスであるメアリーの対になる存在のインキュバスだった。
インキュバスの戦闘能力は高く、そこらのモンスターよりも圧倒的に強い。
それに加え、女性を魅了する能力も持っており、女性キャラでは逃げるのがやっとであるほどだ。
「インキュバスか…通りでパーティが固定されているわけだ」
千代がここの扉の条件を思い出しながらつぶやいていた。
「そーだよ!僕、流石に男性プレイヤーには勝ち目がないからね!だから、こっちで選択させてもらったんだ!」
「噂通りのクズっぷりですわね。反吐が出ますわ」
本気で嫌がる声を出しているメアリー。
「そんなこと言わないでよ、君もそうでしょ?僕と君はいわば同族さ。」
「同族嫌悪って言葉がここまで似合う奴は他に見当たりませんわ」
「うへぇ、悲しいねぇ。」
「とりあえず、コイツ倒しちゃえばここ終わりだよね?」
固有能力を開放し、翼を開くメア。
「だったらさっさと終わらせちゃうけど?」
「ほぉ、君は天使か。それなら久しぶりに楽しめそうだね。」
「楽しむ?」
「そう、楽しむ。僕ね、女性をいたぶる事が何よりも快感を得られるんだ…!」
「うわぁ…クズすぎるね、コイツ…」
「ノンノンノン、僕はののしられるよりののしったほうが好きなんだ。」
そのインキュバスの言葉が最後まで出る前にメアは飛び出していた。
光の力で脚力を強化し、全力でインキュバスの方へ走る。
「おぉ、早い早い。でもね、甘いよ?」
インキュバスがメアに向けて指を鳴らす。
とっさに寒気を感じたメアは即座に横に飛び、回避する。
「今のを見きったか、流石天使だやるねぇ」
ニヤニヤと笑うインキュバス。
「(今のを喰らってたら…)」
嫌な寒気を思い出してゾッとするメア。
目には見えなかったが確実に何かがそこにはあった。
だが、一度見切った以上はもう当たるはずはない。
もう一度踏み込みを入れて走りだすメア。
「(次は最小の動きで避けて、拳を叩き込む!)」
まっすぐにインキュバスに走って行くメア。
だが、インキュバスは逃げようともせず指を構えていた。
「流石、勇気だけは認めてあげるよ。でも、二度も突撃してくるのは」
その瞬間、空気が一瞬で凍りつく。
「バカのやることだ」
インキュバスの指がパチンと鳴らされる。
その瞬間、インキュバスに突撃していたメアはその場にドサッという音を立てながら倒れる。
「なっ…!」
その光景を見ていた千代は言葉を失う。
奴は何も飛ばしたようには見えなかった。いや、見えないほど細い何かなのか?
それとも、ただ単に魔法の類?だが透明な魔法など見たこともない。
「…」
千代の横でただ立ち尽くすメアリー。
それは自分に何も出来なかったという後悔と反省からだった。
「ま、こんなものか。初戦は僕の勝ちだね。次、どっちが挑んでくるんだい?あ、僕的には両方でもオッケーだよ?」
笑顔でこちらに歩み寄ってくるインキュバス。
その笑顔には何か裏があるようにしか見えなかった。
「な、ならば」「私が出よう」
千代は先に出ようとしたメアリーを制止し、前に出る。
「君か。僕は気の強い女の子は好きだよ?」
「私は貴様など大嫌いだ。見ているだけで気分を害する。」
「いやー、辛辣だね。だけど、すぐ僕しか見えないようにしてあげるよ。」
「戯言を。私に勝つ気しかないようだな。」
「そりゃそうだよ。僕が女性に負けるどおりがないもん。」
「その自信、いつまで持つかな…!」
千代はすでに抜いていた剣を右手に構える。
そして、左手の小手から剣を出す。
システム的にはインベントリから出しただけなのだが端から見れば袖から長い剣がでてきたように見えるだろう。
「悠斗に作ってもらったこの剣で、貴様を討つ。」
「悠斗?誰それ?ま、別にいいけどね。すぐに忘れることになるから。」
「忘れることは無い。絶対にだ。」
小手から出した剣、それは悠斗が昨夜のうちに作っていた剣だった。
神剣「ブリュンヒルデ」。別名「女神への剣」とも呼ばれる。
敵に致命傷を与え、なおかつ治らない傷を付ける。
持つものへ勝利をもたらすことからこの名前が着いた。
今ではレシピもなくなり、作るのが困難な武器の一つだ。
レア度で言えばレジェンダリークラスのものである。
「(悠斗、ここでこの剣を使ってしまうが問題はないはずだよね…?)」
剣を構え、心のなかでそう唱える千代。
実践では始めてだが、悠斗に習ったあの戦い方を試す時が来たようだ。
「ほう、二刀流か。」
「そうだ。」
右手に剣、左手に剣を持ち二刀流の構えを取る千代。
「戦女神にとっては盾を使わないというのはありえないことだ。だが、あえて私は盾を捨てる。」
「それが、君の覚悟ってやつかい?」
やれやれ、と呆れるような素振りをするインキュバス。
「そうだ。そして、この戦い方で貴様を、射つ!」
千代が地面を蹴り飛び出す。
狙いをまっすぐに見定め、インキュバスへ向かってまっすぐに。
「君も学習しないねぇ?さっきの子がどうなったか見てないんだね。」
再び指を構えるインキュバス。
「(ここだ!)」
千代は前方のインキュバスに対して後ろ向きに回転しながら宙返る。
その宙返りをしながら、靴に仕込んでおいた短剣を飛ばす。
「うわっと!」
とっさの出来事にすぐさま横に避けるインキュバス。
だが、その隙が完全に命取りになった。
「どこを、見ているッ!」
見てない隙に懐に入り込んで居た千代が右手の剣でインキュバスの右腕を切り飛ばす。
「っ、ぐぁぁぁ!」
右手が吹き飛んだインキュバスはとっさに後ろへバックステップをして逃げようとする。
だが、それを千代が逃すはずもなく。
「逃すかぁ!」
地面を蹴り、飛び込みに近い形でインキュバスの左足を切り飛ばす。
「ぐぅっ!」
左足をも失ったインキュバスはその場に仰向けに倒れこむ。
「ぐぁっ、うぅ、あぁっ!」
痛みでもがくインキュバス。激痛が体中を支配する。
「痛い…痛いぃ…!」
子供のように騒ぐ。だがそれは、千代には通用しない。
「さぁ、さんざん私に言っていた余裕の一言を言ってみろ。まぁ、まだ言えるほどの余裕があるならばな。」
インキュバスの喉元に剣を突きつけ、逃げられないようにする。
「っはっ…くっ…そ、そうだね…あえて、いうならね…」
ニヤリと笑うインキュバス。何故か嫌な予感が千代の頭をよぎる。
「とどめを指すのが、ちょいと遅かったね」
その瞬間、千代の目前からインキュバスが消える。
そして、千代はその体勢のまま腕を動かすことができなくなってしまった。
遠くから見ているメアリー。
メアリーから見た感じ、千代の身には何も起こっていない。
だが、千代はとどめを刺そうとしない。
なぜだろうか。千代はここ一番でとどめを刺せないような心の持ち主ではない。
このチームの誰よりも、敵に厳しかったはずだ。
だが、自分が見ている千代は剣を振り下ろすどころか、下ろしたくないようにも見えた。
「だからいっただろ?どとめを指すのが遅いんだって。」
千代の目の前のインキュバスの位置に現れたのは、誰でもない、悠斗だった。
「…っ」
改めて剣を握り直す千代。だが、その剣を振り下ろすことは許さない。
「とりあえず、その剣をどかしてくれよ?俺が動けないじゃないか。」
悠斗の声で、悠斗の言葉で、錯乱してくる。それが偽物の言葉だとは分かっている。
だが、自分の心が許さない。剣を振り下ろすことを、傷を付けることを。
分かっている、分かっているはずなのに。
千代は、剣を放してしまった。
「私は、私は…」
「なぁ、千代。これ、どうしてくれんだよ」
片足で器用に立ち上がった悠斗は自分の切れている右肩を左手で指差し、言う。
「そ、それは…」
悠斗ではない。こいつは、悠斗ではないんだ…!
「これ、痛いよ。俺今すごく痛い。」
「そっ、それはっ…!」
「どうしてくれんだよ。本当に。本当にどうしようもないやつだな、お前。」
「嫌っ…!」
「嫌じゃないんだよ。事実、今俺はすごく痛い。」
「やめてっ…!もうやめて!」
「何をだ?それはこっちのセリフなんだよ。もうやめてくれよ。痛いんだよ。」
「嘘っ!嘘嘘嘘っ!全部、あれもこれも!」
「嘘だと思うのか?それは違う、もしかしたらお前が今まで見てきたほうが嘘かもしれない。」
「嫌っ!」
「はい俺の勝ちー。」
「っ!」
その言葉ではっと我に返る千代。だが、それは遅すぎた。
目の前で鳴らされるインキュバスの指。
それは、千代の敗北を意味していた。
「そんな…千代様が負けるんですの…?」
「大したことなかったね。さて、次は君のだね。」
そう言って片足で器用にこちらによってくるインキュバス。
「ずっと気になってたんだー。君、そのローブを脱ごうとしないからね。最後なんだし、顔くらい見せてくれてもいいんじゃない?」
「…ですの」
「ん?」
「見せてもいいですけど、びっくりすると思いますの」
「いやいやいや、女性の顔見て驚く僕じゃないよ!」
「いいましたわね?では、じっくりと拝むがいいですわ!」
バッと来ていたローブを脱ぎ捨てるメアリー。
そこに居たのは、メアリーではなかった。
「んんんんんんんなぁぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃ?!」
インキュバスが驚きのあまり叫ぶ。
「な、な、な、ななななななななんでここに、ここにィ!」
そう、そこには。
「『男』が居るんだァァァァ??!!」
悠斗の姿があった。
「いや、これは結構深い事情がありましてですわね…」
恥ずかしそうにする悠斗。だが、口調と声は完全にメアリーだった。
「ぬぅぅぅぅぁぁぁぁ!近寄るなァァァ!」
完全に予想外の悠斗の登場でパニックになるインキュバス。
「近寄るな、と言われましても近寄って来たのはあなたですわよ?」
「それは君が女だと思っていたからだ!やめろ、近寄るな!」
「一応、中身は女ですわよ?」
「外見が男の時点でダメだ!ァァァァ!近寄るなァァァ!」
完全にパニックに陥って言葉が変になっているインキュバス。
「ふう、この人本当に疲れますわね。ですが、本当に言ったとおりになるとは思いませんでしたわ…」
それは、このフィールドに入ってくる前に遡る。
「なぁメアリー。」
悠斗はメアリーの方に振り向き、呼び寄せる。
「なんですの?」
「お前の能力、確か『体を乗っ取れる』んだよな?」
「そうですわね。一度魅了すれば乗っ取れますわ。」
「なら入れそうだな。よし、じゃあ俺を魅了してくれ。」
「え、いきなり何を言ってますの?!」
「いや、多分この方法なら入れそうだからさ。」
軽々と言ってのける悠斗。
「ですが、それはそれ相応のリスクを伴いますわよ?」
「俺の体だ、死ななきゃ問題ねぇ」
「ですが…」
「まぁ聞け。俺の予想だとこのフィールドのボスはインキュバスだ。」
「インキュバスですの?でも、どうして?」
「パーティが女性3人固定の時点でインキュバスが一番確率が高い。オークは雑魚だし、他に女性を求めるようなモンスター知らねぇし。」
「それでも、あなたの体を借りるということはそれなりのリスクですわ。それを昨日同盟を組んだばかりの私に預けてもいいんですの?」
「チームのメンバーは信じる、それがマスターとしての役割だ。それに、お前はなにもしないと信じてるから。」
「(あの時の悠斗様は、流石マスターという貫禄でしたわね)」
パニックになっているインキュバスを横目に、うんうんと頷くメアリー。
「ァァァァ!もういい、お前は死んでしまえ!」
パニックになった状態からいきなり怒りだしたインキュバス。
右手の爪がナイフのような鋭さになり、爪が伸びる。
「死ねェェェ!」
そのままメアリーに向かって飛びかかってくるインキュバス。
だが、メアリーは余裕の表情で迎え撃つ。
「『貫け、我が剣よ。彼の者を討ち滅ぼさん。』」
いつの間にか取り出していた剣をインキュバスへ向ける。
剣先から光の剣身が創りだされ、インキュバスを貫く。
「っぐっっっっぁぁぁぁ!」
魔族の弱点である聖の力で貫かれたインキュバス。
空中で串刺しになったまま苦しげな声をあげ、もがく。
「嫌だ、死にたくない!まだ、僕は女性と戯れたいんだぁぁ!」
「気持ち悪いですわね、さっさと私の前から消え去ってくださいます?」
光で出来た剣先をインキュバスから引きぬき、地面に落ちたインキュバスを粉々に切り裂くメアリー。
メアリー自身剣を使ったことはないが、体が勝手に動くかのように切り裂いていった。
これが、マスターという称号を持つ男のキャラの力か。
「くそぉ…男さえ、男さえ居なければぁ…」
ばらばらになった体で最後まで、自分の心を貫いたインキュバスだった。
「はぁ…何とか勝ちましたわ」
ぺたり、とその場に座り込むメアリー。
「あの2人も、じきに起きてくるとは思いますの…」
ふう、と溜息を付く。
「あーゆう変態には二度と会いたくないですわね…」
思い出しただけでもゾッとするような気持ち悪さだった。
「(ほい、おつかれさん)」
その言葉と同時にメアリーは悠斗の体からはじき出される。
「あ、あなた自分で私をはずせるんですの?!」
「魅了だと認識してればな。まぁ多分俺にしか出来ないと思う。」
「で、でも完全にコントロール下においてましたのよ?!」
「精神力が違いすぎるんだよ。」
「むちゃくちゃですわ…」
「いつもその無茶苦茶をやってきたもんでね。」
ニッコリと笑顔を向ける悠斗。その笑顔にはお疲れ様という意味も混じっているように見えた。
「さて、次の層だな。」
階段の前に立つチーム。
「こっから少し厳しくなる。覚悟していくぞ!」
そう言うと、チーム全員で階段の下へと走っていった。
次回更新は7月22日です。




