34話目 「優紀と智恵」
どーも、作者です。
正直完結に持っていけるような展開になってきました。
ですが、あえてまだ完結しないのが私こと作者です。
まだまだちょこちょこと続けていこうかな、と思っています。
このハッカー編が終わったら、一区切り入れてから
新章に進みたいと思っています。
では、どーぞ。
その日を境に、彼女は対人訓練を始めた。
効率よくモンスターを倒すのではなく、対人でどれだけ完封できるか。
攻撃のコンボではなく、人に対してどのような攻撃が邪魔になるのか。
より深く、よく広くスキルを学習していった。
だが、数ヶ月足らずで彼女の夢は頓挫する。
標的の相田悠斗が『サーバーマスターキャラクター』の称号を手にしたのだ。
それは、彼女が二度と追いつけないということを示していた。
各サーバーには、『サーバーマスターキャラクター』という称号が存在する。
サーバーで一番最初に「すべてのスキルをマスターしたプレイヤー」に与えられる称号だ。
それは果てしなく遠い道のりで、現状悠斗のみがその称号を持っている。
6個のサーバー中たった1人。それは、とてつもない努力の証明だった。
生半可なことでは一般プレイヤーでは一生かけても到達できない。
それを悠斗はサービス開始から6年でこなしてしまった。
天性のセンスを持っていたとしても、想像を絶する努力をしただろう。
「もう、私は彼に追いつけないの…?」
知らせに絶望する彼女。勝ち目がない。
たとえ対人スキルをマスターしたとしてもすべてのスキルを使いこなせる悠斗に対して勝ち目がない。
それは、誰から見ても分かることだった。
「っ…っ……くっ…うぅっ…」
悔しい。ここまで彼と私の間に差があるのか。
涙が止まらない。すべての苦労を水の泡にされ、もう二度と追いつけない壁。
彼女の完全敗北だった。
「どうして…神様ぁ…」
この悔しさをぶつけられるところが無い。
どこにも、どこにもだ。
そして彼女はある方法に辿り着く。
それは、自分のゲームプレイヤーとしてのプライドを捨てるものだった。
この方法を使えば勝てるかもしれない。
だが、この方法を実行した時点で自分は二度と普通のプレイヤーとして遊ぶことは出来ないだろう。
だが彼に、相田悠斗に勝てるなら自分のことなどどうでもいい。
そして彼女はハッキングという禁止行為に手を染めた。
だが、そのハッキングですら悠斗に勝てる要素にはならなかった。
そして、敵だった悠斗に永久追放というペナルティを受けてしまった。
もう、私は二度とこのエターナル・オンラインの世界を見ることはないだろう。
さようなら、過去の私。ごめんなさい、お父さん…
「後悔するにはちょっと早いぞ」
「っ?!」
ふっと目が覚めるとそこには『無』が広がっていた。
どこを見ても真っ白な世界。無重力のように浮いている。
そして、声のした方には悠斗が居た。
「どうしてあなたが?そしてここはどこ?」
「ここはいわゆる『契約の狭間』って所だ。一般プレイヤーじゃまず入れない。」
契約の狭間。聞いたこともない場所だった。
「ここは永久追放を食らったプレイヤーが少しの時間だけ拘留される場所だ。
基本的にはこのままキャラが削除されて二度と戻ってこれないけどな。」
その言葉に彼女はぞっとする。
「今回はなんか知らんが咲夜に後処理的なことを頼まれてな。プレイヤーに投げる運営とか聞いたこともないけど。」
後処理?もしかして余計なことをしないようにすぐさま消されてしまうのか。
「あぁ、怯えなくていいぞ。今はお前に話があってな。」
ゲーム内をめちゃくちゃにしてなおかつ自分を殺そうとした相手に話がある?
どうみても、裏があるようにしか彼女には思えなかった。
「お前さん…あぁ、名前がないと不便だな、優紀。」
「なんで君が私の名前を知っているの?」
「優紀が起きるまでに過去を見させてもらった。ずいぶんと俺に恨みがあるみたいだな。」
「それが分かってて、なぜ私に会いに来たの?」
「まぁ怒るなって。実はな」
含みを持って、悠斗は言い放つ。
「俺のチームへこないか?というか、帰って来い優紀。」
それは、標的からの誘いだった。
「お前が隠してたその『固有能力』は役に立つ。何で今まで隠してた?」
黙りこむ優紀。そして、返す。
「帰って来い?それは、私に言う言葉じゃないと思うよ。」
「いや、俺はお前に言わなきゃいけない。だってそうだろ?」
「お前は智恵なんだからさ。」
次回更新は7月4日です。




