30話目 「表裏一体の心」
どーも、作者です。
30話目というなんだかんだで区切りのいい話になりました。
思えば、このエターナル・ストーリーズのプロローグ投稿が2月10日。
実に4ヶ月も立っています。
ここまで続けられるモチベーションがあったのも読者の皆様のおかげです。
これ以降も頑張って行きたいと思いますので、読んでくださっている方々、
この作者のネタが尽きるまで、お付き合いいただければと思います。
では、どーぞ。
僕自身?そんなわけない、僕は今ここに存在しているじゃないか。
紛れも無い、「貴志蒼汰」として存在しているじゃないか。
それなのにもかかわらず僕自身を語る?
馬鹿馬鹿しい、そんなことありえるわけがない。
『そうやっていつまでも認めないつもりか。』
当たり前だ。お前が僕だという根拠も証拠もない。
『そりゃそうだな、証拠は無い、根拠もない。だが、証明するのは簡単だ。』
証拠もないのに証明をするっていうのか?そんなこと、できるはずがない。
『簡単だぜ?お前しか知らないことを言えばいいんだからな。』
僕しか知らないこと?それこそ、不可能に近い。
『そうだなぁ、じゃあまずお前の初恋の相手の話でもするか?』
なっ?!
『あれは中学1年の時くらいの話になるか?自分のことなのに覚えてねーな。』
中学1年…今から4年と少し前の話…
『あの時は俺もまだまだ青かったなー!全然クラスのやつと馴染めなかったしな!』
さも経験したかのように僕の思い出を語るな。
『いやいや経験してるんだって。だから言ってるだろ?お前は俺なんだよ。』
僕の綺麗な思い出を汚さないでくれ。
『汚す?何言ってんだ、お前が美化しすぎたんだよ。空想で現実を塗り替えたのはお前だろ?』
塗り変えてなんかいない!僕は、僕はあの時から!
『強かった、ってか?冗談は顔だけにしとけよ、バカ。』
自分で自分のことを馬鹿と呼ぶのか。滑稽だな、偽物さんよ。
『今考えたらあの時の俺はバカだったとしか思えねぇからな。そう呼ばれて当然だ。』
うるさい!うるさい、うるさい!
『ははっ、正直なこと言われて悔しいか?でもな、終わりじゃねーんだわこれが。』
『お前は中学1年になって初めて友達が出来た。違うか?』
ぐっ…
『お前は昔からそうだった。親以外とは最低限の事しか話さず、すぐ自分の周りに壁を作る。いつも人に怯えてばかりだ。』
こ、この僕が?お、怯える?そ、そそそんなわけないだろ!
『そそそんなわけあるんだわこれが。』
僕の言い方を真似するんじゃない!
『おーこわ、そうやってまたすぐ切れるのか。強がりだな。』
強がってなんかいない!
『はいはい、強がってない強がってない。さて、話を戻すがそんなお前にも初めて友人と呼べる人が現れた。それが、今の悠斗だ。』
『なぁ、お前貴志蒼汰っていうのか?俺は悠斗、よろしく!』
『なんで…』
『ん?』
『なんで、僕に声をかけたの…?』
『なんでって、そりゃお前と遊んだら面白そうだなって思ったからだ!』
『…それ答えになってないよ』
『蒼汰にとっては答えになって無くても、俺にとっては答えになってるんだ!さぁ、遊ぼうぜ!』
そう言うと、悠斗は蒼汰の手を引っ張り教室の外へ連れ出す。
蒼汰にとって、自分を引っ張ってくれる相手というのは初めてだった。
自分はいつも周りに壁を作って遠くからずっと周りを見てきた。
それが、自分にとって一番楽だから。人に関わらなければめんどくさくないから。
だけど、悠斗はその自分が作った壁を難なく壊して、入ってきた。
自分の領域ともいえる場所に。
それは、蒼汰にとって初めての出来事でもあり、安心でもあった。
壁を作った自分でも、こんな人に関わろうとしない自分でも必要としてくれた。
それが、蒼汰にとっては嬉しい事だった。
『悠斗と遊んでいくうちに、お前は変わっていった。今まで以上に周りに関わろうとした。』
興味がなかったはずの周りに対して壁を作ること無く、今まで以上に人とかかわり、人を知り、考えを知り、行動を知り、知識を得る。
その一歩を踏み出せるようになった。
『そして、高校生になった。わざわざ悠斗と同じ高校に入った。』
悠斗がいればなんでもできる。そんな気持ちと安心感があった。
『そしてお前は初めて人に恋をした。しかも一目惚れってやつだ。』
最初はこの感情はなんだろうと思った。悠斗と一緒にいる時の安心感とは全く違う。
何故か胸が高鳴り、気持ちが高ぶる。心臓の鼓動が聞こえるほど血液の速度が早くなる。心なしか体も熱い。
なんなのだろう、この感情は。
『だが、それは今となっては叶わぬ恋だな。』
それは仕方ない。以前からそうなんだろうなという雰囲気は出ていた。
しかも相手が相手だ。ならば、ここは素直に自分が身を引くべきだろう。
ちょっと待て。なんで僕は今こんなことを知らない相手に語っている?
しかも、なぜ相手は知っている?僕の初恋の相手を。
『やっと分かったか?俺が言ってるのは嘘でもなんでもない。現実だ。』
だから、ここにいる僕こそが貴志蒼汰であって、お前が貴志蒼汰ならそれはおかしい。
『普通の人間なら、な。だがお前は違う。』
違う?
『お前は一言で言うなら人格者だ。』
人格者?
『ああ。お前は無意識のうちにゲームでの人格と現実での人格を分けてんだよ。』
そんな、そんなわけ…!
『あるんだわこれが。それじゃなかったら俺は今ここにいない。』
…
『落ち込むことはねーよ。だれでもキャラの1人や2人その場で使い分けることだってあるだろ。』
じゃあ僕は…僕は本当に貴志蒼汰…なのかな
『それは俺が断言できる。お前は紛れも無い俺自身、貴志蒼汰だ。』
…
『そして、今の俺ならお前に言えることが一つある。』
『後悔したくないなら、今お前にとっての最善の選択ではなく、自分が信じる選択をとれ。
そして、その道を迷い無く突き進め。お前の信じた道なんだ、間違ってるなんて事は絶対にない。』
それは、中学3年の時に悠斗が進路選択で迷っていた自分に向けていった言葉だった。
この言葉のお陰で今自分は悠斗たちと一緒にいることができている。
この繋がりは、もう離したくない。
ならば、今自分が取るべき選択は。
『さぁ、俺の後押しはここまでだ。迷わず行けっ!』
その瞬間蒼汰は後ろから背中を強く押される。
その押された勢いで蒼汰は一歩前に踏みだす。
そしてまた一歩、一歩と歩き出す。
「待ってろよ、悠斗!」
ギルドを勢い良く飛び出し、空高く跳び上がる。
「悠斗なら、絶対にこっちに行くはずだ!」
先ほど悠斗が飛んでいったと予想される向きへ飛んで行く。
空を飛んでいる最中に蒼汰はメニューを開く。
そして千代へ連絡をする。
「もしもし?!」
『ハァッ…ハァッ…そ、蒼汰か、どうした』
「ごめん、突然!悪いんだけど今から悠斗の援護に行く!」
『めずらしいな、お前からそんなこと言うなんて』
「そ、そうかな?とりあえず、そっちのことは頼んだよ!」
『了解した。そっちも、悠斗のことを頼むぞ。』
「悠斗の事は、俺に任せとけ!」
『ふふっ、俺、か』
「ははっ、じゃあまた!」
そう言って千代との連絡を切る。
「(待ってろよ、悠斗!必ず俺が助けに行く!)」
流れ星のような跡を空に描きながら、蒼汰は飛んでいった。
次回更新は6月22日です。




