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エターナル・ストーリーズ  作者: 燐鏡 剣斗
Chapter3 「Imaginary Creatures」
29/96

27話目 「悠斗の特等席」

どーも、作者です。


なんか路線が少しずつずれてますね・・・

少し反省です。

そして、ハッカー編再開です。


では、どーぞ。

エターナル・オンラインの世界に来てから初めての夜になった。

いろいろあったがすべて一日で起こったことなんだなと実感する。

大樹の森でのクエスト、大樹の森の異変、ナイトオブラウンズ・チャームファンタジアとの同盟。

同盟を組むことなんて、この世界に来てから初めてのことだ。

以前の悠斗なら同盟を組むなんて考えたこともなかっただろう。

これもこの世界に感情移入するような感覚に慣れたからだろうか。

今回ばかりはハッカーに感謝だ。


悠斗は一人、ギルドの屋根の上に座っていた。

ここは悠斗の特等席で、いつも夜になるとここでゆっくりしていた。

この世界に来る前、プレイし始めてギルドを作った時からの習慣だ。

ここに来ると悩み事やしがらみがすべて消える。心が落ち着くのだ。


「ふぅ…」

一つの悩みと共にため息が口から出る。

この世界に入った時から、ずっと悠斗は出る方法を探していた。

今この世界に要る人間全員は自分と同じ状態だろう。

それは一部のチームマスターも知っている。

チャームファンタジアリーダー、メアリー・アルカード。

ナイトオブラウンズ代理リーダー、アルス・フェール。

両名とも自分の状況については知っていた。


だが、それを道行く人に言っても答えは一つだけだった。

『ゲームの世界にまで空想を持ち込むな』

信じられないことは知っている。だからこそ、やるしか無い。

事情を知っている自分が、ほかのリーダーが。

ハッカーを捕まえて、出してもらうしか無いのだ。

今のところ分かっている方法はそれしか無い。


「厄介な事に巻き込まれちまったなぁ」

口をついて出る愚痴。しかし、それは誰の耳にも届かない。

自分はただ純粋にこのエターナル・オンラインというゲームを楽しんでいただけだ。

なのに、突然ゲームマスターからゲームの中の世界に引きずり込まれ、更にはゲームをハッキングしているハッカーを捕まえろとの無茶な発言。

今だ馴染まない自分がプレイしてきたはずのこのキャラの体。

スキルや性能、立ち回り方やコンビネーションをいくら知っていようとも、

体が思ったとおりに動いてくれない。


今まで悠斗がやってきたエターナル・オンラインというゲームは一見楽しく、簡単そうに見えていた。

それがどうだ、自分がいざキャラの立場になると何も出来ない。

今までは所詮付け焼き刃での戦いだ。自分が現状でできる事だけをしてきただけだ。

もっと強い敵や、チート並みの力を持った敵にあった時、自分は勝てるのか?

ゲーム最強の力を持っていても使いこなしていない自分で勝てるのか?

その悩みに答えは出ない。いや、誰も答えを出せないだろう。


感覚が一体となると敵の攻撃に衝撃が加わる。

切られれば痛いし、飛んできた魔法などを防げばそれなりの衝撃が来る。

画面の前でプレイしていた時には感じなかった感覚だ。

そのせいで今まで感じなかった恐怖感も出てくる。

敵に対してどう動くかではなく、どう敵の攻撃を避けて戦うか、という考え方になってしまう。


自分はこの世界にきていろいろ学んだのかもしれない。

人との繋がりや、キャラの立場になった時の感覚。

今まで見えてこなかったシステムや繋がりの大切さ。

反省することもあった。守れなかったと後悔することもあった。

それはいつものプレイでは知り得なかったことだろう。


この世界にきて悠斗は失ったものよりももっと多くの得たものがあった。

いつもみたいに学校へ行って、授業を受けて、家に帰ってきて、ゲームをして。

淡々と過ごしてきた毎日から一気に視界が広がったような気がした。


「面倒なこと、それでも俺は感謝してるのかなぁ」

よく分からない。頭の整理がつかない。

いつもは悩みなんて消えるくせに、今日はいつもまでたっても頭の中を回り続ける。

だが、悠斗は一つだけ決めていた。

絶対に、この世界の人達と共に現実の世界へ戻ると。


「おじゃましますわ!」

「おじゃま…します…」

ギルドの入口のほうから声がした。さっきまで聞いていたかのような声が。

恐る恐る屋根の上から入り口を覗きこむ。

背中に羽、腰のあたりからしっぽ、ゴスロリ、というのだろうか。

メアリー・アルカードとサキュバスらしき人物がギルドの中へ入っていった。

「あぁ、蒼汰がやばいな」

少し笑いながらまた屋根の上に戻ろうとする悠斗。


「ここにユートが居ると聞いたのだが。」

「そーたにーちゃーん!」

またまた聞き慣れた声が。

真っ白の鎧に真っ赤なマント。背中に体ほどの大きな大剣。

真っ白のドレスを着た女の子を肩に乗せてギルドへ入っていく。

「蒼汰大人気だな、小さい女の子と吸血鬼に好かれるとか少し羨ましいぜ。」


「悠斗!」

屋根の上に寝転がろうした悠斗は下から聞こえた大声で飛び上がる。

その飛び上がって勢いでバランスを崩し屋根の上を転がる。

「うおっ!」

とっさに屋根の縁を掴み、ぶら下がる。

「っぶね…」

悠斗は縁を手放し、そのまま地面に着地する。


「またお前は屋根の上に居たのか!」

ギルドの扉の前で腕を組んで怒っている千代。

「そんな怒んなって…俺だって考え事くらいしたくなる」

「考え事をするのは構わないが客を待たせるのは良くない!」

「悪かったよ。そんな怒んなって」

両手を挙げてお手上げのポーズを取りながらギルドの扉へ近づく。

「分かったならさっさと行く!皆待ってるんだ!」

「お前本当に母親気質だなー」

少しニヤニヤしながら悪ふざけ半分で悠斗は千代に言う。

「うっ、うるさい!早く行け!」

「はいはい」


千代に急かされギルドの中へ入る。

そこで待っていたのは、新たな仲間と新たな情報だった。

次回更新は6月10日です。

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