25話目 「決着」
どーも、作者です。
ラブコメの波動を感じる!
いや、作者はラブコメ苦手なんですけどね!
では、どーぞ。
「というわけで千代と蒼汰を返してもらうし、お前らとの同盟を組ませてもらうぞ」
「何が『お前らとの同盟を組ませてもらうぞ』ですって?!卑怯ですわ!」
「いやお前らが賭けに乗ったのが悪いんだろ。黙ってやめときゃよかったのに」
「それは・・・どうしてもサキュが『あの人もほしい…』って言うから仕方なく!」
「だけどそこで一回切り上げて新たに賭けなかったお前が悪い。」
「くぅ・・・!」
千代と蒼汰のチーム脱退を無かった事にし、更に同意の権利まで手に入れた悠斗。
それは、桜月と千代のPVPの決着の時まで遡る…
「「はぁぁぁぁぁぁ!」」
ぶつかり合う2人の技。
桜月のホーリー・レイは盾を1枚、1枚と貫いていく。
「まだ…まだですわぁ!」
更に力を込める千代。前に展開されている盾が大きくなっていく。
貫かれた1枚目・2枚目よりも更に大きく厚く。
盾を貫こうとし続けるホーリー・レイ。
1枚目・2枚目が貫かれた今3枚目の大きさを大きくし、貫かれまいとする盾。
その決着は、意外な結果で終わった。
光の雨で作られたレーザーは盾を貫き、破壊した。
だが、そのレーザーが千代に届くことはなかった。
当たると思われたその瞬間、光の粒となって消えてしまう。
「そ、そんな…」
その場に膝をつき、倒れこむ桜月。
「ハァ…ハァ…」
千代も満身創痍だった。レーザーが千代に届いていれば確実に負けていただろう。
千代のほうが一枚上手だったということだ。
「桜月!」
悠斗は結界が解除されたフィールドの中に入り桜月の元へ駆け寄る。
「大丈夫か?」
倒れている桜月を持ち上げ、背中におぶる。
「今ギルドに連れてってやるからな」
そう言うと悠斗はテレポートの準備をした。
「ちょ、ちょっとお待ちなさいな!」
千代が慌てて悠斗に声をかける。
「なんだ、こっちは桜月の命がかかってるかもしれないんだ!」
気迫の篭った声で聞き返す悠斗。
「約束が違いますの!」
「あぁ?!」
千代は慌ててポケットから誓約書を取り出す。
「ほら!ここに蒼汰様を譲渡してくれるって約束された紙がありますの!」
「あぁ・・・ちょっと待て」
悠斗は桜月を静かに地面におろし、メニュー画面を開く。
そしてチームメニューを開きギルドへ連絡を取る。
「あぁ、俺だ。スマンが今からそっちに桜月を転送する。治療を頼んだ。」
そう言うと通話を切り、桜月にテレポート魔法をかけ転送する。
「んで、蒼汰の譲渡だっけか?」
少し気だるげに千代に聞き返す悠斗。
「そ、そうですわ!早く蒼汰様をお渡しなさい!」
少し興奮が混ざったような声で叫ぶ千代。
だが、さっきの戦いでかなり消耗しているようで足が震えていた。
「それなんだが、俺と勝負して勝ったらにしてもらえるか」
唐突な悠斗からの条件変更。
もちろん、そんなこと千代が許すはずもない。
「バカを言ってる場合ですの?!」
「いや、冗談じゃなくて真面目に話してる。」
真っ直ぐな瞳で千代を見る悠斗。
その目にはふざけも嘘も混じってない、まっすぐな目だった。
「そ、それでも受けられませんわ!目の前のチャンスをわざわざ捨てる人は居ませんわ!」
至極当然である。わざわざ自分が不利になるような条件を飲む人は居ないだろう。
「あぁ、もちろん俺からも条件を追加するぞ」
そう言うと、悠斗はアイテムポーチから紙を取り出す。
「これは俺たちのチームの管理書だ。これがどういう意味を示すかはお前も分かるな?」
ヒラヒラと自分の目の前で紙を揺らす悠斗。
チームの権利書とはチームにとって命より大切なものである。
この権利書が破棄されるとチームは『解散』の扱いとなる。
一度チームが解散されると1ヶ月の間元チームメンバーとの交流が禁止になる。
更に、このチームの権利書を他チームのマスターに譲渡すると、
そのチームと合併することになる。
つまり、悠斗はチーム全員の譲渡を条件に出しているのだ。
「魅力的ですわね…で、でも私が欲しいのは蒼汰様一人ですわ!」
少し心が揺れた千代。だが、冷静に思いとどまる。
「アルちゃん…この人欲しい…」
だが、いつの間にかそばにいたチームメンバーからの声で意見を変える。
「サキュ…」
「…だめ?」
「…ええい、やりますわ、やってやりますわよ!」
「おっけ、商談成立だな」
しかし千代の考えは浅かった。冷静に考えたら勝てるわけがなかったのだ。
ボロボロになった状態で、『手を抜いているとはいえサーバー最強の人物』に。
再びフィールドに戻ってくる千代と悠斗。
「ハンデは何がほしい?3個までなら聞いてやるよ」
千代の状態を見てなのか、はたまた力の差がありすぎると思っているのか。
悠斗は自らハンデを背負うという発言をした。
「むっ、バカにしてますの?!」
「いやバカにしてねーよ。お前のその状態じゃまともに戦う前に倒れるぞ」
さっきの戦いでボロボロになっている千代。
たしかに、ハンデ無しではまともに戦えないだろう。
「でしたら、あなたには2個の縛りと1個の条件を課しますわ!」
「んじゃそれ破ったら反則負けでいいぜ」
その悠斗の発言を聞いて千代はにやりと笑う。
「(か、勝ちましたわ!勝利確定ですわ!)」
勝ちを確信する千代。それに対して悠斗はあくびをしていた。
「ふあぁ…眠い」
「なっ、なんであくびしてますの!」
「退屈なんだ…早く条件言ってくれよ」
「むぅぅ!あなたへのハンデは、『武器使用禁止』『スキル使用禁止』それと『半径2メートル以内からの移動禁止』ですわ!」
悠斗に課されるハンデを聞いてぷっと吹き出す悠斗。
「ぷっ、ははは!それでいいのか?」
笑いながら聞き返す悠斗。
「いいですわ!」
怒る千代。自分の出したハンデが笑われればそれは怒るだろう。
「ははは…んじゃ、始めようか」
悠斗は魔法陣で半径2メートルの円を作った。
「ここから出なきゃいいんだろ?簡単だ」
悠斗はその場で腕を組んで待つ。
「開始の合図はお前さんに任せる。いつでも始めていいぞ」
「ならば、スタートですわ!」
始まると同時にここぞとばかりに闇のエネルギーで弓と矢を形作る千代。
「貰いましたわ!」
音速の矢を打ち出す千代。エネルギーをブースターとして速度を上げる。
目にも留まらぬ速度で悠斗へ向かう矢。だが、
「やっぱりこの程度か…」
その矢を右手で掴み、その勢いを殺さないように体を回転させて矢を投げ返す。
それは端から見れば悠斗が手で矢を打ち出したようにしか見えなかった。
音速で戻ってくる矢。それは千代の右肩を貫いた。
「ぐうっ」
貫かれた右肩がズキズキと痛む。右手に力が入らない。
「どうした?それで終わりか?」
悠斗は呆れたような顔で立っていた。
「ま、まだですわ!」
動かない右手から弓を落とし、左手で地面に突き刺す。
縦に刺した弓を使い左手で槍を作り、弓を構える。
「行け、ブリューナク!貫きなさい!」
最大限まで引き絞った弓から槍が放たれる。
その槍は閃光の如きスピードで飛んで行く。
「だからさ、さっきも効かなかった攻撃をどうしてまたやるかな」
悠斗は飛んできた槍をかかと落としの要領で地面に叩きつけ、折る。
バキバキと槍の折れる音とメリメリと地面が割れる音がする。
アレをもろに食らったら命はないだろう。
「なぁそろそろいいか?お前じゃ俺には勝てないんだよ」
完全に強者の余裕を見せる悠斗。勝ち誇ったような顔をしていた。
「ま、まだですわ!まで勝つ方法はいくらでもありますわ!」
そう言った千代の声は震えていた。本能が勝てないと言っていた。
だが、ここで負けることは出来ない。蒼汰がかかっているのだ。
「もうこうなりゃやけくそですわ!いけっ、グングニール!」
左の手のひらからグングニールを銃のように打ち出す千代。
「はいお前の負け。」
悠斗は飛んできたグングニールの槍先を下から蹴り上げる。
まるで車輪のように空中で回転するグングニール。
「よいしょっと」
グングニールの持ち手の先を狙って横回転蹴りを繰り出す悠斗。
蹴り返されて更に勢いがましたグングニールは今度は千代の左肩を貫く。
「きゃぁっ!」
両肩を貫かれ、完全に攻撃方法を失った千代。
痛みが更に増しており、耐えられなくなってきている。
すでに半分気力で立っているような状態になっていた。
「そういえば思ったんだが。」
悠斗が思い出したかのように千代に言い放つ。
「同盟組んだらギルド出入り自由だから何時でも蒼汰に会えるだろ」
その一言で回りの空気が凍りついた。
「あ、もしかして言っちゃいけなかった感じか?」
その瞬間、言うまでもなく決着は着いた。
「この戦いなんでしたの?!無意味だったじゃないですの?!」
傷の手当てをしてもらいながら怒る千代。
「もう少し気がつくのが早ければなぁ」
苦笑する悠斗。桜月に悪い事したなぁと一人つぶやいていた。
「気がつくのが遅すぎですの!桜月さんに誤っておいてくださいな!」
「それは俺から謝っとくわ…」
「とりあえず、これが同盟書ですわ」
悠斗は千代から同盟誓約書を受け取り、サインする。
悠斗がサインすると同時に紙は空へ浮き上がり、消滅する。
「これで同盟成立だな。よろしく。」
悠斗は千代と握手する。
「俺は悠斗。相田悠斗だ。」
「私はメアリー・アルカードですわ。メアリーとお呼びくださいませ。」
「アルカード?お前吸血鬼か」
「いかにも、私は吸血鬼ですわ。」
そう言うとメアリーは千代の後ろからふっと姿を現す。
「それがお前の本体か」
「そうですわ。この姿を人前に表すのは数年ぶりですわね。」
「お前人に取り憑くとか吸血鬼じゃなくて幽霊だぞそれ」
「幽霊とは失礼ですわ。私は信念を持って取り憑いてますの。」
「取り憑くに信念があるのかよ」
メアリーの見た目はまるっきりヴァンパイアだった。
格式高い黒いドレスのような服にマント。
背中からは羽が生えており、しっぽもついていた。
「本当に私が吸血鬼ですって格好してるな。」
「仕方ありませんわ。一族の掟ですから。」
「お前現実じゃ人間だろ現実と架空の区別付けろ」
とりあえず何箇所もツッコミたくなるように話だったが長くなるのでやめることにした悠斗だった。
「んで、千代は戻るんだよな?」
メアリーが表に出てきたのにもかかわらず羽と尻尾が消えない千代。
「えぇ、最初から戻すつもりでしたもの。戻りますわ。」
そう言うと、メアリーは千代に顔を近づける。
「おいお前何しようとしてんだ」
「何って、人間に戻しますのよ?」
「どうやって戻す気だ!」
「それはもちろん決まっていますわ?」
悠斗はこの後起こることが安易に想像できた。
目をそらしたかったが、何をされるともわからないので目をそらさず、見届けた。
「…んっ」
目を覚ますと、そこは夕暮れ時の街の中だった。
「ここは…?」
足が地面に付いていない。それは、誰かにおぶってもらっているからだとすぐに分かった。
「目を覚ましたか」
千代をおぶりながら顔を少しこちらへ向ける悠斗。
「悠斗…私はなぜここに?」
確か最後に見たのは桜月の顔だったのは覚えている。
「それは聞かないほうがいいな。というか聞かないでくれ。」
悠斗はなぜか少し青ざめた顔をしていた。
千代をおぶって黙々とギルドへ歩く悠斗。
夕暮れの空が建物に反射してとても綺麗だ。
「なぁ、千代。」
悠斗は突然千代に話しかけた。
次回更新は6月4日です。




