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エターナル・ストーリーズ  作者: 燐鏡 剣斗
Chapter3 「Imaginary Creatures」
25/96

23話目 「吸血鬼・三上千代」

どーも、作者です。


千代・桜月編ももうすぐ終了になります。

7話区切りで作っているのでもうすぐ終了というよりも、

折り返し地点くらいの感覚ですね。


では、どーぞ。

奪われた剣と同じ形の剣を2本創り出し、それを両手に持ち構える。

手加減は必要ない。なぜなら、手加減すれば自分がやられるだろうことが分かるからだ。

姿形は千代でも、今は別の何かだと考えるべきだろう。

仲間を切るのは気が引けるが今回だけは千代も許してくれるだろう。


悠斗は目の前に立っている千代から目を離さなかった。

一瞬たりとも目を離せば逃げられるか悠斗がやられるだろう。

さっきまでのパニックが嘘のように悠斗は落ち着いていた。

ふう、と息を吐き出し呼吸を整える。

剣を持つ手に力が入る。だが握りすぎないように少しリラックスしている。


千代は立ち上がっても、顔を俯いたままその場から動こうとしない。

ふらふらと体は揺れているが今にでも襲いかかってきそうな威圧感があった。

少しずつ闇に飲まれているのは周りの悠斗たちにも分かった。

その証拠に千代の背中から人間ヒューマンからはけっして生えることのない羽が生えていた。

それは主に『吸血鬼』と呼ばれる種族のものと酷似していた。

腰の当たりからしっぽも生えていた。細い、紐のようなしっぽ。

さっきの悠斗の剣を止めたのはこの尻尾だろう。


蒼汰と桜月は向い合って動こうとしない悠斗と千代を見ていた。

圧力感からか、声をかけることは出来なかった。

息を呑んで見守ることしか出来なかった。


「なぁ、千代。お前どうした?そんなのに負けるお前じゃないだろ?」

俯いたままの千代に声をかける悠斗。

仲間は切りたくない悠斗が今最善だと考えた方法なのだろう。

「いつもお前は俺に厳しいだろ?『いつもいつもお前は無駄な寄り道を…!』

 『そうやってすぐに別のことに…!』口癖みたいに俺に言ってるじゃないか。」

千代は悠斗の言葉に反応しない。俯いたままだった。


「なぁ!返事をしろよ千代!頼むよ!」

それは悠斗の心からの声だった。仲間を助けたい、その心からの言葉だった。

蒼汰と桜月も助けたい気持ちは同じだった。

「…っふ」

俯いていた千代が少し笑う。だがそれはいつもの笑い方ではなかった。


「…何がおかしい。そんなに仲間を助けたいと思うのがおかしいか?」

悠斗は両手に持っている剣をしっかりと握り直す。そして右足を少し後ろに引く。

「…ふふっ」

千代が顔を上げる。千代の顔に写っていたのは笑顔だった。

この状況で笑顔。それは千代以外のメンバーの緊張を高めるものだった。

ピリピリと張り詰めた雰囲気の中で笑顔になるというのは普通はできない。

だからこその恐怖に近い緊張だった。


「本当に君たちは馬鹿なのねぇ」

あざ笑うかのように言う千代。

「そうだな、バカだな。一つのことにしか意識を向けられないバカだ。」

「あらぁ、認めちゃうの?」

「認めるも何も、事実だからな」

集中を切らさないよう淡々と返事をする悠斗。

少しでも感情的になれば相手の思う壺だ。


「お前は誰だ。何の用で千代を利用した?」

「用、ねぇ。私が用があるのはそこのお方ですわ」

そう言うと蒼汰を指差す。

「えっ、僕?」

関係ないだろうと思っていた蒼汰はいきなりのことで驚く。

「そうですわね。あなたです。」

恍惚の表情で蒼汰を見る千代。


「蒼汰に何の用だ。場合によっちゃ話を聞いてやらんこともない。」

「ちょっ悠斗?!」

「蒼汰、千代のためだ。我慢してくれ」

悠斗は蒼汰をなだめ、話を聞く。


「そうですわね、そこの蒼汰様を私達のチームに迎え入れたいのですわ。」

「それは無理だ!」

叫ぶ悠斗。

「怖いですわ…本当に最近の子供は…」

少し引くような動作を見せながらも笑っている千代。


「蒼汰をお前たちのチームにやるわけにはいかない!お前たちがどこのチームでどんなチーム化も知らないしな!」

感情をむき出しにして叫ぶ悠斗。完全に冷静さを欠いていた。

「そうですわね。得体のしれないチームに入れたくないし、チームメンバーを取られたくないのはわかりますわ。」

千代は手に持っている剣を顔の前まで持ち上げる。

「ですが、こういうことをしたらどうお答えになりますの?」

千代は手に持っている剣を自分の首元に当てた。


「やめろぉぉ!!」

左足を踏み込み千代との距離をつめ、千代の剣を弾き飛ばそうとする。

悠斗は下から剣を振り上げるように剣を振る。

だがその悠斗の斬撃は避けられ、千代はバックステップで後ろに下がる。

そしてまた自分の首元に剣を当てる。


「やめてくださる?私とてこんなことはしたくないの。」

ニコニコしながらそう言い放つ。

「てめぇ、ふざけんな!仲間の首元に剣を当てられて黙ってられるか!」

完全に怒りが爆発している悠斗。足元の床がミシミシと音をたてている。

「本当に気が早いのですわね。私は蒼汰様に聞いているのよ?」

「そ、そうだね。とりあえず落ち着こう悠斗。」

なんとか悠斗をなだめようとする蒼汰。

だが、悠斗の息は荒く怒りが収まりそうに無かった。


「では蒼汰様、どうなされますの?私達のチームに入りますの?」

悠斗など居なかったような言い方をする千代。

「…それは僕が決めることなんだろうけど」

蒼汰はその後に続けた。

「君たちのチームに入るのは無理だ。僕は、このチームだから僕でいられる。他のチームに入ったらそれはもう『貴志蒼汰』ではなくなっちゃうと思う。」

蒼汰は千代に近づき、空いている手をとってひざまずく。

「だから、もう少しだけ待っていてください僕の女神様」

千代の手のひらにおでこを当て、必ず助けると誓う蒼汰。


「さすが、私が一目惚れしたお方ですわ!必ずメンバーにしてみせますの!」

ものすごく興奮気味で語る千代。外見だけならかなりレアな光景だ。

「蒼汰様にここまでしていただきましたし、私がこのままこの人を返さないというのはアレですわね…」

その場で腕を組んで悩む千代。

「そうですわ!」

唐突に何かが思い浮かんだ様子だ。


「ここは一つ、『PVP』でどうですの?」

「PVP?」

聞きなれない単語に蒼汰は聞き返す。

「PVP。プレイヤーVSプレイヤーの略だ。」

その答えは横の悠斗から帰ってきた。だいぶ落ち着いた様子だ。

「この世界じゃまず行われない。やる意味がねーからな…」

「平和な世界ですものね。ですが、あえてそれで勝負するというのも面白いと思いますのよ。」


悠斗は少し納得したように頷く。

「んで、条件は?」

「あなたは話が早くて助かりますわね。さっきのバカという発言は撤回させていただきますわ。」

「別に撤回しなくていい。それにお前が最初から千代に手を加える気じゃないことだけは分かったからそれでいい」

「そこに気づくのが今頃とは鈍感ですわね」

「うるせぇ、んで条件は何だ」


「それはもちろんこの体の持ち主と蒼汰様ですわ!」

「おいちょっと待てそれうちにメリットねーぞ」

「この人が帰ってくる上、蒼汰様を奪われないというメリットが有りますけど?」

「いやだから戻ってくるのは当然だろなんで蒼汰奪われてその上千代戻ってこねぇんだよ」

「強情な人ですわねぇ」

「いやどう見てもうちにメリットがないから怒ってんだ分かってくれ」

さっきまでピリピリしていたのにもう仲がいい2人だった。


「…そうですわ!ならば私のチームと同盟を組む権利を差し上げますわ!」

「それは俺たちのチームにメリットは有るんだよな?」

「そうですわねぇ、かなりあると思いますわよ?」

「お前らのチーム名は?それで判断する」

「『チャームファンタジア』ですわ。」

そのギルド名に悠斗は目を見開くほど驚いた。


チャームファンタジア。エターナルオンラインでも数えるほどしか居ない、

ゲームマスター公認チーム。かくいうヴァイスリッターも公認だが。

だが、公認という肩書に反してチームメンバーを知っている人は居ない。

存在するかも怪しいとされているチームだった。

だが、その功績は大きく新モンスターの発見や新食料の発見。

新大陸の開拓や「テレポート」スキルの確率など、

人々に大きく貢献してきた。


「そのチャームファンタジアのメンバーさんが同盟を組んでくれるってのか」

「少しだけ訂正させてくださる?私は「メンバー」では無く「マスター」ですわ。」

「お前がマスターかよ先に言えよ敵のマスターに斬りかかっちまったじゃねーか」

「だって話を聞いてくださるような雰囲気ではなかったですわ!」

「仲間人質に取られてんだ悠長に話できるわけないだろ!」


「こほん。では気を取り直して、私はあなた達ヴァイスリッターにPVPを挑みますわ!」

千代はテキパキとメニューを開き、PVPメニューを開く。

「それで、誰が戦ってくださるの?」

「それは俺が「私が出る!」なんでだよ」

悠斗が名乗り出ようとした時、桜月が横から入ってくる。


「お前、わかってるのか?千代と戦うことになるかもしれないんだぞ?」

「それでも私が行くよ。ゆーを危険な目に合わせることは出来ないし、そーくんにも戦わせられない。なら私が行くよ。」

「桜月…」

「安心してよゆー。私の実力ならゆーもよく知ってるでしょ?」

「あぁ…」


「決まったみたいですわね。ならば、桜月さん勝負ですわ。」

「望むとこだよ!ゆーのために頑張っちゃうよ!」

「そこは千代と蒼汰のためにしとけ、そうしとけ」

いつも通りの桜月にツッコむ悠斗だった。


「では、勝負は1時間後にアライズ広場で待ってますわ!」

「了解だ。」

千代はテレポートのスキルを使用し、移動しようとする。

「では、ごきげんよう。」

「絶対に千代は助けだす。それだけは覚えとけ!」

「肝に銘じておきますわ~」

その言葉を残して千代は光とともに消えた。


「ねぇ、悠斗?」

「なんだ桜月?」

「よしよししてよ!」

「お前歳考えろ…ってまぁ今日ぐらいはいいか…」

いろいろあったしな。その言葉はあえて言わないことにした。

悠斗は桜月の頭に手をおいて撫でる。

桜月はにへらと嬉しそうな顔をしていた。

「(千代のことたのんだぞ桜月)」

仲良さそうにしている2人を横目に、蒼汰は眠そうな顔をしていた。

次回更新は5月23日です。

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