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エターナル・ストーリーズ  作者: 燐鏡 剣斗
Chapter3 「Imaginary Creatures」
21/96

19話目 「千代と桜月のお買い物」

どーも、作者です。


今回から「千代&桜月」編です。

出番がなかったので千代と桜月特有の口調が思い出せなくて少し大変でした。

ちなみに、少しだけ主人公と蒼汰も話に絡みます。

ちょい役ですけどね。


では、どーぞ。

「それにしても・・・」

千代はイライラしていた。いくら何でも・・・

「おっそーーーーーーーーーーーいいいいい!」

ギルドの外まで聞こえるんじゃないか、という音量で叫ぶ千代。

クエストに行ってくると言った以来全然帰ってこない悠斗達。


あの2人が負けた、とは考えにくい。

だが、そうでなければあの2人が時間をかけてまでクリアするクエストでもないはずだ。

本来ならクエストクリアをして、帰ってきてもいい時間である。

それにしても遅すぎる。


「まぁまぁ、落ち着きなよ千代ちゃん。焦ってもしょうがないってー!」

ギルドの端に並んでいるベッドの上でぴょんぴょん跳ねる桜月。

その風景はさながら小さい子が跳ねるのを楽しんでいるかのようだった。

まだまだ子供だな、と桜月を一瞥する千代。


「私達も向かうか?アバターも戻ったしな。」

ほんの数分前まで桜月と千代の体が入れ替わっていた事実はあるが、

体が戻った途端すんなりと体が馴染んだ。

やはり、使い慣れているアバターというのはいいものだと改めて実感した。


正直な所かなりの時間戻ってきてないという時点で何かあったと思うべきだ。

だが、桜月と千代は入れ替わっていたという事実から、

助けに向かうことが出来なかった。

だが、今はアバターが元通りになり助けに向かえる状況だった。


装備の整備も完了しており、問題はなかった。

桜月も今はベッドの上で跳ねて楽しそうにしているが、

内心は悠斗や蒼汰のことが心配だろう。

心なしか少し顔が暗いようにも見えた。


「まぁ、うだってても仕方ないしー!悠斗達が帰ってきた時のために

 いろいろと買い物をしに行こうよ!」

桜月は千代の思いを察したのか、それともただ気晴らしがしたいのか。

本心は読めなかったが、千代にとっては気持ちを切り替えられる。

なんだかんだでありがたい提案だった。


「そうだな、イライラしてても仕方ないな。よし、行こうか!」

そう行って椅子から立ち上がる千代。

ベッドではねていた桜月も飛び降りた。

「ゆーのために、頑張っちゃうよ!」

「お前の行動力は悠斗のためだけにしか働かないのか」

少しもブレない桜月の気持ちには関心すら覚えた。


ギルドを出て、街の中心街である『マーケット』に来ていた。

千代たちのいるこの街は、エターナル・オンライン世界でも一番の大きさを誇る街だった。

交易が盛んであり、いろいろな街から特産品や土産品が集まってくる。

その交易の中心街、それがこの「マーケット」だ。


いろいろな街から品を求めて買いに来る人も多いので、

人間以外の種族もチラホラと見かける。

プレーヤーは基本的には『人類ヒューマン』を選ぶのだが、

このゲームでは人間以外の種族も選ぶことができる。

竜人、天使、悪魔、魚人、種族と種族のハーフ。

実に数十種類の種族から選ぶことができる。


千代達はそのマーケットで食べ物の調達をしていた。

「悠斗達は何が食べたいかなぁ・・・」


エターナル・オンライン世界での食事はバフを意味する。

一時的にHPやスタミナ、力や知能などのステータスを上げることができる。

調理方法、調理食材、シェフの腕などでどのステータスが上がるかも変わる。

そのため、食事処がいたるところに点在している。


「やっぱり肉と野菜でしょ!力と敏捷性も上がるし!」

桜月は肉屋の前で肉を選びながら提案する。

「だが蒼汰があまり食べないんだ・・・肉を」

「蒼汰はねぇ…どっちかっていうと魚介類のほうが好きって言ってたもんねぇ。」


ヴァイスリッターのチームメンバーの好みはまるで図ったかのようにバラバラだ。

悠斗は肉が好き、蒼汰は魚介類。桜月は甘いもので千代は野菜。智恵は乳類。

「だが甘党のお前から肉と野菜って提案が出るとは思わなかった。」

「私は何時でもゆーのことを考えて生きてるからね!」

「お前それストーカーレベルで気持ち悪いぞ…」

「愛だからしょうがないね!」

「返答になってない」


千代は肉屋でハーブポークの肉を買い、八百屋でサウスハーブとラブオリーブ、

ソウルパインとミリオンオレンジを買った。

その間に桜月は魚屋に行きリバイアサバとコホタテを買う。


買い物袋を手に、ギルドへ戻る2人。

「ちょっと買いすぎたか・・・」

両手で待ちきれないほどの量を買ってしまったことを若干後悔しつつあった。

「余ったら蓄えにしておけばだいじょぶだいじょぶ!腐らないし!」

千代に反して脳天気な桜月だった。


マーケットを抜け、広場に出る。

「ヒーリングズ広場…」

千代が何かを思い出すかのように呟く。

「ん?なにか思い出でもあるの?あっ、もしかして恋話~?♪」

「そんなのじゃない。思い出があるのは確かだ。」

「ふ~ん。」

「(そう、私はここで悠斗と…)」


思い出にふけろうとした時、千代は街角にある姿を見かける。

「ん?」

それは間違いなく悠斗の格好だった。

「すまん桜月、先に荷物持って帰っていてくれ。少し用事ができた」

そう言うと両手に持っていた袋を桜月に預け、悠斗が消えた街角へと走る。

「ちよちゃん!」


桜月は声をかけたが、千代は反応を示さず行ってしまった。

「もー!か弱い私に荷物預けて行くなんてー!」

ぷんすかと怒りながら桜月はギルドへと向かった。


一方街角で消えた悠斗を追いかけ走る千代。

悠斗らしき人物は角を曲がった遥か先にいた。

「悠斗!」

千代は走りながら叫んだ。が、悠斗らしき人物は反応を示さない。

そのままその人物は路地へと曲がった。


「悠斗め、私達を放って置いて遊んでいたのか?!」

悠斗が曲がった路地へ走り、路地へ入ると同時に叫ぶ。

「悠斗!ここにいるのはわかってるぞ!」

だが、そこにいたのは悠斗ではなかった。


「どこへ隠れた!」

そこにいた、では無く誰も居なかった、が正しいだろうか。

行き止まりの路地には誰も居なかった。


「おかしいな、確かに悠斗を見たと思ったのだが…」

が、次の瞬間

ガブっと。

「なっ・・・」

後ろから誰かに首を噛まれた。歯の形的に人間ではないのはかろうじて分かった。

「誰っ・・・」

そこで千代の意識は途切れてしまった。


倒れている千代を担ぎ上げ、千代の首に噛み付いたその女性は

そのまま千代を宿屋まで担いで行く。


千代を担いだままその女性は

「すいません、道端で倒れていたのですが・・・」

と宿屋の受付の人に言う。

「本当ですか?わざわざ運んでいただきありがとうございます。」

「いえいえ、わたくしとしても倒れている人を見捨てることは出来ませんので。」

宿屋の受付の人に千代を渡し、宿屋から立ち去ろうとする。


「あ、お客様!」

宿屋を出ようとしたすんでのところで受付の人に止められる。

「なにか、御用ですの?」

「お名前を教えていただけませんか?」

「どうしてですの?」

「決まり、というかうちの宿のルールなんですよ。あとで連絡がつきやすいように。」

「わたくしには名乗るほどの名前はありませんわ。」

「ですが・・・」


「では、ごきげんよう。」

受付の人の話を無視し、宿屋から出て行く女性。

「ああ、ちょっと!」

慌てて追いかけて外に出るが、さっきの女性はもう居なかった。

「おかしいな・・・」

不思議には思ったが、深く詮索するのもアレなので忘れることにした。


「フフフ…これで第一段階は完了ですわ…」

宿屋のすぐ近くの裏路地で一人、女性は微笑んでいた。

次回更新は5月12日です。

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