15話目 「フェールという名前」
どーも、作者です。
モーンモーンと鳴く羊を見ました。夢で。
では、どーぞ。
「おにーちゃん、こっちこっち!」
「ハァ・・・ハァ・・・待て、私だってそんなに動けるわけではない・・・」
「むぅ~!はやくはやくー!」
「ちょ、ちょっとぐらい休憩をさせてくれ、私はもう限界だ・・・」
広い庭ではしゃぐ2人組。片方は騎士、片方は姫。
息を切らしながらも、姫を追いかける騎士。
元気いっぱいに、騎士を振り回す姫。
どこからどう見ても平和だった。
この日常はずっと続くと思っていた。
自分が騎士として、そして兄としてこの幼い姫を、妹を守る。
そんな世界で過ごしていけると思っていた。
あの事件が起こるまでは。
約束を破られた唐突な戦争。
何の用意もできていなかった自分の国は、何もすることが出来なかった。
受け継がれていたフェールの王家もこの代で終わることになってしまう。
だが、王である父親の名により、命からがら騎士と姫は逃げ出すことが出来た。
だが、戦争、両親の死というトラウマは少女が背負うには重すぎた。
トラウマにより、記憶を失ってしまった姫。
何も覚えていない、何も思い出せない。
それをただ見ることしか出来ない騎士である自分。
騎士という立場として、兄として姫である妹に対して何も出来ない。
そんな絶望感、脱力感に心が荒みそうになった。
自分に力があれば、もっと多くの人を守れたら。
そんな自責の念に飲み込まれる。
妹が記憶を失ったのは、妹にとっては幸いだった。
あんな辛い出来事を思いださせる訳にはいかない。
今は、ただ騎士として妹を守る、それしか出来なかった。
そんな矢先に、逃げた先の街で噂を聞いた。
「なんか最近行方不明者が出たとか。」
「エターナル・オンラインでしたっけ?私もプレイしてるから怖いんですよ~」
エターナル・オンラインのプレイヤーが消える、という事件が起こっていた。
それは、ゲームにログインした途端に消えるだとか。
「ログインした途端に消える・・・?」
昔、城で姫の娯楽に付き合わされプレイしたことがある。
キャラは削除していないので今でもログインできるはずだ。
「これだ・・・一か八か、かけて見る価値はありそうだ」
話をしていた2人組に話をつけ、パソコンを借りることに。
エターナル・オンラインにログインすると、
そこには前にプレイした時に見た風景が広がっていた。
横には、自分が守ってきた妹も居た。
「ここは・・・?」
「ここはエターナル・オンラインというゲームの世界だ。」
「えたーなる・おんらいん?」
「そうだ。ここなら、君もゆっくり休めるさ・・・」
「やすむ?あそぼうよ~!」
「はは、そうだな、遊ぶか・・・また昔のように」
「?」
「いや、なんでもない。あそこに広場もあることだし、遊ぶとしよう。」
ここなら誰にも追われない、そして自分を鍛えることもできる。
もう誰も失いたくない。絶対に、絶対に妹だけは守りぬく。
それが騎士として、兄としての役目なのだと信じて。
「い・・・」
また昔のことを思い出してしまった。最近はよく思い出す・・・
「ーい・・・」
とにかく、早く見つけ出さなければ。
「おーい!」
「うわっ」
耳元で悠斗に叫ばれ、ビクッとしながらアルスは下がる。
「な、何用だ」
「いや、ぼーっとしてるからさ、ぼーっとしてるとあぶねーぞって思って。」
「そ、そうか。忠告感謝する」
「お、おう」
「すまんな、昔の事を少し思い出していてな」
「昔のこと?お前、以前何かしてたのか?」
悠斗は少し変に思って聞いてみた。
アルスから帰ってきたのは、意外な答えだった。
「騎士を。」
「ぷっ、はははは!今どき現実で騎士やってるやつなんていんのかよ!」
「ぬっ、笑わなくてもよかろう。騎士なのは事実だ。」
「へっ?んじゃ、お前は日本育ちじゃねーのか」
「ニッポン?ニッポンとはなんだ?」
「おいおいまじかよ・・・お前、出身は?」
「シャルマータという国だ」
「(知らねぇ・・・)へぇ・・・」
ややぼーっとしながらも商店街に着いた2人。
探し人を探す。
「そういや、帰ってこない奴ってどんな奴?」
「小さい女の子だ、銀髪で碧眼の子だ。」
「見た目の歳は?」
「10歳くらいか。」
「俺が見つけても周りからは変態扱いしかされなそうな歳だなオイ」
「なぜだ?」
「あぁ、日本だとな・・・」
先が思いやられる悠斗だった。
悠斗達が商店街に着く20分前。
蒼汰とエリスは商店街を抜け、広場に着いた。
「うわー、おっきいふんすい!」
「噴水なんて言葉知ってるの?」
「あるおにいちゃんにおしえてもらったの!」
「アルお兄ちゃん?」
「うん!ぎるどでいちばんつよくて、いつもわたしをまもってくれるの!」
「へぇ・・・見た目通りの性格してるんだね」
蒼汰がすこし感心しているその時、後ろから殺気を感じた。
とっさに背中に背負っていた剣を抜き、後ろへ振った。
その剣は、空を切った。後ろになにかいると思ったのは錯覚だったのか・・・?
と、次の瞬間後ろから悲鳴が聞こえた。
後ろに振り返ると、エリスが浮いている。比喩でもなんでもなく浮いている。
「えっ?」
わけがわからず判断が遅れた蒼汰。しかし、それが命取りになってしまった。
突然後ろから頭を殴れる。頭に鈍い音が響き、鋭い痛みが走る。
「った・・・」
そのまま、もう一発くらい、意識が飛びそうになる。
薄れゆく意識の中、エリスの悲鳴と叫びだけが聞こえる。
たすけて、もうやめて、と。
「ここで倒れられない・・・」
だが、無慈悲にも更にもう一発殴られ、意識を完全に失ってしまった。
次回更新は4月29日です。




